少年事件の処分はどう決まる?家庭裁判所調査官の役割と処遇の流れ【大麻事案の場合】(ChatGPT4.5作成)
2025年07月19日刑事弁護
少年事件の処分はどう決まる?家庭裁判所調査官の役割と処遇の流れ【大麻事案の場合】
想定読者の関心: 子どもが事件を起こして家庭裁判所に送致された後、どのように処分が決まるのか具体的に分からないという保護者の疑問に答えます。特に「家庭裁判所調査官」とは何をする人なのか、親はどのように対応すればよいのか、大麻に関わる非行の場合に実務上どのような調査・判断がなされるのかを解説します。
家庭裁判所への全件送致:少年事件はまず家裁へ
全件送致主義とは:満20歳未満の少年による犯罪(非行)は、警察・検察での手続きを経て必ず家庭裁判所に送致されるのが原則です。成人事件では検察官が不起訴にすることもありますが、少年事件では**「全件送致主義」(少年法41条・42条)が採用され、例外的な場合を除きすべて家庭裁判所に送られます**。これは少年の健全育成を図るためで、捜査機関に処分の裁量を委ねず、一旦必ず保護処分の可能性を検討する場に移す仕組みです。
全件送致の意義:少年事件は成人とは目的が異なり、罰則を科すことよりも少年の更生や保護を目的とした手続がとられます。そのため、大麻事案のように法律上は処罰の対象となる行為でも、まずは刑罰より家庭裁判所での保護処分を検討するステージに移行することになります。家庭裁判所で事実を確認した上で、少年にとって適切な処遇(更生のための措置)を考えるため、原則として刑事裁判ではなく家庭裁判所の審判に付されるわけです。なお、故意の犯罪で被害者を死亡させたケースなど極めて重大な事件では、家裁が検察官送致(逆送)して刑事裁判に移行させる特例もあります(少年法20条)。ただし大麻使用の初犯程度であれば逆送の対象には通常ならず、基本的には家庭裁判所で審理・処分決定されることになります。
家庭裁判所調査官とは何者か:役割と立ち位置
調査官の役割:家庭裁判所では審判を開く前に、少年の内面や生活環境などを専門的に調査する担当者がいます。この人物が家庭裁判所調査官です。調査官は医学・心理学・社会学・教育学などの知識を備えた専門職で、捜査機関の警察官や検察官とは異なる視点から少年を調査します。調査官自身が処分を決定することはありませんが、裁判官に対して処分に関する意見を述べる極めて重要な役割を担っています。特に少年側が非行事実を認めて争わない場合、審判の焦点は処遇の検討に移るため調査官とのやり取りが中心となり、その内容が最終処分に大きく影響します。
調査の進め方:調査官は裁判官の命令を受けて、まず事件記録(警察・検察の捜査資料)に目を通し、その上で少年本人と面会します。事件の内容や経緯について少年から詳しく話を聞き、さらに少年の生い立ちや現在の家庭環境、学校での生活状況などを確認します。少年だけでなく保護者にも面接し、家庭での養育状況や監督状況、非行に至る背景に家庭環境が影響していないか調べます。必要に応じて学校や職場に問い合わせて生活態度の報告を受けたり、家庭訪問を行うこともあります。こうした調査を通じて、少年の性格傾向や問題点、再非行の可能性、家庭の監督能力など**「どのような処分が適切か」**を分析していきます。
裁判官への意見提出:調査官は少年を複数回面接し、交友関係や生活状況、保護者との関係などを総合的に調べ終えると、審判直前までに調査結果をまとめた報告書(調査票)を作成します。この調査票には調査官が考える「少年にどのような処分を下すべきか」という意見が記載され、審判を担当する裁判官に提出されます。裁判官はこの調査官の意見を非常に重視しますので、少年に不利な点ばかりが記載されないことが重要になります。調査官はあくまで裁判官をサポートする立場ですが、その意見書が実質的に処分を左右することも多く、少年事件では調査官の存在が極めて大きなウェイトを占めています。なお、調査官の多くは女性で占められており、少年からすると**「話しやすいお姉さん」**的な雰囲気である場合が多いとも言われます。
大麻事案でのポイント:大麻を使用した少年のケースでは、調査官はなぜ大麻に手を染めたのかという動機や経緯を詳しく探ります。友人から勧められたのか、インターネットで入手したのか、興味本位なのかストレスからなのか、といった背景を掘り下げます。また乱用の程度や依存の有無も重要です。例えば一度だけ好奇心で使用したのか、常習的に繰り返していたのかによって再非行のリスクが異なるため、調査官は再乱用の恐れを慎重に評価します。家庭環境についても、保護者の目が行き届いていたか、家で薬物に気付けなかった要因は何か(親子関係や生活リズムの乱れ等)を調べ、必要なら家庭側の問題点も指摘します。調査官はこうした情報を総合して、「この少年は保護処分による更生の見込みがあるか」「どのような指導や環境調整が必要か」を考察し、裁判官に意見具申するのです。
調査官による社会調査の進め方:何が調べられる?
法律記録と社会記録:家庭裁判所に事件が送られると、裁判官はまず捜査機関から送られた証拠資料(法律記録)を検討しますが、それと並行して調査官が行うのが社会調査です。社会調査の成果は**「社会記録」と呼ばれる記録にまとめられ、審判の重要資料となります。社会記録には、先述の調査官が作成する調査報告書(調査票)のほか、少年鑑別所で専門家が行った心理検査や行動観察の結果をまとめた鑑別結果報告書**などが含まれます。つまり少年の人間性や環境に関するあらゆる情報が社会記録として蓄積され、裁判官はそれを参考に処分を判断します。
少年鑑別所での鑑別:事件によっては、送致後に観護措置(家庭裁判所による身柄拘束)決定が下され、少年が少年鑑別所に収容されることがあります。鑑別所では心理判定官や技官といった専門職員が、少年の資質鑑別を行います。具体的には知能検査、性格検査、面接、生活状況の観察などを通じて少年の性格傾向、非行の程度、家庭環境に至るまで詳しく調べます。鑑別期間は通常2週間から最長8週間程度で、その結果は**「鑑別結果通知書」として家庭裁判所に報告されます。調査官はこの鑑別結果も参考にしながら、自らの社会調査を進めていきます。大麻事案では、鑑別所で薬物依存の有無**や健康状態もチェックされ、専門的見地から「治療や指導の必要性」が評価されます。鑑別結果通知書は社会記録の一部として、調査官の調査報告書とともに審判前に裁判官へ提出されます。
調査報告書の内容:調査官がまとめる報告書(社会記録)は、以下のような多角的な情報を含みます。
- 非行事実の経緯:少年自身の語った事件の動機や背景、関与状況の詳細。大麻の場合、入手ルートや使用頻度、同席者の有無などが記載されます。
- 少年の資質:性格傾向や心理検査結果、ストレス耐性や衝動性の評価など。たとえば「周囲に流されやすい」「好奇心旺盛だが計画性に欠ける」等の所見が示されます。
- 生活環境:家庭の状況(家族構成や養育態勢、親子関係)、学校での様子(出席状況、生活態度、友人関係)など。学校からの生活状況報告書や担任教師の意見が添付されることもあります。
- 保護者の監督状況:普段の家庭での目の届き方や、非行発覚後の対応(反省を促したか、医療機関に相談したか等)。親族関係者から聴取した家庭環境の課題もまとめられます。
- 要保護性の評価:これらを踏まえ、再非行の恐れがどの程度あるか、今後どのような環境調整・指導が必要かという調査官の所見が記載されます。大麻事案なら、「この少年は一時的興味による使用であり依存性は低いが、交友関係にリスクがあるため環境改善が必要」等の評価がなされるイメージです。
親が心がける対応:社会調査の期間中、保護者としては調査官に協力的な姿勢を示すことが何より大切です。調査官から家庭状況について質問があれば隠さず誠実に答え、必要な資料(学校の成績表や医師の診断書など)も求められれば提出しましょう。仮に少年や家庭に不利な事実があっても、正直に伝えた上で「今後どう改善するか」という前向きな姿勢を示すことが重要です。調査官も保護者の本気度を見ていますので、協力を渋ったり虚偽を述べたりすると心証を悪くし、「反省が感じられない」と評価されて重い処分につながりかねません。逆に、親子で更生に向け努力している姿勢を示せれば、調査官の意見もそれを踏まえた前向きなものになりやすいでしょう。
少年審判の流れ:非行事実確認から処分決定まで
非行事実の認定:家庭裁判所で開かれる少年審判(家庭裁判所の裁判に相当)は非公開で行われ、裁判官が主導して手続が進みます。まず審判の席上、裁判官が事件記録に基づいて非行事実(犯罪事実)の告知を行い、少年に対して事実関係に間違いがないか確認します。少年が「はい、間違いありません」と認めれば付添人(弁護士)にも意見陳述の機会が与えられ、法律的に補足すべき点などを述べます。大麻事案であれば、尿検査結果や押収物から使用事実は明白なことが多く、少年が素直に事実を認めて非行事実は確定するケースが一般的です。
裁判官・調査官からの質問:非行事実の認定が済むと、引き続き裁判官が要保護性(更生の必要性)の審理に入ります。裁判官は少年に対し、事件に至った経緯や動機、事件後現在までの生活態度、今後の生活設計などについて質問します。少年の反省度合いや、更生に向けての考えを確認するためのやりとりで、裁判官は「懇切を旨として、和やかに」問いかけるよう努めることが少年法で定められているため、穏やかな口調で諭すように話が進みます。次に保護者に対する質問も行われ、審判までの少年の様子や、保護者として今後どのように更生を支えていくつもりか、といった点が尋ねられます。例えば「この子を更生させるために、家庭でどんな改善策をとっていますか?」等の質問が来るので、親は準備しておく必要があります。
付添人・調査官からの発言:審判には付添人弁護士や家庭裁判所調査官も同席しており、必要に応じて付添人や調査官から少年および保護者への質問がなされることもあります。付添人の質問は弁護士として少年に有利な事情を引き出す目的が多いですが、調査官からの質問はそれまでの調査結果を踏まえた指導的な内容になるのが特徴です。例えば調査官は「あなたは今回、友達からの誘いを断れなかったとのことだけれど、どうすれば今後は断れると思いますか?」といった問いかけをします。これは単なる情報収集ではなく、少年自身に自分の課題を自覚させる狙いがあります。調査官からの指摘で初めて自分の弱さや問題点に気付き、審判の場で涙を流す少年もいます。また、保護者に対して調査官が「ご家庭で生活環境の改善をしてください」と具体策を求める場面もあります。審判は単に裁く場ではなく、教育的・指導的な場でもあるのです。
処分決定の手続き:一通りの質問が終わると、少年に対し「最後に言っておきたいことはありますか?」と裁判官が問いかけ、少年の最終陳述が与えられます。少年が今の気持ちや今後の誓いを述べ終えると、いよいよ裁判官から最終的な処分が言い渡されます。処分が宣告された後、その内容が不服申立て(抗告)できる種類であれば手続きの案内がされ、審判は終了します。
試験観察という中間処分:審判の結果、多くの場合はその場で処分が確定しますが、ケースによっては**「試験観察」という中間的な措置がとられることがあります。試験観察とは、一定期間少年の生活状況を観察した上で最終処分を決める手続で、少年法第25条に規定されています。たとえば審判当日にいきなり保護観察に付するほどではないが更生の見込みをもう少し見極めたい、と裁判官が判断した場合に、この試験観察が活用されます。在宅試験観察では少年は一旦自宅に戻されますが、調査官の定期的な訪問や指導を受けながら生活し、数か月後に再度審判が開かれて最終処分が決まります。一方、家庭に問題がある場合などは補導委託試験観察**といって、少年を適切な施設や里親的な委託先に預けて生活させる形式もあります。試験観察期間中、調査官は少年の生活状況や交友関係、学校・職場での様子をチェックし、必要な助言指導を行った上で裁判官に報告書を提出します。その結果、改善が見られれば保護観察や不処分に、状況が悪化すれば少年院送致の方向で処分が決定されることになります。
大麻事案での審判のイメージ:大麻使用の事件では、非行事実自体は尿検査結果など客観的証拠ですぐに認められるでしょう。ただ、処遇を検討する審理では「なぜ使ってしまったのか」「反省しているか」「今後二度としないと誓えるか」といった点が問われます。裁判官は「君はどうして大麻なんかに手を出したの?」などと尋ね、少年が「軽い気持ちでした。もう二度としません」と答えれば、「本当に二度としないと言い切れるか?誘惑があったらどうする?」と踏み込むかもしれません。付添人弁護士も「保護者の管理下で専門医によるカウンセリングを受けています」など更生プランを補足説明してくれるでしょう。調査官からは「今回誘ってきた友人とは今後付き合わないと約束できますか?」等の質問があり、少年が「はい、もう連絡も取っていません」と答える――このように再非行防止策が少年自身の口から語られることが望ましい展開です。最後に処分が告知され、例えば「それでは本件は保護観察処分とします。しっかり更生に努めなさい。」と裁判官に諭されて審判が閉廷する、といった流れが想定されます。
##処分の種類と決定基準:どのように結論が出されるか
主な処分の種類:家庭裁判所の少年審判で下される主な処分には以下のようなものがあります(一般に下に行くほど重い処分となります)。
- 不処分:審判の結果、少年を保護処分に付する必要がないと判断された場合になされる決定です。非行事実が認められなかった場合(嫌疑なし)や、非行はあっても既に改善が見込まれて保護処分を施す必要がない場合に宣告されます。不処分になると審判はそれで終了し、少年は何の処分も受けず解放されます。例えば犯罪事実が軽微で、かつ少年が深く反省して再発防止策も整っていると裁判官が判断すれば「保護処分の必要なし」として不処分になるケースがあります。不処分でも審判自体は開かれますが、少年にとっては前科も付かず穏当な結末です。
- 保護観察:少年を施設に収容せず、地域社会で更生を図らせる処分です。少年は自宅など通常の生活空間で過ごしながら、保護観察官・保護司の指導監督を受けます。一般的には月に1~2回保護司と面談し、生活状況の報告や指導を受ける形となります。期間は原則2年間(最長で20歳になるまで)ですが、順調に更生が進めば短縮されることもあります。保護観察中は定められた遵守事項(夜間外出の制限や交友関係の見直し等)を守る必要があり、違反すると少年院送致に切り替えられる可能性もあります。保護観察処分となった場合は前科は付かず(家裁での保護処分は前科に当たらないため)、社会内で立ち直りを図れるというメリットがあります。
- 試験観察:前述した中間処分で、正式には処分ではありませんが、審判でいったん結論を留保し少年を観察措置に付す決定です。在宅または委託先で一定期間様子を見て、改めて処分を決めます。在宅試験観察中の少年は調査官に定期報告し、更生状況をチェックされます。この措置は初犯で反省はしているが環境整備が不十分なケースなどで使われ、観察期間中に環境調整や指導を行った後、再審判で最終処分(不処分か保護観察か少年院送致か等)を決める流れになります。
- 児童自立支援施設送致(及び児童養護施設送致):少年を児童福祉施設に入所させて生活指導・自立支援を行う処分です。非行少年を収容する施設としては少年院が有名ですが、児童自立支援施設や児童養護施設はそれよりも開放的な環境で、主に家庭に問題を抱える少年や年少の少年に対して用いられます。施設内で生活しながら学習や職業訓練、生活習慣の矯正などのプログラムを受け、更生を目指します。もっとも実務上は適用例が少なく、家庭環境が劣悪で保護者から切り離した方が良いケースなどに限られる傾向があります。
- 少年院送致:少年を少年院に収容して矯正教育を施す処分です。非行内容が重大で社会内での更生が難しい場合に選択されます。少年院は刑務所とは異なり教育・矯正が目的の施設ですが、事実上自由を拘束する最も重い保護処分です。期間は少年の更生度合いによりますが、初等・中等・特別短期・長期と分類され、長期の場合は20歳を超えても収容が継続することがあります(ただし18歳未満で刑事処分相当の罪を犯した場合でも、原則23歳までには退院させる建前です)。少年院送致になるのは、再非行の危険性が高く保護観察では改善困難と判断された場合や、被害が重大・常習性が顕著な場合です。
特定少年に関する特例:2022年施行の改正少年法により、18歳・19歳の**「特定少年」についてはいくつかの特例が設けられました。その一つが処分判断に関する規定で、家庭裁判所が特定少年に保護処分を科す際は、犯行の内容・悪質性を考慮し相当な範囲内で行わなければならないと定められています(改正少年法第64条)。平たく言えば、特定少年には犯した罪の軽重に見合った処分を行うよう求められており、年少の少年よりも犯情に応じて重めの処分が選択されやすい**という趣旨です。例えば同じ大麻事案でも、19歳の少年であれば17歳の少年より保護観察ではなく施設送致・少年院送致が検討されやすい傾向があります(もっとも具体的処分は個別事情次第です)。
処分決定の基準:少年審判における処分は、単に非行事実の重大さ(犯情)だけで決まるわけではありません。少年の更生可能性や家庭環境、反省の度合いといった要素が総合的に考慮されます。裁判官は調査官の報告書や鑑別結果を踏まえ、「この少年にはどの処分が最も適切か(更生に資するか)」を判断します。例えば初めての非行で被害も軽微であれば厳しい処分は必要ないと判断されやすく、深く反省し再発防止策も整っている場合は不処分や保護観察とされることが多いです。一方、非行の悪質性が高かったり常習性が疑われる場合は、社会内での更生は難しいとして少年院送致が検討されます。特に大麻事案では、初犯で少量の自己使用のみであれば保護観察処分となる可能性が高いですが、繰り返し使用していた形跡がある場合や営利目的(売買に関与)が疑われる場合には、家庭裁判所も重大視して少年院送致を選択することが十分あり得ます。処分の軽重はこのように非行の内容と再犯リスク、そして環境改善の見込みによって決定されるのです。
親にできるサポート:調査官・裁判所との連携
家庭での再発防止策:子どもの更生に向け、親が果たす役割は極めて重要です。まず家庭裁判所調査官から「生活環境を改善してください」と求められた場合、具体的にどんなことをすれば良いか考えましょう。調査官が改善を促す背景には、「生活習慣が乱れ、悪い仲間とつるんでいる状況が続けば再び非行に走る可能性が高い」という問題意識があります。そこで親としては、悪い仲間との関係を断たせる、深夜の外出をさせない、学校にきちんと通わせるといった基本的な生活の立て直しを図る必要があります。大麻事案であれば、必要に応じて薬物専門のカウンセリングや通院を手配し、本人の意思だけに任せず環境的・医療的支援も講じると良いでしょう。「口で言っても聞かない」という場合には、第三者である付添人の弁護士に助言してもらうのも有効です。専門家から諭されることで少年が心を開きやすくなるケースもあります。
調査官への協力:前述のように、調査官の心証は処分に直結すると言っても過言ではありません。調査官には率直に事実を伝え、反省と改善意欲が伝わる対応を心がけましょう。例えば「子どもにこんな非行をさせてしまい親として責任を痛感しています。現在、再発防止のため◯◯の措置をとっています」と具体的に話せば、調査官も「家庭でしっかり取り組んでいる」と評価してくれます。一方で、取調べのように身構えて黙り込んだり、言い訳ばかりしていると、調査官から**「反省が感じられない」と記録されてしまう恐れがあります。特に少年本人が調査官とうまくコミュニケーションを取れないタイプの場合、保護者がフォローしてあげることも大切です。お子さんが自分の言葉で反省や決意を伝えられなかったり、照れてうまく話せないようなら、親御さんから「この子は事件後、本当に後悔して毎日反省日記を書いています」など補足してあげると良いでしょう。それでも不安な場合は弁護士を付添人として付ける**ことを積極的に検討してください。調査官に対して弁護士が少年の良い面や努力している点を丁寧に説明してくれるため、誤解や意思疎通のミスによる不利益を防ぐことができます。
付添人弁護士との連携:少年事件では、家庭裁判所送致後の弁護士は「付添人」として手続に関与し、保護者と二人三脚で少年の更生を支援します。適切な処分を得るためには弁護士の力を借りることが非常に重要です。実際、少年事件の手続きは特殊でご家族だけでできることには限界がありますし、法律や制度に通じた専門家のサポートがあるかないかで結果が大きく変わり得ます。付添人弁護士は、調査官や裁判官との打ち合わせ(カンファレンス)にも同席し、少年に有利な材料を積極的に提供してくれます。また処遇意見書といった書面を作成し、少年の反省状況や家庭での改善策、再発防止計画などを整理して裁判官に提出することもあります。内容が説得的であれば、裁判官が調査官の意見よりも弁護士の意見書を採用することさえあります。保護者は弁護士と密に連絡を取り合い、自宅での様子や少年の長所・変化した点を伝えて、意見書作成などに協力しましょう。例えば「事件後アルバイトを始め、生活リズムが改善した」「家族で更生に向け毎晩話し合っている」等、第三者には見えにくいポジティブな情報ほど積極的に弁護士に共有すると効果的です。
親の姿勢と決意:最後に大切なのは、親自身の覚悟と支援の継続です。子どもが非行に及んだ事実を受け止め、「二度とこのようなことを起こさせない」という強い決意を持って、更生に向けた環境づくりに取り組みましょう。家庭裁判所や調査官は、保護者が責任逃れせず真摯に向き合っているかを見ています。たとえ処分が下されても、それはゴールではなく更生へのスタートです。処分後も保護司や関係機関と連携しつつ、親として愛情と規律をもって子どもを導いてください。少年事件に関わるすべての関係者――裁判官、調査官、保護司、児童福祉司、付添人弁護士――は皆、少年の立ち直りを願ってそれぞれの立場からサポートする仲間です。その中で保護者は最も身近な存在として重要な役割を担います。周囲の専門家と協力しながら、親子で更生への道を進んでいくことが、最終的には子どもの明るい未来につながるのです。
Sources:
- 渋谷青山刑事法律事務所 少年事件コラム
- 永岡法律事務所 解説コラム
- あいち刑事事件総合法律事務所 コラム
- その他:裁判所資料