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薬院法律事務所

一般民事

夫が女子中学生と不倫していたので、女子中学生の親から慰謝料を取りたいという相談(一般民事)


2025年02月16日一般民事

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は東京都に住む30代女性です。夫は同世代で、結婚5年目で3歳の子どもがいます。ここのところ夫の態度がおかしいと思いスマートフォンをチェックしていたところ、浮気相手と思われる相手とのLINEが見つかりました。夫を問い詰めたところ、SNSの趣味のグループで知り合った女性と半年前から浮気しているということでした。そして、相手は中学3年生ということでした。LINEを見ると、相手は夫が既婚者ということをわかっていますし、積極的に裸の画像も送ってきています。夫の話では、相手は両親との関係が上手くいっていないということで、相手に誘惑されたということでした。その中学生か、両親に対して不貞慰謝料を請求したいのですが可能でしょうか。

 

A、不同意性交等罪が成立するので、できません。むしろ、あなたの夫が相手方に対して慰謝料を支払わなければならない立場です。

 

 

【解説※chatGPT o1 pro作成】

回答

まず前提として、13歳以上16歳未満の未成年者との性的行為は、相手方の同意の有無にかかわらず、日本の刑法(具体的には改正後の「不同意性交等罪」(刑法177条第3項)や「不同意わいせつ罪」(刑法176条第3項))等に該当する可能性があります。実際には条例違反(東京都青少年の健全な育成に関する条例)や児童福祉法違反も併せて問題となりうるため、夫の行為は重大な刑事問題に発展するおそれがあります。以下、刑事面に加え、民事上の慰謝料請求(不貞慰謝料)の可否について順を追って説明します。


1.中学生との性的関係における刑事法上の問題

(1) 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の適用可能性

  • 改正刑法では、「十六歳未満の者(13歳以上16歳未満の場合は、『行為者が被害者より5歳以上年上』であることが要件)」に対して、性交・わいせつ行為を行っただけで、同意の有無にかかわらず「不同意性交等罪」や「不同意わいせつ罪」(旧来の強制性交等罪・強制わいせつ罪に相当)に問われる可能性が高いです。
  • ご主人が中学3年生(15歳程度)の相手と性的関係を持っていたとなれば、夫の側は相手に「誘われた」という主張をしていても、法的には「未成年者を保護する趣旨」が最優先されるので、ほぼ違法性は免れにくいと思われます。

(2) 都条例・児童福祉法違反の可能性

  • 東京都では「東京都青少年の健全な育成に関する条例」により、18歳未満(青少年)に対して性的行為を行うこと自体が禁止されています(いわゆる「淫行条例」)。
  • また、児童福祉法でも「児童に淫行をさせ、またはこれを誘惑した者は処罰する」という規定があります。
  • いずれの観点からも、ご主人が刑事責任を問われるリスクは極めて高いと考えられます。

2.民事上の不貞慰謝料請求の一般論

(1) 通常の不貞行為に基づく慰謝料請求要件

夫婦の一方配偶者(ここでは夫)と第三者が「肉体関係を持つ」などして、夫婦の平穏な婚姻生活が侵害された場合、第三者に対して**不法行為(民法709条)**に基づく慰謝料請求が認められることがあります。その際には、

  1. 第三者が、配偶者が既婚者であると「知り、または容易に知り得た」こと
  2. 肉体関係(性交)またはそれに準ずる性的関係が存在すること
    といった要件が問われることが多いです。

(2) 相手が未成年の場合の特殊性

しかし、第三者が未成年、特に16歳未満である場合は下記の点で大きな問題が生じます。

  • 刑事法上は未成年者が「保護される立場」
    十分な判断能力がない未成年者と性的関係を持った成人のほうが刑事責任を負いやすく、社会的に見ても「責められる主体」は成人側とみなされる傾向にあります。
  • 未成年者に対し「不貞行為の共犯」として民事責任を追及することへの抵抗感
    判例や実務上、未成年者が「配偶者が既婚者であることを認識しながら関係を持った」場合でも、その未成年者を積極的に責め立てて「慰謝料支払い義務」を認める例は極めて稀です。
  • そもそも被害者性が強く評価されやすい
    「自ら裸の画像を送ってきた」などの状況があっても、家庭環境が悪く、成人男性からの承諾を得ているような状況でも、**法制度上は“保護すべき弱い立場”**として扱われるのが通常です。

3.中学生本人に対する不貞慰謝料請求の可否

(1) 理論上の可能性

理論上は、

  • 「夫と不貞行為をした第三者が、夫婦間の平和を侵害した」という形で、不法行為の共同不法行為責任を問うことはあり得ます。
  • また、LINEの内容から「既婚者であることを承知していた」形跡があるとしても、実際に裁判所が16歳未満の未成年者に同等の責任を認めるかはかなり疑問です。

(2) 実務上は「ほぼ不可能」に近い

  • 未成年者が性的被害者として扱われる法体系がある以上、「誘惑された」という夫の主張があったところで、そもそも加害者は成人の夫と評価されるのが通常です。
  • 結果として、裁判実務で中学生本人の支払い義務を認める可能性は極めて低いでしょう。

4.中学生の両親に対する慰謝料請求の可否

(1) 監督義務違反(民法714条)による損害賠償

  • 未成年者の行為について、親権者は監督義務を負っているため、「監督義務を怠った」結果として第三者に損害を与えた場合、親が賠償責任を負う可能性があります。
  • ただし、典型例としては「未成年者が器物損壊や盗難などを行い、親が賠償責任を負う」ケースであって、性的行為のような親が直接コントロールしにくい事案では責任が認められにくいのが実情です。

(2) 立証の困難さ

  • たとえ親子関係が悪かったとしても、「親が積極的に子どもの不貞行為を助長した」などの極端な事実がない限り、親の監督義務違反を認めるのは難しいです。
  • 加えて、夫自身が刑事的に処罰される可能性が高い状況下で、「子どもが悪い・親の監督不足だ」と主張しても、裁判所がそれを受け入れることはまず考えにくいでしょう。

5.結論:不貞慰謝料の相手としては夫に対する請求が中心

  1. 中学生本人への請求は事実上認められる可能性が極めて低い
    ・16歳未満であれば刑法上「被保護者」に当たり、成人との性的関係は成人のほうが刑事上の責任を問われる。
    ・不貞慰謝料の民事責任を未成年者に認めるのは、実務上も社会通念上も大変厳しい。
  2. 中学生の両親に対しても、監督義務違反を問うのはほぼ困難
    ・性的領域の行為まで親が常時監督できるとは限らない。
    ・立証や因果関係のハードルが極めて高い。
  3. 結果として、夫に対して不貞慰謝料を請求することが基本となる
    ・婚姻関係を継続するか離婚するかに応じて、慰謝料額や財産分与の条件を交渉することが典型となります。
    ・ご主人の行為が刑法上違法(不同意性交等罪など)となる可能性が高いため、さらに大きな問題へ発展し得ます。

6.今後の対応策

  • 刑事問題への対応
    ご主人の行為は、不同意性交等罪(刑法177条第3項)や不同意わいせつ罪(刑法176条第3項)、条例・児童福祉法違反などに該当するおそれが高く、警察沙汰になる可能性が十分にあります。自発的に警察に相談されるケースもあり得ますし、相手の両親が介入すれば刑事手続きを取られる可能性も否定できません。
  • 離婚・慰謝料・養育費の検討
    あなたとしては、

    1. 離婚を選択するのか
    2. 修復を試みるのか
      いずれにしても、ご主人への慰謝料請求や財産分与・養育費などを有利に進めるためには、専門家の助言が大きな力となります。
  • 弁護士への早期相談
    児童に対する性的行為という重大な事案であり、刑事・民事の両面に影響します。ご自身の精神的負担や今後の人生設計を踏まえ、

    • 刑事告発・被害届がなされる可能性への対応
    • 民事上の離婚手続、夫との慰謝料交渉
      などを総合的に見渡せる弁護士に相談することを強くお勧めします。

まとめ

  • 中学生本人に対して不貞慰謝料を請求することは、理論上はあり得ても、実務上は認められる可能性が極めて低い
    13歳以上16歳未満の者は刑法上・条例上「保護される立場」であり、成人(夫)の責任が極めて重い。裁判所が未成年者に慰謝料支払いを認めることは考えにくい。
  • 両親の監督責任を問うのもさらにハードルが高い
    親が積極的に助長・黙認したなどの極端な事情がなければ認められない。
  • 不貞慰謝料請求の相手は基本的に夫となる
    刑事問題化のリスクが高いため、離婚や慰謝料交渉を含め、早期に弁護士などの専門家へ相談し、今後の方針を慎重に検討したほうがよい。

以上のとおり、本件では中学生側やその両親に対する不貞慰謝料の請求は極めて厳しく、事実上は困難です。一方、夫に対しては、あなた自身が慰謝料や離婚を検討するに当たり、有力な法的根拠となりうる不法行為があると考えられます。ご家族の将来やお子さんのことも含め、どう対応するかを専門家と一緒に検討されることを強くお勧めします。

 

刑法

https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_2-Ch_22

(不同意わいせつ)
第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
(不同意性交等)
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。