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薬院法律事務所

刑事弁護

年齢切迫の少年事件における刑事弁護活動の重要性(在宅事件)


2026年01月09日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

Q、先日、大学生の私の息子が大麻を所持していたということで警察に検挙されてしまいました。弁護士さんに相談したところ、成人になった場合には確実に起訴されて前科がつくといわれたのですが、少年事件として終結すれば保護観察で終わることもあると言われました。ですが、息子は19歳10ヶ月で、このままでは成人になってしまいます。どうすればいいでしょうか。

A、弁護人に依頼して、積極的に捜査を進めるように働きかけるべきでしょう。弁護人が供述調書を作成して提出するといった方法もあります。警察は忙しいと事件を後回しにしがちですので、こちらから働きかけることが有効なことがあります。なお、少量の場合は起訴猶予の可能性もありますので、その可能性も踏まえた弁護活動が必要になります。

 

【解説】

少年法上、犯行時には20歳未満だったものでも、裁判の際に既に20歳に達している場合には少年法の適用はありません。そのため、捜査が長引いた場合には、本来であれば少年法で処分される事案が、20歳以上と同じ刑事裁判となることがあります。前科が就くことは、海外渡航などにおいても重大な不利益が生じることがありますので、不起訴処分が狙える案件でなければ、基本的には少年事件として終結してもらうことが望ましいです。そのためには、弁護人が積極的に捜査機関に捜査協力をすることで、捜査を進めるということがあります。なお、詐欺の受け子を複数回行った事案などで、余罪がある場合の家庭裁判所の処理については、横澤慶太「少年実務 THE BASICS AND BEYOND 第6回 年齢切迫事件をめぐる諸問題」家庭の法と裁判44号(2023年6月号)96-104頁(加藤学編著『裁判所における少年事件の実務』(日本加除出版,2025年10月)61頁以下所収)が詳しいです。

https://www.kajo.co.jp/c/book/08/0801/41014000001

 

【参考文献】

河村博編著『少年法-その動向と実務-〔第四版〕』(東京法令出版,2023年7月)32-33頁

【(3) 年齢の超過,誤認
犯行時に少年であっても,各関係機関を経由している間に成年に達してしまうと, その時点から少年法の適用はなくなり,成人の手続で処理されることになるのは,前述(第1章第3の1⑤)のとおりであるが,少年にしてみれば,手続が遅延したために少年法上の取扱いを受ける機会を失うことになる。そこで, このような場合には,後の成人としての手続において, このような手続の遅延が不当に本人の利益を奪ったものであり,違法であるという主張のなされる余地が生ずる。したがって,捜査機関としては,必要な捜査を尽くすために日時を費やすことは何ら違法でないことは当然であるが, ただ漫然と日時を徒過し,成年に達しさせてしまうことのないように十分注意しなければならない。最高裁判所は,犯行時年齢19歳2か月の少年の業務上過失傷害被疑事件につき,警察における捜査に日時を要したため被疑者が成年に達し,家庭裁判所の審判を受ける機会を失ったとしても, それが,捜査に従事した司法巡査の配置変更,他事件処理の都合等, 当該事件の具体的事情の下においては,捜査官の措置にいまだ重大な職務違反があるとはいえず, その捜査手続を違法とすることはできないとしたが, その前提として,「捜査官において,適時に捜査が完了しないときは家庭裁判所の審判が失われることを知りながら殊更捜査を遅らせ, あるいは,特段の事情もなくいたずらに事件の処理を放置しそのため手続を設けた制度の趣旨が失われる程度に著しく捜査の遅延を見る等,極めて重大な職務違反が認められる場合においては,捜査官の措置は,制度を設けた趣旨に反するものとして,違法となることがあると解すべきである」と判示していることには注意を要する(最判昭45 . 5 .29刑集24・5 ・223。これを引用する近時の判例として,最決平25. 6 . 18刑集67. 5 .653)。】

https://www.tokyo-horei.co.jp/shop/goods/index.php?10683

 

横澤慶太「少年実務 THE BASICS AND BEYOND 第6回 年齢切迫事件をめぐる諸問題」家庭の法と裁判44号(2023年6月号)104頁

【21)当研究会での議論においては,家庭裁判所が少年院送致決定をした場合,そのような強い枠組みによる保護処分が選択されたことは,余罪の訴追裁量の行使に際して不起訴等に向かわせる事情の一つとして捉えられ得るのではないか,という指摘もなされた。】

https://www.kajo.co.jp/c/magazine/006/31009000044

 

福岡県弁護士会子どもの権利委員会編『少年事件マニュアル-少年に寄り添うために』(日本評論社,2022年7月)123頁

【事件が家庭裁判所へ送致された段階で少年が19歳10ヶ月や11ヶ月である場合を、実務では年齢超過切迫事案と呼んでいます。少年が審判までに満20歳となってしまうと少年法が適用されず、成人として刑事処分を受けることになります。少年の可塑性、刑事処分を受けることの少年の経歴への影響の大きさなどからすれば、たとえ罰金刑や執行猶予つき判決であっても、少年には刑事処分ではなく保護処分が望ましいと考えるべきです。
したがって、年齢超過切迫事案を担当する場合、少年が家裁送致の段階で20歳まであと10日を切っているなど時間的に絶対に間に合わない場合を除いて、年齢超過による逆送を阻止することが必要でしょう。それが少年の利益につながると考えられます。】

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8822.html

 

最高裁判所事務総局家庭局「少年事件の概況(2)・完-少年事件-」法曹時報63巻1号(2011年1月号)170頁

【(1) とりわけ、いわゆる年齢切迫事件については、否認事件であるか否かにかかわらず、事件受理直後には、扣当裁判後、書記官及び調査官で協議をして、成人前の処理を行うか否か等につき方針を決める必要がある。この点、年超検送を定めた法19条2項との関係が問題となり得るが、 同条項は、 「調査の結果、本人が20歳以上であることが判明したとき」に検察官送致決定をしなければならないことを定めたものであるから、成人になるまで短い則間しか残されていないとしても、その経過を待って年超検送することは想定しておらず、家庭裁判所としては調査等を尽くして迅速に処理することが求められているというべきである。】