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薬院法律事務所

刑事弁護

同種余罪と量刑(盗撮について)


2021年08月01日読書メモ

一般論として、同種余罪による量刑加重については、それほど影響がないものとされています。

理由について述べた代表的な文献から説明を引用します。

常習性と量刑〔増田啓祐〕
大阪刑事実務研究会編著『量刑実務大系第2巻 犯情等に関する諸問題』(判例タイムズ社,2011年10月)146頁
【同種余罪も, かつて同様の犯罪行為を行ったという意味において,常習性を推知させる事情ではある。同種前科の場合と同様罪名の同一性, 犯行態様や動機の類似性余罪の数,時期は,常習性の程度を推知させる事情である。
しかし, 同種余罪においては, 同種前科と異なり,処罰により設定されたはずの強い規範を乗り越えたということはできないから, その意味で‘特に同種前科との比較において、同種余罪があるからといって, それほど高い常習性が推知されるわけではないということはできる。また, 同種余罪は, あくまで起訴外の事実であるから, 同様の犯罪行為を繰り返したという意味において行為責任に影響を及ぼすことはないし, 同種前科と違って刑の感銘力を媒介として行為責任を重くすることもない。主として常習性を介して特別予防の観点から量刑上考慮されるにとどまるものと思われる。このように,同種余罪は,量刑に対してそれほど強い影響力を持っているわけではないと解される。】

もっとも、盗撮事件については、各地の条例で「常習として」行った場合に刑罰を加重する規程が設けられていることが多く、

その場合には初犯であっても「常習盗撮」として起訴されて量刑が重くなることがあります。

常習盗撮罪で起訴するかどうかということについては、下記のとおりどの程度データが残されているかが重要です。

警察の捜索・差押でも過去のデータを復元して解析される可能性があります。

植村立郎編『刑事事実認定重要判決50選(上)《第3版》』(立花書房,2020年3月)180頁

田邊三保子「痴漢及び盗撮の常習性○福岡高判平22. 9 . 24高検速報集平22.232」

【余罪の扱いについては,常習痴漢罪と同様慎重な配盧が必要である。ただ,盗撮行為を行う者は,これまで盗撮した被害者の映像や画像データ等を,自己の所持品,特にデジタルカメラ, パソコン, メモリー機器類等の中に保管していることがある。これらは余罪についての客観的証拠となる可能性があり,盗撮行為の常習性をうかがわせる重要な手がかりとなるであろう。
(4) 小括
以上のとおり,常習盗撮罪の常習性認定にあたっては,常習痴漢罪のそれと共通の点も多いが,盗撮という行為の性質上,犯罪が反復累行された場合に,客観的な証拠が残る場合が痴漢と比較して多い点が,特徴といえる。】