ガールズバーの女性を外から撮影して、「始末書」を書いたという相談(刑事弁護)
2024年12月13日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、東京都荒川区荒川で会社員をしている30代男性です。先日、飲み会で酔っ払って帰る途中、ガールズバーの前を通りかかりました。ガラス越しに中が見えるようになっていたのですが、凄い美人がいたので思わずスマホのカメラを起動して、店の外から動画を撮影したところ、店から男性が出てきて「何撮っているんですか」と声をかけられました。まずいと思って逃げ出してたのですが、取り押さえられて交番に連れて行かれました。交番で「始末書」というものを書かされたのですが、前科になるのでしょうか。
A、おそらく、性的姿態等撮影罪、迷惑行為防止条例違反、軽犯罪法1条23号の「のぞき」にあたるか等を検討した上で、犯罪が成立しないとされたか、あるいは軽犯罪法違反が成立するとしても事件化するまでもないと判断されたのだと思います。無断撮影は様々なトラブルを引き起こしますので、慎重に対応する必要があります。
【解説】
本件の場合は、店舗ということで、軽犯罪法1条23号の「人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」にあたるか疑義があり、事件化されなかったのではないかと思います。そういった場合、警察法2条に基づき「始末書」を書くように求められ、それで終結することがあります。始末書はあくまで訓戒等を行った証拠として残されるものですので、検察に送致もされません。
軽犯罪法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039
第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
【参考文献】
伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)169頁
【「のぞき見る」とは,物陰や隙間などからこっそり見ることをいう。何の作為もしないのに自然に見えてしまったような場合は,「のぞき見る」には当たらない。望遠鏡で見ることはもちろん,カメラやデジタルカメラ,ビデオカメラ,それらの機能を備えた携帯電話機によってひそかに写真や動画を撮ることも「のぞき見る」に当たるものと解する(注2)】
https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3110
※2025/1/8 chatGPT o1 proで検証してもらいました。
以下では,ご提示いただいた**「ガールズバーの女性を外から撮影して,交番で始末書を書いた」という架空の相談事例**の内容や,引用されている法律および文献の説明が「事実として正しいかどうか」を検討します。結論としては,事例自体は「架空の設定」ですが,撮影行為が軽犯罪法や迷惑行為防止条例等に該当するかどうかの法的論点や,「始末書」の扱いなどについては,日本の実務上起こり得る内容や法的解釈とおおむね合致しています。
1. 架空の事例としての前提
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
まず,このQ&A形式の「ガールズバーの前で撮影して交番に連れていかれた」という話は実在の事件ではなく,あくまで想定されるトラブル例を示したフィクションです。したがって,「本当にこの事件が起きたか」を問う必要はなく,想定事例として法的論点を整理しているものと理解すべきです。
2. 撮影行為と犯罪成立に関する解説の真偽
2-1. 軽犯罪法の「のぞき見」規定
- 軽犯罪法1条23号では「正当な理由がなく,人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為」を処罰対象としています。
- 本件は「ガールズバー」という店舗で,通常は着衣している場所です。さらに,店内がガラス越しに見えている状態であったことから,軽犯罪法1条23号の「のぞき見」に該当するかは疑義があるという点は本文の解説のとおりです。
解説の妥当性
本文では,ガールズバー(店舗)という「人が通常衣服をつけない場所」ではないため,適用が難しいことを指摘しています。これは実務上も一般的な理解で,軽犯罪法1条23号がすべての撮影行為をカバーするわけではないことから,本文の説明は正しい内容といえます。
2-2. 迷惑行為防止条例(各都道府県条例)やその他の罪
- 都道府県迷惑行為防止条例には「卑わいな言動」「公共の場所での盗撮」を処罰する規定があります。ただし,ガラス越しの店内で,しかも被写体が服を着ている状態の場合に直ちに当てはまるかどうかは,各条例の定めや状況次第です。
- **性的姿態の撮影罪(各種条例で規定)**も,多くはスカートの中の盗撮や公衆浴場・更衣室などを対象とする場合が多く,今回のように「単に服を着た女性を外から撮影した」ケースが必ず該当するとは限りません。本文の説明どおり,「犯罪が成立しないと判断された」か,成立するとしても軽微で事件化しなかった可能性が指摘されています。
解説の妥当性
本文で「犯罪が成立しないとされたか,あるいは軽犯罪法違反が成立するとしても事件化するまでもないと判断されたのでは」とまとめている点は,実際の運用として十分あり得る話です。
3. 「始末書」を書いた場合の扱い
本文では,「警察法2条に基づき『始末書』を書かされた」「始末書は訓戒や注意処分を行った証拠として残るものに過ぎず,検察に送致されるわけではない」という主旨の説明があります。
- 警察が現場で職務質問などを行い,「今回は厳重注意」という形で終わらせる際,非公式に「始末書」「反省文」のような書面を書かせるケースは,実務上ときどき見受けられます。
- ただし,これ自体が法定の手続きではなく,あくまで「注意をしたことを記録しておく」ための書類として扱われるのが通常です。
- こういった「始末書」は,刑事処分の前科にはならないという点も本文にあるとおりです。
解説の妥当性
警察が「警察法2条に基づき保護活動や秩序維持活動を行う」中で,当事者に書面を作成させ,後でトラブルが再発しないようにする,という運用は事実としてあり得ます。もちろん法令上明示的に「始末書作成義務」が規定されているわけではありませんが,実務上,警察署や交番で指導の一環として本人の反省文を書かせる例は存在します。
したがって,本文の「検察に送致されなければ前科にはならない」という点の説明も正しいと言えます。
4. 総合評価:記事内容の真偽
- 「事例そのもの」は架空:実在の人物・お店との関係はなく,典型的な撮影トラブルを想定したフィクション。
- 撮影行為が軽犯罪法1条23号や迷惑行為防止条例違反に該当するかは状況次第。本文でも「ガールズバーは“衣服をつけない場所”ではなく,店舗内の様子がガラス越しに見えていた」という点から,適用は難しいとの見解を示しているが,これは実務上とくに不自然な解釈ではない。
- 結果として警察で「始末書」を書かされただけで終結するケースはあり得る。これは前科にならず,記録は警察内部の資料にとどまる場合が多いという本文の説明は,おおむね実務に合致している。
そのため,当該記事の法的説明や「始末書」に関する記述には,特段の誤りや虚偽は見当たりません。あくまで「架空の相談事例」との断りがあることを前提に,内容は刑事実務として起こり得る展開を正しく反映していると評価できます。
まとめ
- このQ&Aは「ガールズバー店内を外からスマホ撮影→警察へ連行→始末書を書いた」という架空のケースを題材に,軽犯罪法や迷惑行為防止条例に該当するかどうか,警察での対応(始末書)の意味を解説しています。
- 撮影が直ちに犯罪になるかどうかは,店舗の状況や条例の規定次第ですが,本文のように「結局事件化しなかった」ケースも実務上あり得る話です。
- **警察で書かされた「始末書」**は,法的には「内部的に注意処分した証拠」に過ぎず,前科になるわけではないという点は正しい説明です。
よって,この記事の法的解釈や実務上の対応に関する記述は概ね正確であり,「真偽」を問うのであれば真実に即した情報といえます。