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薬院法律事務所

刑事弁護

SNSで知り合った友人に自動車を貸したら、窃盗に使われたという相談(窃盗、刑事弁護)


2024年12月02日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は、東京都江東区永代のマンションで妻と2人暮らしをしている30代の会社員です。SNSで知り合った同世代の男性と親しくなり、一緒にお酒を飲んだりする仲になりました。先日、その人から、友人と旅行するのに使いたいということで、私の車を貸してくれないかと頼まれました。1泊2日で、レンタカーでも2万円くらいかかるので、1万5000円とガソリン代をだすからといわれ、正直なところ車に他人が乗るのは嫌だなあという気持ちもあったのですが、ちょうど使わない時でしたし、貸すことにしました。ちゃんと期限通りに返してもらい、洗車もされていたので良かったと思っていたのですが、後日、警察官がきて私の車が飲食店の窃盗に使われたと聞きました。私も何か責任を問われるのでしょうか。

 

A、お見舞申し上げます。窃盗に使われるとは知らなかったわけですし、幇助の故意が欠けるので窃盗罪は成立しません。民事上も不法行為責任を負うことはないでしょう。万一、幇助の嫌疑が掛けられた場合にはしっかりと弁解する必要があります。

 

【解説】

 

インターネットで知らない人と簡単に繋がることができる時代になって、もうだいぶん経ちました。社会人になってから、新たな繋がりを求めてSNSを始める人も多いと思います。だいたいの場合はちゃんとした人なのですが、残念ながら「悪意」を持って繋がろうとする人たちはいます。そういった人と繋がってしまった場合、どこでどのように利用されるかわかりません。しっかりとした倫理観を持っておくことが大事ですが、それ以前に、相手がどういったバックグラウンドを持っている人で、どういった社会的繋がりを持っているのかを知っておくことは大事です。それがないと、思わぬところで足下を掬われることがあります。本件の場合は、幇助の故意がないと認められやすいと思いますが、例えば、レンタカー代の相場より高い金額(3万円)をもらっていた場合には、知っていて貸したのではないかと疑われる可能性はあります。

 

刑法

https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045/20200401_430AC0000000072

(幇ほう助)
第六十二条 正犯を幇ほう助した者は、従犯とする。
2従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。

(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

【参考記事】

 

令和06年度 第2回
令和06年09月26日 午後02時00分 午後03時30分

深川警察署協議会 議事概要

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/shokai/kyogikai/kyogikai.files/fukagawa.pdf

(4)刑事組織犯罪対策課
ア 管内の犯罪発生状況
イ 主な検挙事例
(ア)わいせつ犯人検挙
(イ)飲食店を狙った窃盗事件

 

【参考文献】

 

堀内信明=安廣文夫=中谷雄二郎「刑法62条」大塚仁ほか編『大コンメンタール刑法 第三版 第5巻〔第60条~第72条〕』(青林書院,2019年8月)(青林書院,2018年7月)652-746頁

680頁

【幇助の意思は未必的なもので足りるところ(通説),未必的な幇助の意思の認定に関して,最高裁平成29年12月25日決定(判時2368号56頁)は,オウム真理教幹部らが爆発物入りの郵便物を東京都知事宛に郵送してこれを開封した都庁職員を負傷させたという殺人未遂事件で,爆薬の原料を教団施設から持ち出して幹部らに引き渡すなどした元信者である被告人について,幇助犯の成立を認めるためには,幇助の意思として,幹部らが「具体的にいかなる危険な化合物を製造して人の殺害を行うのかということに関する認識」の認定が必要であることを前提として,幇助の意思が認められないことを理由に無罪を言い渡した控訴審判決(東京高判平27• 11 • 27判時2368号62頁)の結論を是認しており,正犯行為に関して特定の構成要件該当性を明らかにする程度の具体的な認識が必要であることを示したものといえよう(同最決が,幇助意思を多くの間接事実から推認するためには判断構造の合理性が必要であること,控訴審においても,その判断構造を十分に評価し,事実誤認を指摘するには,第一審判決の事実認定の不合理性を具体的に指摘する必要があることについて判示している点も参考になる。なお,サリン事件で殺人粗助の意思を認めた裁判例として東京高判平15• 12 • 5判時2368号62頁,東京地判平12• 6 • 29判ク1091号104頁等参照)。】