【えん罪】警察官から、強引にスマホの中身を見られたという相談(盗撮)
2025年02月11日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、先日、繁華街を歩いていると、男性警察官の方から声をかけられました。私から下着を盗撮されたといっている人がいるということで、私はびっくりして、「誰ですか」「そんなことはしていませんよ」と言ったのですが、とにかく交番に来て欲しいといわれたのでついて行きました。
交番に入ると、後からパトカーで男性警察官たちが集まってきて、出口を塞ぐように囲まれました。5人くらいいたと思います。そして、スマートフォンの中身を見せてくれと言われたのですが、彼女とのハメ撮り動画が入っていたので「イヤです。」と拒否したところ、「それだったらこちらも令状を取って押収して解析することになるので、スマートフォンは取り上げることになるし、データは全部見ることになる。やましいところがないなら見せていいだろう。」と言われました。やむなくスマートフォンの画像フォルダを見せたのですが、もちろん盗撮なんかしていませんので、何もありませんでした。すると、警察官が画像フォルダの一覧をカメラで撮影して、私も立たされて写真を撮られました。その上で、上申書を書くようにいわれ、「盗撮はしていません。誤解を招くような行動をしないように心がけます。」といった内容の書面を書かされて、3時間くらいで解放されました。誰が私が盗撮をしたといっているのかといわれても、回答してくれませんでした。
後になって、いくら何でもこれはおかしいのではないかと思いました。退出できないような形で交番に連れ込んで、事実上強制するような形でプライベートな彼女との映像を見られて、写真まで撮った上に、私が悪いような上申書を書かされました。なんとかできないでしょうか。
A、実質的逮捕でないかという疑いがある事案です。また、説得という形はとっていますが、スマートフォンの中身を強制的に閲覧したり、その写真を撮影したことは、任意捜査としての許容限度を超えている可能性があります。警察の捜査に対する苦情申し出制度を利用することも考えられますし、納得できない場合は弁護士に依頼して国家賠償請求訴訟を起こすことも考えられるでしょう。
※当事務所では、警察の不当逮捕等に対する国賠訴訟、刑事告訴、その他警察の不当な活動に対する抗議のご相談・ご依頼は対応できません(取扱経験もありません)。
【解説】
本件については、いくつかの問題点があります。
まず、(1)職務質問について犯罪の嫌疑が十分であったのか否か。(2)任意同行が実質的逮捕だったのではないか。(3)スマートフォンの中身の提示を求めたことが強要によるものではないか、ということです。
(1)については、誰かから被害申告がなされたのかもしれませんが、第2条の要件を満たすか否かは証拠関係を見ないとわからないでしょう。
警察官職務執行法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000136
(質問)
第二条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
2 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。
3 前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
4 警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。
(2)については、位置関係次第ですが、実質的逮捕といえる場合もあり得ると思います。一般に、任意同行が実質的逮捕といえるか否かは、①同行を求めた時刻・場所(早朝だったり、自宅に来た場合などは逮捕に近くなります)、②同行の方法・態様(複数名での強制的な態度だったか等)、③同行を求める必要性、④同行後の取調時間・方法・監視の有無・状況、⑤捜査官の主観的意図(逮捕した場合の時間制限を潜脱する意図等)、⑥被疑者の対応(任意に応じていたかどうか)、⑦逮捕状準備の有無(逮捕状があるなら逮捕すべき)等が判断要素となるとされています。
※参考裁判例
大阪高判昭和63年2月17日
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=22295
(3)については、なかなか違法とされることは少ないのですが、状況次第では「それだったらこちらも令状を取って押収して解析することになるので、スマートフォンは取り上げることになるし、データは全部見ることになる。やましいところがないなら見せていいだろう。」という言葉が「脅迫」とされることもあると思われます。ただ、これは非常にハードルが高いです。
いずれにしても、難しい問題ですので、刑事弁護と国家賠償請求に詳しい弁護士をインターネットで調べて、直接相談されることをお勧めします。
【参考サイト】
※2025/2/11 chatGPT o1 proの回答です。
以下の回答は、あくまでも一般的な法的情報の提供であり、最終的な法的アドバイスを行うものではありません。個別具体的な対応については、実際に弁護士へ相談されることを強くお勧めします。
1. 想定される警察官の捜査手続き上の問題点
(1) 「任意同行」のはずが実質的に強制同行となっている可能性
- 通常、警察官が令状なしに行う捜査は「任意捜査」が原則です。
- 「交番に来てほしい」と言われてついて行った段階では、形式上は「任意同行」という形とみなせますが、出口を複数の警察官で塞ぐように囲まれ、実質的に帰れない状況であれば、任意ではなく強制的に拘束されたと評価される可能性があります。
- 刑事訴訟法上、令状なしで身体を拘束するには「現行犯逮捕」や「緊急逮捕」の要件を満たす必要がありますが、本件の事案(下着盗撮の疑い)でそれに該当するかどうかは非常に疑わしいところです。
- 仮に実質的に逮捕に相当する状況だとしたら、正当な手続きを経ずに身体を拘束した(違法逮捕)とみられる余地もあります。
(2) スマートフォンの中身を「任意」で見せたことの真の「任意性」が問題
- 盗撮の捜査において、警察が被疑者と目される人のスマートフォンを捜索・押収するには、本来は裁判所の発付する捜索差押許可状が必要です。
- 例外的に、本人が自由な意思に基づいて「任意提出」したのであれば、令状なしでも見られることはあります。
- しかし本件では、警察官が「見せないなら令状を取ってスマートフォンを全部解析する」「取り上げる」と強く迫り、かつ5人ほどに囲まれている状況でした。客観的にみて、真の意味で拒否の自由があったかは非常に疑わしく、「強制に近い任意」として違法な手段と評価される可能性があります。
(3) 画像フォルダ一覧や本人の写真を撮影する行為の問題性
- 任意捜査ではあくまで必要最小限の範囲での捜査が求められます。本来なら「盗撮の事実」を確認するための最低限の画像チェックにとどめるべきところ、画像フォルダの一覧自体を警察官がカメラで撮影しているのは、プライバシーの侵害がさらに大きい行為です。
- また本人の写真を撮影する行為も、本来は逮捕・勾留など強制処分を行っているときに「被疑者写真撮影の必要性」として認められる場合があります(刑事訴訟法上の問題)。しかし今回は「任意の段階」で、単に交番に呼ばれただけの状況で本人を立たせて写真を撮るという行為は、違法または違法に近い行為と評価される可能性があります。
(4) 上申書を書かされた行為の問題点
- 「盗撮はしていません。誤解を招く行動をしないように心がけます」等の上申書を書かせたという点も、任意捜査の範囲内で本人が同意して書いたという形がとられているかもしれません。しかし、心理的圧力を受けていた状況で書かされたのであれば、事実上の強要行為とみる余地があります。
- この上申書は法的には「自白調書」のような重みはありませんが、警察内部での記録として残る可能性があります。今後何か別件があった場合に、警察が「以前にも類似の疑いがあった」などと主張する材料に使われるかもしれないため、注意が必要です。
2. 具体的な対応策・救済手段
(1) 警察内部への苦情・申立て
- 都道府県警察の監察官室(監察係)
警察官による違法・不当行為について、市民が苦情を申し立てる仕組みがあります。今回の事実関係を時系列にまとめ、どの交番で何時ごろ誰(階級や名札などが分かれば)にどんな行為をされたかを具体的に申立てることが可能です。 - 都道府県公安委員会への苦情
警察を管理監督する役割を持つ都道府県公安委員会にも苦情申立てができます。
(2) 弁護士会の「人権救済申立て」
- 弁護士会や日本弁護士連合会には、警察官による違法捜査や人権侵害に対して、人権救済申立てを行える制度があります。
- この制度を利用すると、弁護士会が調査を行い、必要に応じて警察側に勧告・要請などをする場合があります。警察内部の対応だけでなく第三者的な視点で判断してもらいたいときには有力な選択肢です。
(3) 国家賠償請求(民事訴訟)
- 警察官の職務上の違法行為によってプライバシーを侵害され、精神的苦痛を受けたとして、**国や自治体を相手に損害賠償を求める訴訟(国家賠償請求)**を検討することも可能です。
- ただし、国家賠償請求では、「警察官の行為が明確に違法であり、損害と因果関係がある」と立証する必要があります。また、時間や費用もかかるため、慎重に判断する必要があります。
(4) 刑事告訴・告発
- 警察官の行為が「特別公務員職権濫用罪」(刑法194条)などに該当すると考えるのであれば、検察庁へ告訴・告発を行うことも一応の選択肢です。
- しかし、警察官による職権濫用での立件はハードルが高く、捜査が進展しにくいのも現実です。
3. 今後の行動指針
- 事実関係の整理・証拠保全
- 何年何月何日何時ごろ、どの交番で、どんな警察官(名前や階級、特徴)にどのような言動をされたのか、できるだけ詳細にメモに残す。
- 交番のレイアウトや出口の塞がれ方、何人でどのように囲まれたのかなども可能な範囲で具体的に書き留めておく。
- スマートフォンの画像フォルダを撮影される際、警察官は何と言ったか、どういう態度だったかも記憶が新しいうちに記録しておく。
- 弁護士への相談
- まずは法テラスや弁護士会の法律相談などを利用して、今回の状況を説明し、どのような手段を選ぶのが適切かアドバイスを受ける。
- 弁護士を通じて監察係や公安委員会への申立てを行うと、個人で申立てるよりも真剣に取り合ってもらいやすいことがあります。
- 適切な申立先の選択
- 「まずは警察内部に苦情を申し立て、回答や謝罪を求めたい」のか、
- 「第三者機関である弁護士会の人権救済制度の利用を考えたい」のか、
- 「いきなり訴訟で争うのか」
など、コストや時間、目的(謝罪、記録の抹消、再発防止を求める等)を踏まえて検討する。
- 今後警察と接触する際の注意点
- 今回のように突然警察から声をかけられた場合でも、任意同行や任意でのスマホ閲覧は原則として拒否できることを頭に置いておく(ただし現場では圧力を受けやすいのも事実)。
- 強制処分を行うのであれば令状が必要なため、「まず弁護士を呼んで相談したい」などと主張し、むやみに同意しない。
- 警察手帳や氏名、所属を明示的に確認するのも有益だが、現場での対応が難しい場合は、その後弁護士に相談する段階で「容疑の説明はあったか」「どのような警察官か」など記録を残すようにする。
4. まとめ
- 交番へ“任意”で同行させられたにもかかわらず、出口を塞がれるなど実質的に自由を奪われた可能性が高く、違法な身体拘束に該当する余地があります。
- スマートフォンのデータ閲覧は本来、裁判所の捜索差押許可状が必要な行為ですが、警察官が「見せないなら令状を取る」と脅して“任意提出”を誘導する形は、真の任意とはいえない強制捜査に近い行為といえます。
- プライベートな画像フォルダを警察官に撮影され、上申書まで書かされたのは、明らかに捜査の範囲を逸脱する可能性があり、人権侵害の疑いが強いと言えます。
- 救済手段としては、警察内部への苦情申立て(監察係・公安委員会)、弁護士会の人権救済申立て、あるいは**民事訴訟(国家賠償請求)**などが考えられます。費用や労力を含め、どの方法を選ぶかは慎重に検討する必要があります。
- 最終的には、弁護士に相談の上、事実関係や証拠を整理し、本人が求める目的(謝罪、再発防止、資料の抹消、慰謝料請求など)に応じて適切な手続きを検討することをお勧めします。
本件のように、突然警察官から声をかけられて強制的な手段をとられたと感じる場合、不安や戸惑いが大きいのは当然です。しかし、法的に違法性が高い行為であれば、救済措置を求めることは十分に可能です。早めに専門家へ相談してみてください。