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薬院法律事務所

一般民事

遺産分割事件、共有持分はいくらと評価するのか(相続事件、一般民事)


2020年02月09日一般民事

片岡武・管野眞一編著『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第3版)』(日本加除出版,2017年11月)227頁

【(3) 共有物件の評価
共有持分を評価する場合には,使用,収益,処分の制約,共有物分割の時間的,経済的負担を考慮した共有持分の市場性の減退が考慮される。例えば,建物は, 一般に現物分割が困難で, その共有持分は市場性が劣るので,減価要因として市場性修正を行っている(「競売不動産評価マニュアル(第3版)」判タ別冊30号97頁)。したがって,各共有持分を第三者に売却する場合や共有持分を相続する場合には, 共有持分減価(通常2割程度)を行う。
【共有持分の併合】
不動産の共有持分(1/2) を有する相続人が被相続人の共有持分
(1/2)を代償取得する場合, あるいはすべての共有持分を一括売却する場合などは,共有減価は行わない。なぜなら, 共有持分どうしが併合し,完全所有椎(共有持分100%)を取得するのでいわゆる併合利益が生まれ,共有持分減価は消滅するからである。例えば, 夫婦が共有するマンションのうち夫の持分2分の1が競売となり,共有持分減価を行った低廉な価格で第三者が共有持分を競落した後,妻が競落人から共有物分割訴訟を提起され,妻が代償金を支払って取得する場合は共有持分減価は行わないので夫の持分を競落価格より高値で買い戻す結果となることがある。共有持分減価を利用し低額で取得し,高値売却を目的として共有持分の競売に積極的に参加してくる業者があるので留意されたい。】