スピード違反で人身事故を起こした…危険運転致死傷罪になるのか?(ChatGPT4.5作成)
2025年06月22日刑事弁護
スピード違反で人身事故を起こした…危険運転致死傷罪になるのか?
制限速度を大幅に超えるスピード違反によって人身事故(負傷事故や死亡事故)を起こしてしまった場合、自分は危険運転致死傷罪に問われるのかどうか、不安に感じている方も多いでしょう。スピードの出し過ぎによる事故では、「通常の交通事故(過失運転致死傷)」では済まされず、より重い罪で処罰される可能性があります。本記事では、危険運転致死傷罪とはどんな犯罪か、どの程度のスピード違反で適用されるのか、適用されたケース・されなかったケース、適用された場合の刑罰(実刑となる可能性)、そして危険運転ではなく過失運転として処理してもらうための弁護活動のポイントや被害者との示談・反省の重要性について、わかりやすく解説します。
危険運転致死傷罪とはどんな犯罪か?
危険運転致死傷罪(きけんうんてんちししょうざい)とは、飲酒や極端なスピード超過など悪質で危険な運転によって人を死傷させた場合に適用される重大な犯罪です。法律上は、自動車の運転において**「進行を制御することが困難な高速度」で走行するといった危険運転によって他人を負傷させた者は15年以下の懲役に、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処せられると定められています(※令和7年6月1日以降、刑法改正により懲役刑と禁錮刑が統合され「拘禁刑」と呼ばれるようになりました)。一方で、通常の交通事故(過失運転致死傷罪)の場合の法定刑は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金**となっており、危険運転致死傷罪は通常の過失事故に比べ格段に重い刑罰が科されるのが大きな違いです。
もう少し平たく言えば、危険運転致死傷罪は「ただの不注意による事故」ではなく、運転手が自ら危険な運転行為を行った結果として事故を起こした場合に適用されます。例えば泥酔状態での運転や明らかにスピードの出し過ぎ、無免許で運転を続ける行為、悪質なあおり運転(他車の進路を妨害する目的の幅寄せや急ブレーキ)などが該当します。こうした運転は、単なる「注意不足」ではなく運転手自身が危険性を認識できる悪質な行為であるため、法律でも特別に重く処罰されることになっています。
スピード違反が危険運転致死傷罪と判断されるのはどんな場合か?
スピードの出し過ぎによる事故がすべて危険運転致死傷罪になるわけではありません。法律上は「進行を制御することが困難な高速度」での運転が危険運転の一類型とされていますが、その**「制御困難な高速度」とは具体的にどの程度かについて明確な数値基準が定められているわけではありません。制限速度を倍以上出していたから必ず危険運転になる、という単純なものではなく、事故当時の道路状況や車両の状況などを総合的に見て、「その速度で走り続ければハンドルやブレーキのわずかなミスで重大事故につながる恐れがあるか**」が判断されます。
故意性(わざと出したスピードかどうか)も重要なポイントです。危険運転致死傷罪は基本的に運転手の故意(少なくとも危険運転行為をする意思)があることが前提となります。したがって、「ブレーキが故障して減速できなかった」「下り坂でスピードが出過ぎてしまったが自覚がなかった」といった場合には、速度が出ていても「故意の危険運転」とまでは言えず、過失運転致死傷にとどまる可能性が高いでしょう。逆に、制限速度をはるかに超えるスピードで**「スリルを味わう目的」で飛ばしていたようなケースでは、運転手自身が危険な行為と認識してスピードを出していたと言えます。このように意図的かつ明らかに無謀なスピード超過**であれば、危険運転致死傷罪に問われるリスクが高まります。
「制御困難な高速度」かどうかの具体的判断には、専門的な分析が用いられることもあります。例えばカーブがある道路では、そのカーブを安全に走行できる上限速度(限界旋回速度)を算出し、それを超えていれば車が遠心力で逸脱しやすく制御困難な速度と判断されます。実際に過去の裁判でも、「時速60km制限のカーブで、限界旋回速度100km/hのところを大幅に超える速度で走行し対向車線にはみ出した事故」で危険運転致死傷罪の成立が認められた例があります。一方、直線道路でのスピード超過の場合は判断が難しく、事故直前まで車線を逸脱せず直進できていたような場合には「まだ制御できていた」と評価され、危険運転が否定されるケースもあります。
結論として、制限速度の倍程度の速度であれば直ちに危険運転と断定されるわけではなく、倍以上の中でも特に常軌を逸したスピード(道路や車の状況から見て明らかに危険なスピード)であるかどうかがポイントです。最近の傾向では、**法定速度の2.5倍~3倍(例えば制限60km/hの道路で時速150~180km/h以上)**に達すると危険運転と認定されやすい一つの目安になるとも指摘されています。もっとも、これはあくまで目安であり、事故状況次第で異なる判断が下される可能性があることを念頭に置いてください。
判例から見る:適用されたケース・適用されなかったケース
実際の裁判例で、スピード超過による事故が危険運転致死傷罪に問われたケースと過失運転致死傷にとどまったケースをいくつか見てみましょう。
- 危険運転致死傷罪が適用された例:
時速194km(法定60kmの約3.2倍)という猛スピードで直線道路を走行し、対向車線から右折してきた車に衝突して死亡事故を起こした事案では、裁判所が「進行を制御することが困難な高速度」での運転と認定し、危険運転致死罪の成立を認めました。この事故では被告人(当時23歳)に懲役8年(求刑12年)の実刑判決が言い渡されています。当初、検察は「証拠上危険運転の立証は難しい」として過失致死で起訴しましたが、裁判で危険運転罪が成立すると判断された経緯があり、この判決は「直線道路で車線逸脱のないケースでも、極端な速度超過であれば危険運転と認める」という画期的なものとして注目されました。また、高速道路上での極端な速度超過による事故でも危険運転が成立しています。例えば2018年、阪神高速道路で法定速度の約3倍に当たる時速216kmでポルシェを運転し、前方のトラックに追突して運転手を死亡させた事故では、最高裁まで争われた結果、危険運転致死罪の成立が認められ、懲役8年の実刑判決が確定しました。
- 危険運転致死傷罪が適用されなかった例:
法定速度の2倍程度の速度でも、状況によっては危険運転とはみなされなかったケースがあります。例えば、法定速度60km/hの直線道路を約146km/hで走行中に、脇道から進入してきた車と衝突して死亡事故となった事案では、裁判所は危険運転致死傷罪の成立を否定し、より軽い過失運転致死罪として扱われました。このケースでは「直線道路を直進できており、車両の制御自体は失われていなかった」と判断されたものと考えられます。ほかにも、法定50km/hのカーブで約80km/hを出して事故に至った事案では、そのカーブの物理的な限界速度(約93~120km/h)を大きく下回る走行であったことなどから「制御困難な高速度ではない」と判断され、危険運転致傷罪は成立しなかった例があります。つまり、速度超過の程度だけでなく、道路の形状や他車との位置関係によっては「危険な運転」とまで言えないと判断される場合もあるのです。
以上のように、判例を見ても**「倍以上の速度なら即危険運転」ではなく、ケースバイケースであることが分かります。特に致死事故の場合、被害者遺族の感情もあり危険運転致死罪での起訴を求める声が強くなる傾向にありますが、最終的には客観的な証拠に基づく速度や制御可能性の分析によって決まります。昨今では大分の時速194km事故の判決を契機に、「極端な速度超過は直線道路でも積極的に危険運転で立件すべき」との流れが出てきています。そのため、今後は以前なら過失運転とされたケースでも危険運転で起訴・有罪となる可能性**が高まっていると言えるでしょう。
危険運転致死傷罪で有罪になった場合の刑罰は?(初犯でも実刑になる?)
危険運転致死傷罪で有罪判決となった場合の刑罰は非常に重いものになります。前述の通り、人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑(懲役刑)、人を死亡させた場合は1年以上20年以下の拘禁刑が科せられ(法律上は有期懲役の上限が20年)、罰金刑の規定はありません。では、初犯の場合に執行猶予が付く可能性はあるのでしょうか?
結論から言うと、危険運転致死傷罪で起訴・有罪になった場合、初犯でも実刑(刑務所行き)となる可能性が高いです。特に被害者が死亡している場合(危険運転致死罪)は、その重大性からほぼ確実に実刑判決が下されます。実際、令和4年の司法統計によれば、危険運転致死罪で有罪となったケースは100%実刑判決であり、危険運転致傷罪でも実刑率は約8.6%に上るとのデータがあります。つまり死亡事故では初犯かどうかに関わらずほぼ確実に刑務所行き、負傷事故でも状況次第では相当高い確率で実刑があり得るということです。
他方、通常の過失運転致死傷罪であれば初犯では執行猶予付き判決になることが多く、死亡事故でも悪質性が低ければ執行猶予が付く例があります。危険運転致死傷罪の場合、法定刑が重いため判決が3年を超える刑期となることもしばしばで、その場合は法律上執行猶予を付けること自体ができません(執行猶予を付けられるのは3年以下の懲役・禁錮刑の場合に限られます)。上記の判例でも、危険運転致死罪で有罪となったものは懲役5年以上の実刑が言い渡されている例が多数あり、執行猶予になったケースは極めて稀と言えます。初犯だから大丈夫と楽観視せず、危険運転致死傷罪で起訴されれば相当の覚悟を要する状況だと認識すべきでしょう。
ただし、負傷事故で危険運転致傷罪に問われた場合には、被害程度や情状によっては執行猶予付き判決となる可能性も残されています。特に被害者のケガが比較的軽微で、後述するような示談成立や深い反省の情が認められる場合には、刑期自体が短めに設定され(例えば懲役1年6か月など)執行猶予が付くことも考えられます。実際に、後述のケース②のように危険運転致傷罪で起訴されながら執行猶予判決となった例もあります。いずれにせよ、危険運転致死傷罪で有罪になると刑務所に行くリスクが非常に高いことは間違いありませんので、そうならないための弁護活動や示談交渉が極めて重要になります。
危険運転ではなく過失事故として処理してもらうための弁護活動
前述の通り、危険運転致死傷罪になるか過失運転致死傷罪になるかで、科される刑罰や執行猶予の可能性は大きく変わります。そのため、被疑者(加害者)側の弁護人としては、「本件は危険運転には当たらないのではないか」と主張し、できる限り過失運転致死傷として処理してもらうことを目指します。
弁護活動のポイントの一つは、事故現場の詳細な検証(実況見分調書や現場鑑定の精査)やドライブレコーダー映像の分析などにより、「進行を制御することが困難な高速度だったのか」を科学的・客観的に検討することです。例えばドライブレコーダー等から事故直前の速度やハンドル操作の状況を割り出し、「確かに速度超過ではあったが、車両のコントロール自体は失われておらず、通常の注意義務違反の範囲である」といった主張ができれば、危険運転致死傷罪の成立を否定できる可能性があります。実際にあるケースでは、警察が危険運転致傷容疑で書類送検した事案について、弁護人が「本件は危険運転致傷罪は成立しない」という意見書を検察官に提出した結果、検察が危険運転ではなく過失運転致傷罪で起訴し直したという例があります。この事案では最終的に執行猶予付き判決が言い渡され、重大な実刑を免れることができました。
もう一つ重要なのは、被疑者本人の供述内容です。取調べなどで「なぜそんなスピードになったのか」を問われる際、もし「面白半分で飛ばしていた」「急いでいたのでアクセルを踏み続けた」といった供述をしてしまうと、危険運転の故意を裏付ける材料になってしまいます。逆に、「スピードメーターを見ておらずそんなに出ているとは思わなかった」「ブレーキを踏んだが間に合わず結果的にオーバースピードになってしまった」など、悪質な意図があったわけではないことを示す供述をすることも大切です(※事実に反する偽証は逆効果なのでできませんが、自分に有利な事情はきちんと伝えるべきという意味です)。弁護士は被疑者から事情を詳しく聴き取り、悪質性を軽減するための事実関係を整理して主張します。例えば「事故当時は夜間で見通しが悪く、本人は法定速度を大幅に上回っていた認識がなかった」「現場は下り坂で意図せず速度が出てしまった可能性がある」等の事情があれば、そうした点を根拠立てて示すことで「危険運転ではなく不注意による過失事故だった」と情状を訴えていきます。
このように、専門的な検証と適切な主張によって、当初は危険運転致死傷罪で立件されそうだったケースが過失運転致死傷罪にとどまる結果となることも珍しくありません。警察発表やマスコミ報道で「危険運転の疑い」とされても、最終的な結論は捜査と裁判で決まります。あきらめずに弁護活動を尽くすことで、より軽い罪への切り替えや不起訴処分の獲得も目指せますので、早期に経験豊富な弁護士に相談することが望ましいでしょう。
まとめ: 制限速度を倍以上も超えるようなスピード違反で事故を起こした場合、法律上は危険運転致死傷罪に該当する可能性があります。しかし、その成立には速度の程度だけでなく状況次第で判断が分かれます。仮に危険運転致死傷罪で起訴・有罪となれば初犯でも実刑となる蓋然性が高く、非常に厳しい処分が予想されます。一方で、適切な弁護活動によって過失運転致死傷として処理される余地もあり、また被害者への真摯な対応や反省により結果を大きく好転させることも可能です。不安な気持ちを抱えている方は、ぜひ早めに弁護士に相談し、今後の対応策について助言を受けてください。専門の弁護士であれば、あなたの事情に寄り添った適切な弁護プランを立て、少しでも有利な結果を得られるよう尽力してくれるはずです。どうか一人で悩まず、専門家の力を借りてこの局面を乗り越えてください。