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薬院法律事務所

盗撮

中学生時代の盗撮事件が、高校生で発覚した場合に刑事事件になるかという相談


2021年07月23日盗撮

【相談】

Q、私は、高校3年生の男子です。実は中学2年生の時に出来心で彼女が着替えているところを盗撮をしてしまい、その画像を保存していました。そのことが最近相手にバレてしまい、警察に通報すると言われています。私は処罰されるのでしょうか。

A、保護観察処分などの少年法上の保護処分がなされる可能性はありますが、実際にはなされていないようです。

 

【解説】

 

性的姿態等撮影罪や、迷惑行為防止条例(盗撮)の公訴時効は3年間です。そのため、成人の場合は公訴時効を過ぎていれば起訴されない、処罰されないということになります。もっとも、少年事件の場合は公訴時効が過ぎている事案でも、保護観察や少年院送致といった「保護処分」がなされる可能性があります。実質的には送致されることがなく問題にされない傾向にあるようです。とはいえ、問題は刑事事件だけでないので、十分な謝罪や弁償をする必要があるでしょう。

 

※刑事訴訟法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131#Mp-Pa_1-Ch_9

第三百三十七条 左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。
一確定判決を経たとき。
二犯罪後の法令により刑が廃止されたとき。
三大赦があつたとき。
四時効が完成したとき。

 

【参考文献】

 

裁判所職員総合研修所監修『少年法実務講義案(三訂補訂版)』(司法協会,2018年6月)34頁

【3 処罰阻却事由及び訴訟条件
処罰阻却事由とは,刑罰権の発生を妨げる事由,例えば,親族相盗例(刑法244I前段)における近親者としての身分などをいい,その存在は,刑の免除事由にすぎないから,犯罪の成立に影響はない。また,親告罪における告訴や公訴時効の不完成等の訴訟条件は,訴訟を追行し,実体的審理,裁判をするための要件にすぎないから,これまた犯罪の成否とは関係がない。
要するに,処罰阻却事由の存在及び訴訟条件の欠鋏は,いずれも犯罪の成立を妨げるものではないから,これらの事実が存しても犯罪少年として取り扱うことができると解されている。刑の減軽事由も同様である。
ただし,公訴時効完成後に送致された事件につき,審判開始の要件を欠くものとして審判不開始決定をした裁判例があり(福岡家決昭61.5.15月報38-12-11l),刑訴法337条に掲げる免訴事由の存在しないことが審判条件であるとの見解もある。
なお,名誉毀損等のように,被害者の名誉,秘密,感情等を保護するため親告罪とされている事件を処理するに当たっては,親告罪とされた趣旨を没却しないような配慮が必要である。】

 

廣瀬健二編『裁判例コンメンタール少年法』(立花書房,2011年12月)32頁
【福岡家決昭61 . 5 . 15家月38. 12. 111 (公訴時効完成後に送致された運転免許証の不正再交付事件を「公訴時効制度の趣旨、精神等に照らし、本件は審判開始要件を欠くものと解する」と判示して審判不開始とした事例) もある(判旨賛成、寺崎嘉博・百選28事件解説、澤登88)。】

 

平場安治『少年法〔新版〕(法律学全集44-Ⅱ)』(有斐閣,1987年4月)101頁
【親告罪の告訴、公訴時効の不完了などは訴訟条件であって、犯罪の成否とは関係がない。しかし、それらが訴訟条件とされる理由は少年法においても尊重されなければならない。】

 

最高裁判所事務総局編『少年事件実務要覧(上)』(法曹会,1983年11月)380頁
【非行後、刑が廃止されていないこと、大赦がないこと、公訴時効が完成していないこと等が審判条件となるかどうかについても、見解が分かれている(この点に関する学説等については資料集日六五二頁参照)が、実務上は、ほとんど問題とならない。】

 

多分、警察・検察段階ではじかれてしまい家裁に送致されていないと思います。

河村博編著『少年法-その動向と実務-〔第四版〕』(東京法令出版,2023年7月)
64頁
【事件につき、訴訟条件を欠いたり、刑の免除等の事由があることは、当然には家庭裁判所に送致しなくてよい理由とはならないが、審判条件を欠くことが確定的になっているときは、そのような事件を家庭裁判所に送致しても、家庭裁判所としては、調査・審判することはもちろん、受理することもできないわけであるから、検察官において、所定の区分に基づき(例えば、被疑者死亡、裁判権なし、第一次裁判権放棄、告発無効、通告欠如、反則金納付済み、確定判決あり、保護処分済み等)不起訴処分をすべきものと解する。】
80頁
【⑦ 犯罪後の法令による刑の廃止、大赦、時効完成等の事由の存しないこと
これらの事由は、いずれも免訴事由(刑訴法337条)であり、少年の保護という面から考えれば審判権を否定する理由にはならないとする説も有力であるが、これらの事由は、いずれも、過去
の犯罪をなかったものとして扱おうとする制度であり、そのようなものとして本人も、被害者も、また社会一般も納得しているのであるから、これを再び掘り返して審判を行うのは適切とはいい難い場合が多く、かえって少年の情操を傷つけるおそれもある。したがって、これらの事由がある場合には審判条件を欠くものと解すべきではなかろうか。】

盗撮事件弁護要領(性的姿態等撮影罪・迷惑防止条例)

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