同一場所に対して、同一の被疑事実による再度の捜索差押は認められるか
2026年01月06日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、先日、私の自宅に家宅捜索がありました。インターネットで大麻を購入したということで、捜索されましたが結局何も出てこなかったので警察官は帰りましたが、「また来るかもしれない」と言われています。今回はたまたま家族がいなかったのでバレなかったのですが、次回はまた来るかもしれないということで怯えています。もう一度来ることもあるのでしょうか。大麻はもう使ってしまっていて手元にありません。
A、法律上は、再度の捜索差押は可能ですが、「目的物が存在する蓋然性」が認められないことが多いです。ご質問の事案だと再度の捜索・差し押さえの可能性は低いと思います。
【解説】
逮捕状を請求する場合は、過去に同じ被疑事実で逮捕状を請求した場合はその旨を記載するように啓司訴訟法と刑事訴訟規則で定められています。これは、逮捕については「一罪一逮捕の原則」があるからです。もっとも、捜索差押令状の請求についてはこのような規定はありません。とはいえ、無制限に再度の捜索・差押えをすることは実務上は認められていません。
※刑事訴訟法
第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
② 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。次項及び第二百一条の二第一項において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。ただし、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
③ 検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131#Mp-Pa_2-Ch_1-At_199
※刑事訴訟規則
(逮捕状請求書の記載要件)
第百四十二条逮捕状の請求書には、次に掲げる事項その他逮捕状に記載することを要する事項及び逮捕状発付の要件たる事項を記載しなければならない。
一被疑者の氏名、年齢、職業及び住居
二罪名及び被疑事実の要旨
三被疑者の逮捕を必要とする事由
四請求者の官公職氏名
五請求者が警察官たる司法警察員であるときは、法第百九十九条第二項の規定による指定を受けた者である旨
六七日を超える有効期間を必要とするときは、その旨及び事由
七逮捕状を数通必要とするときは、その旨及び事由
八同一の犯罪事実又は現に捜査中である他の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨及びその犯罪事実
https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/3893/ja
【参考文献】
最高裁事務総局刑事局監修『捜索差押等に関する解釈と運用』(刑事裁判資料第272号,1997年3月)
【7 再捜索・再差押
問題29
既に捜索差押を実施した後,再度同一被疑事実により,同一場所を捜索して同一物を差し押さえるための捜索差押許可状の請求は,どのような要件のもとに認められるか。
(協議結果)
同一事件における同ー場所等に対する捜索差押については,刑訴法上特に規定がない。この点,再度の逮捕については刑訴法199 条3項に明文の規定があるが,これは逮捕が身柄拘束という重大な権利侵害を伴うものであることから,同一事件についての再逮捕を特に厳格な司法審査の下に置こうとしたものであって,明文規定のない他の強制処分について,再度の令状発付を否定するものとは考え難い。むしろ,一般的にいえば,捜索差押の権利侵害の程度は逮捕と比較して小さいと考えられるから,逮捕の一回性の原則に比べれば,再度の捜索差押は,より緩やかに認められるべきものと解される。しかし,前に1度捜索して押収すべき物を発見するに至らなかったのに再度捜索差押をするというのであるから,再度の捜索の必要性の疎明,つまり,差し押さえるべき物が存在する蓋然性の疎明は必要であろう。
具体的には,最初の捜索以降に持ち込まれたとか,その後の供述で所在場所が判明したなどといった事情変更のある場合が,蓋然性があるときに当たるのは明らかであろう。しかし,例えば,捜索漏れがあったといった場合にも再度の捜索を認めるかということになると,難しい問題であるが,再度の捜索が一切許されないとすると,最初の捜索で根こそぎ差し押さえろということにもなりかねない。結局,具体的な事情に応じて,どの程度,差し押さえるべき物の存在する蓋然性があるかを判断することになろう。】(59-60頁)
吉開多一・江﨑澄孝「検察×警察の実務に役立つ!捜査法誌上講義【第6回】」捜査研究905号(2025年12月号)89-103頁
【捜索・差押えは、逮捕に比べれば権利利益を侵害する程度が低いと考えられますし、捜査の初期段階で行われるため、その後の捜査の進展によっては同じ場所を捜索・差押えする必要が出てくる場合があります。とはいえ、同じ場所を再び捜索する場合には、「正当な理由」のうち、「目的物が存在する蓋然性」があるといえることを捜査機関側が証拠に基づいて疎明する必要があるといわれています。…私の経験では、いわゆる「疎開」の事例がありました】(101頁)


