水野紀子 (東北大学教授),大村敦志 (東京大学教授)/編『民法判例百選Ⅲ 親族・相続 第2版』
2018年07月20日読書メモ
判例百選シリーズは学生のころから愛読しています。実務にも結構役立ちます。
親族、相続分野は、財産法と違い、どういう社会を作るべきかという論者の価値判断が全面に出てくるところが面白いです。
理論的に割り切りにくいのと、事案が多様なので例外を認める余地も大きい点も面白い。
面白いなと思ったのは最高裁平成16年11月18日判決、いわゆる「パートナーシップ関係」について関係破棄の慰謝料請求を認めなかった事例です。山下純司学習院大学教授の解説で、こういう関係を事実に即して保護しようという試みは、国家が「裏切って良い関係」と「裏切ってはいけない関係」を区別することになり、私的領域に過剰に介入していくことになると批判されています。
何かを「保護する」という試みは、同時に誰かの自由を奪うことになります。国家が何らかを「保護する」という名目で自由を規制していくことの危険性を指摘していて、なかなか示唆的だなと思いました。
あと、親子関係不存在が確定した後に、養育費を不当利得として返還請求をすることを認めた高裁判例があることを初めて知りました(大阪高裁平成20年2月28日速報判例解説3号109頁、LEXDB25400319)。否定した裁判例もありようですが、なるほどと思いつつ、なかなか業が深い感じがあります。
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641115392