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薬院法律事務所

刑事弁護

「酔っ払っていたので記憶がない」場合に行うべき弁護活動(刑事弁護)


2025年10月10日刑事弁護

犯罪について、「酔っ払っていたので覚えていない」という弁解は良く聞きます。実際、そういうことはあるのですが、だからといって責任能力が認められないほど泥酔しているということは多くなく、単に記憶を喪失しているだけということがしばしばあります。そういった場合「記憶にないから否認すればいい」「黙秘すればいい」という考えでは、依頼者の真の利益が護られないことがあります。参考文献を引用しますが、捜査が開始されている以上は一定の嫌疑はあるという前提で冷静に対応する必要があります。「警察の報道発表回避(実名報道回避)のための弁護活動」季刊刑事弁護121号(2025年)にて詳細に解説していますが、逮捕は、報道発表に直結いたします。そのため、在宅事件では逮捕を回避することが非常に重要になります。

伊丹俊彦・合田悦三編集代表『逐条実務刑事訴訟法』(立花書房,2018年11月)134頁
【エ 罪証隠滅の主観的可能性 その上で,ウで検討した証拠隠滅の余地の大小,予想される処分の軽重,被告人の供述内容・経過・態度,被害弁償や示談に向けた対応の有無,現に証拠隠滅行為をした事実があるか否か等から,被告人が現実に罪証隠滅行為に及ぶと予想されるかどうかを判断する。罪証隠滅の余地が大きく,予想される処分が重いことは,一般論としては罪証隠滅の意図を推認させる。被告人の供述内容等については,それのみで罪証隠滅の意図を推認できるものではないとはいえ,事実を否認したり供述を二転三転させたりしていることは,罪証隠滅の意図が強いことを推知させる一事情となり得る。また,黙秘している場合にも,自白している場合と比べて,相対的には罪証隠滅の意図をうかがわせる一事情として考慮せざるを得ない。もっとも,否認といってもその内容は様々であり,他の証拠に働きかけることが可能な内容の否認かどうかも考慮すべきである。なお,被疑者が「酒に酔って犯行時の記憶がない」と供述することが実務上しばしばある。この場合,被疑者がそのような供述をしたことを,罪証隠滅行為に及ぶ意図がある方向に直ちに結びつけて考えるのは相当でない。飲酒検知の結果等から被疑者が実際に相当酪酎していて,記憶がないというのもあながちうそではないことがうかがわれ,かつ,被疑者が「記憶はないが,被害者が被害に遭ったというのであれば間違いないと思う」旨の供述をしていれば,自白している被疑者に準じて罪証隠滅のおそれの有無を判断できることが多いと考えられる。示談の意思も示すなどしていればなおさらである。】

【告知】季刊刑事弁護121号に「警察の報道発表回避(実名報道回避)のための弁護活動」が掲載されます