令和5年改正の大麻取締法:未成年の所持・使用事件にどう影響する?親が知るべきポイント(ChatGPT4.5作成)
2025年07月17日刑事弁護
令和5年改正の大麻取締法:未成年の所持・使用事件にどう影響する?親が知るべきポイント
改正の背景:若年層の大麻乱用増加と規制強化
近年、日本では若者による大麻の乱用が顕著に増加し、社会問題化しています。少年事件の統計によれば、麻薬及び向精神薬取締法違反や大麻取締法違反で摘発された少年の数は、平成28年(2016年)には241人だったものが令和4年(2022年)には941人に急増しています。インターネットやSNSを通じて手軽に入手できる環境も手伝い、若年層が大麻に対する抵抗感をあまり持たず興味本位で使用・所持してしまうケースが増えているのです。大麻使用に「罪はない」という誤った認識や、「海外では合法だから害も少ないのでは」といった油断も、若者の乱用拡大を後押しした一因と指摘されています。
こうした国内の乱用拡大に加え、諸外国では医療用大麻の承認や一部合法化が進み、日本でも大麻由来成分を含むCBD製品(カンナビジオール)の利用が広がってきました。従来の大麻取締法では、大麻から製造された医薬品の施用も一律禁止されていたため、難治てんかん治療薬など医療用大麻を国内で使えるよう求める声も高まっていたのです。そこで政府は、安全な医療利用を可能にすると同時に乱用防止策を強化すべく、令和5年(2023年)に大麻取締法の大幅改正に踏み切りました。改正の趣旨は「大麻草から製造された医薬品の使用を解禁しつつ、有害な大麻成分の規制や大麻の施用禁止を設け、乱用による保健衛生上の危害発生を防止する」ことにあります。つまり、医療と非医療の双方で規制の見直しが図られ、大麻の適正利用と乱用防止を両立させるバランスが模索されたのです。
新設された「大麻使用罪」:使用も処罰対象に
従来の法律では、大麻を**「使用する」行為自体には罰則がありませんでした**。所持や譲渡は犯罪でも、「吸っただけ」なら法的には不問という抜け穴が存在していたのです。そのため「使っても逮捕されない」という誤解が一部で広がり、若年層の乱用に拍車をかけていました。しかし令和5年改正で**「大麻使用罪(施用罪)」が新設され、医療目的でない大麻の使用は新たに犯罪となりました。改正法は大麻を麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」に位置付け、覚醒剤などと同様に使用行為そのものを禁止したのです。その法定刑は「7年以下の懲役」**であり、従来は処罰対象外だった大麻の単純使用にも厳しい罰則が及ぶことになりました。
この「使用罪」の創設により、尿検査でTHCの代謝産物が検出されれば、大麻の現物を所持していなくても逮捕・起訴が可能となりました。実際、2024年12月の改正法施行以降は、警察が職務質問などで大麻使用の疑いを感じれば尿検査を求め、結果が陽性反応であればその場で逮捕・送検されるケースが想定されています。これは覚醒剤取締法違反(使用)で行われてきた手法と同様で、「体内から大麻成分が検出=使用の証拠」とみなされるということです。なお、大麻使用罪の導入に伴い強制採尿の手続きも整備され、任意の尿提出に応じない被疑者に対しては令状に基づき強制的に尿検査を行うことも可能となっています(覚醒剤事犯と同様の運用)。このように改正後は「大麻は吸っただけでもアウト」という厳しい姿勢が明確になりました。親世代の中に昔の感覚で「使うだけなら罪にならない」と思っている人がいれば、それは現在は誤りだと認識し直す必要があります。
所持罪の厳罰化:法定刑引き上げと成人処罰
改正法では、大麻所持の罰則も一段と重くなりました。具体的には、非営利目的の単純所持の法定刑が「5年以下の懲役」から「7年以下の懲役」へと引き上げられました。営利目的の場合は従来「7年以下の懲役および200万円以下の罰金」でしたが、改正後は**「10年以下の懲役(情状により10年以下の懲役および300万円以下の罰金)」**とさらに厳格化されています。この改正により、大麻所持は他の麻薬と遜色ない重い刑罰が科される犯罪となったと言えます。実際、初犯の単純所持でも状況次第では実刑が十分あり得る厳しさであり(初犯でも実刑判決が下されかねないとの指摘もあります)、大麻犯罪に対する社会の視線が厳罰化の方向にあることがうかがえます。
また、改正後は大麻が法律上**「麻薬」扱いとなったことで、単純所持には罰金刑の規定がありません。その意味するところは、起訴され有罪判決を受けた場合、執行猶予が付かない限り必ず刑務所に収監される可能性があるということです。従来の大麻取締法では罰金刑の選択肢がなく実刑か執行猶予付き懲役刑のみでしたが、改正後も引き続き罰金による軽処分はできず、裁判で執行猶予が付かなければ即実刑という重大な結果を招きます。もっとも、実務上は初犯の少量所持であれば情状を考慮して執行猶予付き判決**となるケースが少なくありません。しかし再犯や量が多い場合、営利目的が疑われる場合は改正前以上に厳しい判断が下されやすく、以前にも増して「大麻所持=重大な犯罪」という認識で扱われるようになった点は強調しておかなければなりません。親としても「たかが所持でしょ」と軽視せず、刑事罰に直結しうる重大事態だと理解しておく必要があります。
未成年・特定少年への適用:手続き上の留意点
改正による使用罪や所持罪の重罰化は、未成年(20歳未満)の行為にも原則適用されます。したがって、今後は未成年であっても大麻を使用すれば犯罪成立となり、14歳以上であれば警察に検挙される可能性があります。ただし、日本の少年法制度では、未成年者に対しては更生を第一目的とした家庭裁判所での保護処分が基本となります。まず14歳未満の子ども(触法少年)はどんな犯罪を犯しても刑事責任を問われることはなく、大麻を所持・使用していた場合でも懲役刑などの処罰は科されません。その代わり、児童相談所に通告・送致され、一時保護や専門的指導といった児童福祉法に基づく措置が取られることになります。場合によっては家庭裁判所に送致され、保護処分(少年院送致や児童自立支援施設への送致等)が下されることもあります。
一方、14歳以上17歳以下の少年(犯罪少年)になると刑事責任を問える年齢ですので、警察に逮捕されたり補導されたりする可能性があります。もっとも、逮捕後すぐに刑事裁判で刑罰を科されるわけではなく、原則として事件は家庭裁判所に送致されます。家庭裁判所の審判を経て、保護観察や試験観察、少年院送致など必要な保護処分が決定されるのが通常です。初犯の大麻事件であれば多くは保護観察処分や施設送致などの保護処分に付され、刑事裁判で懲役刑が言い渡されるケースはまれだといえます。ただし、大麻以外にも重大な犯罪を併発している場合や、再三の指導にもかかわらず乱用が続くようなケースでは、家庭裁判所が「あえて刑事処分相当」と判断し、少年を検察官送致(逆送致)して成人と同様に起訴する可能性も皆無ではありません。
さらに近年の少年法改正により、18歳・19歳の少年は**「特定少年」と位置付けられ、原則として殺人や強盗致死傷など一定の重大犯罪を犯した場合には家庭裁判所から検察官に原則逆送される制度が導入されました。しかし結論から言えば、大麻事件(所持・使用)だけでは18歳・19歳が直ちに逆送される対象犯罪には該当しません。大麻所持は特定少年の原則逆送対象 crime に含まれておらず、基本的には18~19歳であっても家庭裁判所の判断で保護処分が選択されるケースが大半と考えてよいでしょう。もっとも、特定少年でもケースによっては世間への影響や再犯リスク等を考慮され、成人同様の扱い(起訴)を受ける場合があり得る点には注意が必要です。例えば、繰り返し大麻を乱用しており保護処分歴が重ねられていたり、他の凶悪事件と関連しているような場合には、特定少年でも検察官に送致され実名報道の上で刑事裁判にかけられる可能性があります。ただし大麻単体の事件で18~19歳がいきなり実刑になるのは相当異例であり、基本的には「家庭裁判所で保護処分」が前提です。親御さんとしては、未成年者が大麻事件を起こした場合でも頭ごなしに絶望するのではなく、少年審判を通じて更生のチャンスが与えられることを踏まえ、冷静に対処することが大切です。もっとも、使用罪の新設で「使っていれば年齢に関係なく摘発される」**時代になった以上、発覚時の影響は従前より大きくなっています。早い段階で弁護士や専門機関に相談し、再乱用防止策を講じるなど適切な対応を図る必要があるでしょう。
知っておきたい実務上のポイント
改正法の施行に伴い、THC成分の微量残留に関する新たな基準も導入されました。例えば市販のCBDオイルなど合法な製品にもごく微量のΔ9-THC(陶酔成分)が含まれている場合がありますが、厚生労働省は製品中の残留THCについて**「これ以下なら麻薬扱いしない」という閾値を明確に定めました。具体的には、油状または粉末の製品では10ppm(0.0010%)以下、水溶液では0.10ppm以下、その他の形状では1ppm以下のTHC含有量であれば規制対象外(麻薬から除外)とされています。この基準のおかげで、正規に流通しているCBD製品を使用しただけで尿検査に陽性反応が出てしまうリスクは極めて低い**と考えられます。実際、国内で合法販売されているCBD製品は「有害成分THCが含まれていないことが証明されたもの」に限られており、基準を超える違法なTHC混入製品さえ使用しなければまず問題は生じません。とはいえ、市販品であっても海外から個人輸入したような製品には基準超過のTHCが検出され行政措置が取られた事例も報告されています。子どもが安易にネット購入した海外製CBDなどを使用してしまうケースも考えられるため、製品選びにも注意が必要です。
もう一つ覚えておきたいのは、「副流煙でうっかり体内に取り込んだだけ」という言い訳は通りにくいという点です。大麻パーティーの場などで本人は吸っていないのに煙を浴びただけ、と主張するケースも考えられますが、専門家によれば受動喫煙で体内に入るTHCはごく微量であり、尿中の代謝物濃度から積極的使用者か受動的曝露かの区別は科学的に可能とされています。言い換えれば、通常の検査で陽性が出るほどのTHCが検出される場合、それはもはや「隣で吸っていた人の煙を少し吸い込んだ」程度では説明がつかない濃度だということです。捜査機関も当然その点は承知しており、「知らぬ間に煙を吸っただけ」は言い逃れとして認められにくいでしょう。加えて、尿検査の陽性閾値自体も微量の偶然摂取では反応しないレベルに設定されています。実際、厚労省の研究班資料によれば、一般的なTHC検査キットは尿1mL中20ngといった基準で陽性判定されるよう作られており、短時間の受動喫煙でそこまで達する可能性は低いとされます。つまり、「うっかり周りの煙を吸っただけ」という弁解は科学的知見と合致しないため、まず通用しないと考えるべきです。
最後に、親世代の認識アップデートの重要性について触れておきます。上述の通り、昭和から平成にかけての大麻取締法では使用そのものに罰則がなく、「持っていなければ大丈夫」という感覚が根強く残っていることがあります。しかし令和時代の現在では大麻の使用も立派な犯罪であり、所持も含め罰則は大幅に強化されています。古い知識のままで子どもと接すると、「吸っても体に悪いだけで捕まらないんでしょ?」などと軽く考える若者に適切な指導ができなかったり、万一摘発された際に感情的に叱責するだけで適法な手続きを踏まえた対応を誤ったりする危険があります。今回の改正内容を正しく理解し、家庭で子どもにきちんと教えることが何よりの薬物予防策です。大麻が決して無害でないこと、法律で厳しく禁止され将来を台無しにしかねないものであることを親子で共有し、「ダメ。ゼッタイ。」のメッセージを改めて心に刻んでください。法律は厳しくなりましたが、未成年者には更生のチャンスも与えられます。正しい知識に基づく冷静な対処と温かいサポートで、お子さんを大麻の誘惑やトラブルから守っていきましょう。
参考文献・情報源:大麻取締法改正に関する法律事務所の解説記事や厚生労働省の発表資料等などを参照し、執筆しました。