子どもがひき逃げ事故に遭い、重傷を負ったという相談(交通事故、犯罪被害者)
2024年10月27日犯罪被害者
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市内に住む40代のサラリーマンです。妻と小学5年生の男の子がいます。先日、病院と警察から連絡があり、私の息子が横断歩道上でひき逃げ事故に遭い、救急車で病院に運ばれたということでした。頭を打って意識を失っていたようで、緊急手術がなされたと聞いています。病院のベッドの上で包帯を巻かれて寝ている息子を見て、私も妻も涙が止まりませんでした。犯人は赦せませんし、当然賠償請求はしますが、いつ、どの段階で弁護士に依頼すべきなのか、どういう弁護士を選ぶべきなのかわかりません。
A、弁護士をつけるのは早いほうが良いです。少なくとも、刑事裁判継続中に弁護士に依頼すべきです。過失を争う事案の場合は刑事裁判手続から関与する必要性が高いですし、そうでない場合でも、刑事裁判の確定後は、「刑事裁判の記録」が十分に取得できない可能性もあります。弁護士選びについては、「賠償請求額」を誇示するような弁護士ではなく、被害者に寄り添って一緒に考えようとする弁護士を選ぶべきです。ご相談のことで一番心配なのは息子さんに後遺障害が残るか否か、仮に残るのであればどうすれば社会内でやっていけるかどうかということですので、そこに関心を示さない弁護士(金額の話がまず来る弁護士)は避けた方がいいと思います。
【解説】
交通事故に遭われた場合、いつの時点で弁護士に依頼すべきか悩まれる方がいます。「症状固定後」に受任するという弁護士もいるようです。私は、なるべく早期に依頼すべきだと思っています。特に過失割合に争いがありえる事件であれば刑事手続の段階から依頼すべきです。そうでなかったとしても、少なくとも刑事裁判継続中には依頼すべきです。何故なら、刑事裁判確定後に記録をコピーしようとしても、なかなかコピーの許可が得られず、しかも制限されることがあるからです。刑事裁判継続中であれば「損害賠償請求のため」ということで、裁判所に提出された刑事記録のうち身上調書などを除いた大部分の記録についてコピーが許可されることが多いです。
そして、弁護士選びについてですが、私は、まず「被害者の人生」を考える弁護士を選ぶべきだと思っています。近時は「賠償額がこんなに取れた」ということを宣伝している弁護士も多いですが、私は、賠償額の多寡よりも、その人の人生にとって、その交通事故がどういう意味を持つのか、を考えることが大事だと思っています。私は、私自身が高校時代に難病(落葉状天疱瘡)になったことから、子どもが大きなハンディを負わされることによって、その子どもとその親がどれだけ苦しいのかは理解しているつもりです。そのため、ご相談の事例であれば、まずその点をどうにかできないかということを考えます。何があっても人生は続くわけですから。弁護士を選ぶ際には、そういった視点を持っている弁護士を選ぶべきです。このページをご覧の方が、良い弁護士と巡り会うことをお祈りします。
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https://www.courts.go.jp/about/hogosisaku/seido/Index.html
【刑事事件の記録の閲覧・コピー
刑事事件の被害者の方は,原則として,事件記録の閲覧,コピーができます。また,閲覧,コピーをしようとする事件の被告人等により行われた,その事件と同種の犯罪行為の被害者の方(同種余罪の被害者)は,損害賠償を請求するために必要があると認められる場合には,事件記録の閲覧,コピーができます。
希望する場合には,刑事事件の被害者の方は,事件を審理している裁判所に申し出てください。また,同種余罪の被害者の方は,検察官に申し出てください。】
【参考文献】
第一東弁『2訂版 犯罪被害者支援実務ハンドブック』(東京法令出版,2023年1月)
94頁
【(2) 第1回公判期日以降、刑事裁判確定までの記録について
ア総論
係属している被告事件の閲覧・謄写については、裁判所は、閲覧又は謄写を認める理由が正当でない場合及び閲覧又は謄写をさせることが相当でないという例外的な場合を除き、原則として当該被告事件の被害者等による訴訟記録の閲覧又は謄写をさせることとなっています(保護法3条1項)。】
96-97頁
【(3) 刑事裁判確定後の記録について
刑訴法53 条、刑事確定訴訟記録法4条に基づき、記録を保管する検察庁(第一審を担当した庁)に請求。
ア請求の主体、閲覧・謄写の範囲について
主体に特に制限はありませんが、刑事確定訴訟記録法4条に基づく場合、同条2項各号の制限があります。ただし、当該事件の被害者等は、基本的に同法4条2項の「訴訟関係人又は閲覧につき正
な理由があると認められる者」に該当すると考えるべきです。また、閲覧・謄写の範囲については、事実上保管検察官の判断に基づくため、被害者であり、閲覧等の必要性がある旨を積極的に主張して交渉し、開示の範囲を広くするように努力すべきです。特に被害者参加対象事件の場合には、公判提出予定の証拠等が原則として開示される運用になっていることに鑑み、より広い範囲での開示当を積極的に求めてください。】