モペットで事故を起こしたら、無免許危険運転致傷罪といわれたという相談(交通事故、刑事弁護)
2024年11月28日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、東京都新宿区の会社に勤務している20代男性です。運転免許は持っていません。先日、モペットを購入したので通勤に利用していたのですが、歩行者の方にぶつけてしまい怪我をさせてしまいました。警察と救急車に通報したのですが、後日、警察官から「無免許危険運転致傷罪」の被疑者として取り調べを行うと連絡がきました。免許が必要とは知りませんでしたし、ペダルをこいでいただけですので、バイクや自動車と同じように取り扱われるのは違和感があります。どうすれば良いのでしょうか。
A、近時、原付免許が必要な電動自転車を「モペット」などとして販売している事例があるようです。これらの車両については、原付免許が必要なものがあります。そのため、無免許危険運転致傷罪が成立し得ます。ただ、無免許運転の「故意」を否定できる場合もあると思います。
【解説】
いわゆるフル電動自転車については、道路交通法上は自転車ではなく、原動機付自転車又は自動二輪車として扱われます。また、アシスト機能を使わずに自転車として利用していても、運転免許が必要なことが法改正により明確化されました。とはいえ、状況によっては「無免許運転」について故意を否定できる場合もあると思います（免許が必要でないと誤信した）。弁護士の面談相談を受けられて下さい。
【参考記事】
「違法」知らずに運転し“道交法違反”の落とし穴 “フルアシスト”自転車の「無免許」摘発が相次ぐワケ
モペットは原付き周知課題 改正道交法で明記
https://kumanichi.com/articles/1607977
令和0 6年度 第1回 新宿警察署協議会 議事概要
令和06年06月14日午後04時00分午後05時00分
麻布警察署 講堂
会議に先立ち地域課長の出席について委員から了承を得た。
[業務説明]
２交通違反取締り状況
（１）新宿署管内の重点路線等
ア警視庁指定重点路線（９路線）
イ新宿署指定重点路線（２路線）
（２）モペット、電動キックボード、自転車の指導取締り
アモペットによる人身事故の発生（令和５年）
無免許危険運転致傷罪として立件
イ指導取締りの強化
引き続き、交通切符を適用した取締りを積極的に推進
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/shokai/kyogikai/kyogikai.files/shinjuku.pdf
【参考文献】
幕田英雄「第4節 無免許運転事犯」藤永幸治編集代表『シリーズ捜査実務全書14 交通犯罪(4訂版)』(東京法令出版,2008年4月)206-235頁
210頁
【例えば、普通免許を受けている者が、大型自動車を運転するのは無免許運転である（福岡高判昭51.4. 28判夕374.297。なお、本件の自動車は、定員14名の乗合自動車であって外見上普通自動車と異なるものであり、被告人から大型自動車を普通自動車と誤信して運転したとの弁解がなされたが、これはいわゆる法律の錯誤であり無免許運転の故意を阻却しないとされた）。】
西口諒一・齊藤純一「第3 その他の規定の整備」警察学論集77巻10号(2024年10月号)70-79頁
71頁
【2 いわゆるペダル付き原動機付自転車について
(1)いわゆるペダル付き原動機付自転車による交通事故・交通違反の実態アいわゆるペダル付き原動機付自転車の性能・構造上の特徴
いわゆるペダル付き原動機付自転車とは、原動機及びペダル（回転させることにより動力を車輪に伝達するものをいう。以下同じ｡）を備えている車両であって、当該車両に備えられたペダルを用い、人の力によっても走行させることができるものをいう。いわゆるペダル付き原動機付自転車は、自転車と同様の外観を有している場合もあるが、専ら原動機のみを用いて運転することができるほか、原動機を用いるとともにペダルを用いて走行させることができるもの（内閣府令に規定する人の力を補うため原動機を用いる自転車の構造の基準3)を満たさないもの）が存在するなど、自転車とは本来的に異なる性能を有している。
「モペット｣、「E-バイク｣、「フル電動自転車」等と称して流通している車両の多くは、スロットルが車両に備え付けられているなど、自転車とは構造が大きく異なっている。】
74頁
【このほか、このような誤解が生じやすい状況に乗じて、販売事業者が「自転車」と称して、いわゆるペダル付き原動機付自転車を販売している事案も確認されている4)。】