軽犯罪法違反事件の弁護要領・第8回 軽犯罪法1条7号(軽犯罪法、刑事弁護)
2024年12月21日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は動画制作者です。ある河川にボートを停めて、水上での動画撮影をしていたところ、警察官から職務質問を受けて軽犯罪法1条7号違反と言われました。船を「放置」したわけでもないのに違反と言われることが理解できません。
A、「水路の交通を妨げるような行為」とされたものだと思います。ただ、河川の幅や撮影の態様によっては、「水路の交通を妨げるような行為」といえないこともあると思います。具体的な事案が大事ですので、動画をもって弁護士の面談相談を受けられて下さい。
【解説】
本日は、軽犯罪法第1条第7号「みだりに船又はいかだを水路に放置し、その他水路の交通を妨げるような行為をした者」について解説します。
この条文は、水路に船又はいかだを放置することで水路の交通を妨げることを禁止しています。
その趣旨は、【本号は、水路の交通の自由を確保しようとする規定である。】(野木新一・中野次雄・植松正『註釈軽犯罪法』(良書普及会,1949年2月)43頁)とされているところです。
船を係留している場合には、「放置」とはされていないようですが、「水路の交通を妨げるような行為」にあたることもあるでしょうし、河川法違反になる場合もあると思います。
軽犯罪法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/
第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
七 みだりに船又はいかだを水路に放置し、その他水路の交通を妨げるような行為をした者
船舶の放置行為に罰則が適用されます! ~荒川水系の国が管理する区間で指定~
https://www.ktr.mlit.go.jp/arage/arage00442.html
【参考文献】
伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)96頁
【(4) 「放置する」「放置する」とは,船又はいかだを管理・使用する者が,これを水路に置いたまま現実の管理から離れることをいう。それは,一時的でもよい。また,係留してあるかどうかを問わない。漂流して水路に至るべきことを予見しながら,水路外に放置し,その結果,船又はいかだが水路に至ったというような場合も,「水路に放置」したことに当たる。
船又はいかだの管理者が現実に管理・使用している限り,放置したものとはいえないが,例えば,水路に釣舟を泊めて釣りをしているような行為は,場合により,本号後段の「水路の交通を妨げるような行為」に当たることになろう。)】
https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3110
須賀正行『擬律判断・軽犯罪法【第二版】』(東京法令出版,2022年11月)145頁
【被疑者は,令和00年0月0日午後0時0分頃, 00県00市00町0番地先の00運河(幅員約15m) において,釣船を停めて魚釣りをし, もって水路の交通を妨げるような行為をしたものである。】
https://www.tokyo-horei.co.jp/shop/goods/index.php?12183