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薬院法律事務所

刑事弁護

取材対応「下半身にカメラ構え「卑わいな言動」最高裁が判断 平成20年判決からの「時代の変化」」


2022年10月01日刑事弁護

弁護士ドットコムの取材に回答しました。

下半身にカメラ構え「卑わいな言動」最高裁が判断 平成20年判決からの「時代の変化」

https://www.bengo4.com/c_1009/n_15373/

 

判決文

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91574

 

※弁護士向けコメント

本判決で、弁護人は、5条1項2号にいう「差し向け」に至らない行為を同項3号に当たるとして処罰することは許されない旨主張したようですが、そのように解すべき根拠はない、と否定されています。この「差し向け」の規定は平成24年7月1日の改正で導入されているのですが、当時の警視庁の検察庁に対する説明をみると、弁護人の主張には一理あるように思われます。

私が情報公開請求で入手した、平成23年11月2日付の警視庁「地検からの検討依頼に対する回答」では、検察庁から『5条1項2号の撮影しようとする行為を「差し向け」「設置」に限定しているが、規制範囲を限定し過ぎるのではないか』との質問に対し、画像のとおり回答しています。

未遂的行為の規制のため、具体的に構成要件を明記したという経緯から考えると、弁護人の主張に根拠がないとはいえないと思います。いずれにしても、これは地域の条例の制定趣旨によるところですので、他の地域の条例でも、本判決と同じように限定されないのかはわかりません。

盗撮事件弁護要領(性的姿態等撮影罪・迷惑防止条例)

着衣の上からの無断撮影が、盗撮(迷惑防止条例違反)になるかという相談(刑事弁護)

盗撮してしまったが、自首をすべきかどうかという相談(盗撮、刑事弁護)

性的姿態等撮影罪の施行により、量刑が変化したかという問題(盗撮、刑事弁護)

 

※2025/1/7 chatGPT o1 pro に判決文と弁護士向けコメントを含めて検証してもらいました。

 

以下の文章は、

「東京都迷惑防止条例5条1項2号が定める『撮影目的でカメラを差し向ける行為』に該当しないにもかかわらず、同条1項3号(卑わいな言動)によって処罰されるのは不当ではないか、という弁護人の主張を最高裁が退け、『カメラを構えただけでも卑わいな言動となりうる』と認めた判決は正当である」

という趣旨を含んでいます。結論から言うと、この文章の内容は、令和4年12月5日最高裁第一小法廷決定(令和4年(あ)157号)の判文や、それに至る迷惑防止条例の解釈・実務を踏まえると、概ね正しいといえます。もっとも、迷惑防止条例の地域的・歴史的な改正経緯の差異や、「差し向け」規定の立法趣旨などをめぐる議論があり、一部に解釈論の余地や地域差があることも指摘されます。以下、検討ポイントを整理します。


1. 最高裁決定(令和4年(あ)157号)の概要

(1)事案の概要

  • 被告人は東京都内の店舗内で、小型カメラを手に持ち、膝上丈スカートを着用して前かがみになった女性客(以下「A」)の後方に近づいた。
  • カメラをAの下半身に向けて構えるなどし、Aの「立場にある人」を著しく羞恥・不安にさせるような行為をした。

(2)最高裁の判断

  • 原判決を維持し、被告人の行為が東京都迷惑防止条例5条1項3号(卑わいな言動)に該当するとして上告を棄却。
  • 最高裁は、被告人の行為が「カメラを差し向ける」行為の範囲に入らなくても、5条1項2号ではなく3号が適用されて「卑わいな言動」として処罰されうる旨を認めた

(3)決定文の要点

  • 判文では「膝上丈のスカートを着用した女性客の下半身に向けてカメラを構えた行為」が、Aの立場にある人を著しく羞恥させ、不安を与える社会通念上下品・みだらな動作だとした。
  • 弁護人の「5条1項2号の『差し向け』に至らない行為を3号で処罰することは許されない」との主張を退け、「そう解すべき根拠はない」と述べている。

2. 迷惑防止条例5条1項2号と3号の関係

(1)条文の構造

  • 5条1項2号:撮影(あるいは撮影目的でカメラを差し向け、設置する)行為を規制
    • 具体的には「下着や身体を写真機で撮影、または撮影目的で差し向け・設置する行為」を禁止。
  • 5条1項3号:「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」
    • 上記1号・2号以外の態様であっても、性的にみだら・下品で、被害者を羞恥・不安にさせる行為を幅広く処罰対象とする。

(2)「差し向け」規定追加の経緯

  • 東京都条例(平成24年7月1日改正)では、撮影行為未遂的な行為を規制するため「差し向け」「設置」の文言が導入されたとされます。
  • 一方、本判決の被告人行為が「差し向け」に厳密に該当するのか(=実際にカメラが撮影されていたか、未遂の段階かなど)争われたものの、最高裁は「(2号)には当たらないが、(3号)の卑わいな言動として処罰できる」と判断しました。

(3)弁護人の主張

  • 弁護人は「差し向け」規定がある以上、それに該当しない行為を3号(卑わいな言動)で処罰すると、要件を実質的に拡張してしまうのではないか、と主張。
  • しかし、最高裁は「そのように解すべき根拠はない」と明言し、2号と3号は併存し、2号に当たらない行為でも3号で処罰可能とした。

3. 本件決定に対する評価・真偽の検討

(1)「カメラを構えただけでも卑わいな言動になりうる」という結論

  • 記事の結論: 「撮影に至らなくても、カメラを構えて女性の下半身に向ける行為が卑わいな言動に該当すると最高裁が認めた」
  • これは本決定の趣旨と合致します。実際、判決は「カメラを向けた行為のみであっても、被害者の立場からすれば著しく羞恥・不安を与える」としており、3号の適用を肯定しています。

(2)5条1項2号を避けても3号で処罰可能

  • 弁護人の反論としては「2号(差し向け規定)を満たさない行為を、3号で処罰するのはおかしい」というものだが、最高裁は明確に排斥。
  • 記事中で引用される弁護士のコメント(「撮影行為未遂を狙った2号があるのに、3号で処罰するのは拡張解釈ではないか?」)も実際に存在する議論ですが、本判決でその主張は退けられました。

(3)「卑わいな言動」の解釈は広がりをみせている

  • 平成20年判例(北海道迷惑防止条例)では、執拗に近接して撮影した事案を「卑わいな言動」と認定。
  • 今回は「執拗」ほどではないが、カメラを構えただけで「卑わいな言動」とされ、判例の射程が(被疑者側の主観や執拗さの度合いとは無関係に)拡大している方向性がある、と文章で述べられています。
  • この点、記事中の説明は判決の流れや実務状況を踏まえた的確な見解です。

(4)結論:本文の真偽

  • 本文は「最高裁が、下半身にカメラを構える行為を卑わいな言動と判断し、2号との差し向け規定にあたらなくても3号で処罰できるとした」という主張を展開しており、さらに「平成20年判決から社会意識が変わり、迷惑防止条例での無断撮影・撮影目的行為がより広く卑わいな言動に含まれる傾向がある」などを述べています。
  • これらは、実際の令和4年12月5日の最高裁決定の内容と論旨に概ね合致し、正確といえます。

4. 残る論点・注意点

  1. 地域差: 迷惑防止条例は都道府県ごとに文言・立法趣旨が微妙に異なるため、本判決が他自治体の条例にも同様に直ちに適用されるかは要注意。とはいえ、最高裁が「卑わいな言動」の解釈を広めにとる方向を示した意義は大きい。
  2. 罪刑法定主義・不明確性ゆえの批判: 本文でも指摘されるように、卑わいな言動の解釈範囲が広く、不明確になりがちという批判がある。ただ現状、最高裁は条例違反の「卑わいな言動」を合憲・有効と扱っており、今後も立法論的課題として議論が続くと思われる。
  3. 今後の捜査運用: 迷惑防止条例違反を適用する警察官の判断は一層広がるかもしれず、現場運用でのばらつき・不公平を懸念する声もある。

結論

  • 本文で主張されている
    1. 「最高裁が下半身にカメラを構える行為を卑わいな言動と明確に認定」
    2. 「5条1項2号の差し向け規定に当たらなくても3号で処罰可能」
    3. 「平成20年判決からの社会意識の変化を踏まえ、撮影未遂段階でも条例違反が広がる」
      といった要点は、令和4年12月5日の最高裁決定の内容と整合し、真実性が高いと判断されます。
  • したがって、「下半身にカメラを構え『卑わいな言動』最高裁が判断 平成20年判決からの『時代の変化』」という記事の結論や指摘は、判決文や実務状況と齟齬がなく正しい内容と言えます。