在宅事件、アリバイ主張を積極的に提出すべきかという相談
2026年01月21日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市に住む男性です。先日、警察が訪ねてきて、私が深夜に痴漢行為をした犯人と似ているということで警察署に来て欲しいということを言われました。当日、どこに行っていたのか尋ねられたのですが、実は私は不倫をしていたので不倫相手と会っていました。そのことを話した場合、妻に知られる可能性もあり、話すべきか迷っています。どうすべきでしょうか。
A、逮捕の可能性もある案件なので、一般的にはアリバイがある場合には話をした方が良いということが多いです。ただ、どこまで話をするかということは難しい問題なので、弁護士と良く協議すべきだと思います。
【解説】
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により,これを逮捕することができる(刑訴法199 条1項)とされています。この「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」は勾留の要件としての「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑訴法60条l項)と比べて、根拠が弱いもので足りるとするのが実務です。
この嫌疑の認定は積極証拠と消極証拠の両面から判断されるものですが、仮に「アリバイ」がある場合は、現在の日本社会を前提とした場合には、積極的に供述することが有利なことが多いと考えています。かつては、「アリバイ」主張は捜査官によるアリバイ潰しを招くから慎重にしなければならないという議論もありましたが、客観的証拠が重視されるようになってきていること、防犯カメラのデータは一定期間で抹消されることがあることからすれば、証拠保全の観点からアリバイを積極的に主張する必要性は高まっていると考えています。もちろん、客観的証拠は弁護側で確保すれば良いという考え方もありますが、現実的には難しいことも多いです。
※刑事訴訟法
第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131#Mp-Pa_2-Ch_1-At_199
【参考文献】
幕田英雄『実例中心捜査法解説 第5版』(東京法令出版,2025年7月)19-20頁
【逮捕の適法要件である「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」とは、捜査機関の主観的嫌疑では足りず、証拠資料に裏付けられた客観的・合理的な嫌疑でなければならないから、嫌疑の合理性を疑わせる資料、例えばアリバイの存在があるときは、その吟味にも十分耐え得る嫌疑であることが必要とされる(広島地呉支部判昭34.8.17下民集10-8-1686)。】
https://www.tokyo-horei.co.jp/shop/goods/index.php?185
服部啓一郎ほか編『先を見通す捜査弁護術 犯罪類型別編』(第一法規,2020年3月)55頁
【一方、否認事件であれば、黙秘することも検討すべきです。この点については、被疑者が無実を主張するのであれば、自己が潔白であることを積極的かつ具体的に弁解させ、警察により裏付捜査を行わせ、嫌疑不十分又は起訴猶予による不起訴処分を目指す方が得策であるとの弁護方針もあり得ます14。ただし、この場合も、検察官にアリバイ潰しをされる危険性があることには注意しなければなりません15。】
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