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薬院法律事務所

違法薬物問題

職務質問を受けて、警察署に連れて行かれた後、強制採尿をされたという相談(大麻、刑事弁護)


2024年10月15日違法薬物問題

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は福岡市に住む20代会社員です。令和6年12月20日、繁華街を歩いている時に職務質問を受けました。所持品検査を求められて拒否したところ、たくさんの警察官が集まってきて、結局所持品を見せました。大麻の吸引具を持っていたことから警察署に連れて行かれて、尿を出すようにいわれたのですが、拒否していました。すると、警察官が「強制採尿令状」を持ってきて、強制的に採尿するということで、やむなく尿を出しました。陽性反応が出て現行犯逮捕されたのですが、納得がいきません。

A、大麻の使用について自白しているのであれば、まずは「留置の必要性がない」として釈放を求めることになります。もっとも、ご相談の事例では警察段階での釈放はなかなか難しいと思いますので、勾留請求をしないように検察官に働きかけることになります。その時は、職務質問の段階、所持品検査の段階、警察署への任意同行の段階、強制採尿令状請求の段階について、違法性がないか検討していくことも必要でしょう。覚醒剤取締法に関係して裁判例が積み重ねられていますので、それらを参考にすることになります。

※大麻施用罪は令和6年12月2日施行です。

 

【解説】

大麻施用罪が新設されたことにより、今後、大麻事案についても覚醒剤取締法違反事件と同様の取扱いがなされることが予想されています。相談事例は、覚醒剤取締法違反(使用)で良くあるパターンですが、この手続を子細に検討していくと、「留置き」の時間が長すぎる、所持品検査が乱暴すぎるといったことで捜査が違法となることがあります。捜査が違法となる場合は、公判で、提出した尿の鑑定書の証拠能力が違法収集証拠として否定されることもあり、その可能性を考慮して、検察官が不起訴処分とすることもあり得ます。ただ、これは経験豊富な弁護人でなければ判断が難しいので、弁護人に依頼する場合は、薬物事犯の知識・経験が豊富な弁護士を選ぶことが大事です。

私は、覚せい剤取締法違反事件で令状発付が違法であるという認定を得たことがあります(福岡地判令和2年12月21日最高裁判所刑事判例集76巻4号430頁)。国選弁護事件で、前例のない論点での違法収集証拠を主張し、強制採尿令状発付の違法が認定されました。一審は有罪判決でしたが、高裁では別の弁護人が就任して無罪判決となっています。最高裁では逆転有罪となっていますが、全ての審級で令状の発付が違法と認定されています。
最判令和4年4月28日

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91131

 

【参考リンク】

 

令和6年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行されます

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43079.html

厚生・労働2024年06月19日
大麻草から製造された医薬品の施用等の可能化・大麻等の不正な施用の禁止等に係る抜本改正
~大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律~ 令和5年12月13日公布 法律第84号
法案の解説と国会審議
執筆者:木村歩

https://www.sn-hoki.co.jp/articles/article3567820/

【(2)大麻等の施用等の禁止に関する規定・罰則の整備
① 大麻等を麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」に位置付けることで、大麻等の不正な施用についても、他の麻薬と同様に、同法の禁止規定及び罰則を適用する。
なお、大麻の不正な所持、譲渡し、譲受け、輸入等については、大麻取締法に規制及び罰則があったが、これらの規定を削除し、他の麻薬と同様に、「麻薬」として麻薬及び向精神薬取締法の規制及び罰則を適用する(これに伴い、法定刑も引上げ)。】

「留置の必要性がない」として、逮捕後すぐに釈放されることがあります