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薬院法律事務所

刑事弁護

居眠り運転で事故を起こしてしまった…情状弁護で考えるべきこと(ChatGPT4.5作成)


2025年06月29日刑事弁護

居眠り運転で事故を起こしてしまった…情状弁護で考えるべきこと

居眠り運転が原因で交通事故を起こしてしまった場合、「自分はどうなってしまうのか」「刑務所に行くことになるのか」など、不安で夜も眠れない日々を過ごしていることでしょう。被害者への申し訳なさや事故への後悔で心が押しつぶされそうになる一方で、家族や仕事、自分の将来のことも頭をよぎり、途方に暮れているかもしれません。しかし、事故の加害者となってしまった以上、その責任をしっかり受け止め、適切な対応を取ることが大切です。そして、情状弁護(じょうじょうべんご:裁判で量刑を軽くするための弁護活動)の視点から、刑事処分をできるだけ軽減し、人生を立て直すためにできることもたくさんあります。

本記事では、居眠り運転事故の加害者本人に向けて、刑事上問われる法律や処分の傾向、減刑のためのポイントをやさしく解説します。令和7年6月1日施行の刑法改正(懲役刑・禁錮刑の「拘禁刑」への一本化)にも対応しつつ、示談や謝罪の重要性、再発防止策、早期に弁護士に相談する必要性などを取り上げます。不安な気持ちに寄り添いながら、責任を果たしつつ再出発を支える内容となるよう心掛けました。

居眠り運転に対する法的評価と適用される法律

まず、居眠り運転で事故を起こした場合に適用される可能性のある法律と、その法定刑(定められた刑罰の範囲)を確認しましょう。

過失運転致死傷罪(かしつうんてんちししょうざい):自動車の運転に必要な注意を怠り(過失により)人を死傷させてしまった場合に問われる犯罪です。これは従来「自動車運転過失致死傷罪」とも呼ばれ、現在は「自動車運転処罰法」(正式には「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」)第5条で規定されています。**法定刑は「7年以下の拘禁刑(※)または100万円以下の罰金」**です。過失運転致死傷であっても、無免許運転だった場合には法定刑が10年以下に加重されます。なお「傷害が軽いときは、情状により刑を免除できる」との規定もあります。ここでいう「傷害が軽い」とは被害者の怪我がごく軽微な場合を指し、後述するように実際に不起訴(起訴猶予)になるケースもあります。

※令和7年6月の刑法改正により、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」は廃止され、新たに「拘禁刑」に一本化されました。したがって現在の公判では判決も「○年の拘禁刑」という表現が用いられます(改正前の事件でも令和7年6月以降の判決では拘禁刑表記となります)。拘禁刑は従来よりも柔軟な受刑者の処遇を可能にする制度ですが、量刑の重さそのもの(例えば7年以下など)は改正前後で変わっていません。

危険運転致死傷罪(きけんうんてんちししょうざい):飲酒や薬物の影響、著しいスピード超過など、運転が極めて危険な状態で人を死傷させた場合に問われる犯罪です。居眠り運転そのものを直接規定する条文はありませんが、事故の態様によってはこの危険運転致死傷罪が適用される可能性もあります。たとえば**「極度の眠気を催す睡眠障害」という持病があるにもかかわらず運転し、居眠りによって死亡事故を起こした場合**は、「正常な運転に支障を及ぼすおそれのある病気の影響により正常な運転が困難な状態で運転し人を死亡させた」として危険運転致死罪が成立するおそれがあります。危険運転致死傷罪の法定刑は、被害者が負傷した場合で15年以下、被害者が死亡した場合は1年以上20年以下の有期拘禁刑と非常に重くなっています。ただし危険運転致死傷罪が適用されるのは飲酒・薬物や重度の睡眠障害など **「加害者が重大な危険を認識しつつ運転した」**と評価される特殊な場合に限られます。多くの居眠り運転事故はそこまで至らず、前述の過失運転致死傷罪に問われるのが一般的です。

行政上の違反(道路交通法):居眠り運転そのものを直接罰する道路交通法の条文はありませんが、運転者の状態によっては道路交通法違反として処罰される場合もあります。典型的なのは**「安全運転義務違反」(道路交通法70条)で、居眠り運転は前方不注意による事故としてまずこの違反に該当します。安全運転義務違反の場合、違反点数2点・反則金(普通車で9,000円)となり、反則金を納付すれば刑事罰は科されません。しかし、居眠りに至った経緯によっては「過労運転等禁止違反」(道路交通法66条)と判断されることもあります。道路交通法66条は「過労や病気その他の理由で正常な運転ができないおそれがある状態で運転してはならない」という規定で、違反すると違反点数25点(一発免許取消相当)・3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金**が科されます。例えば長時間の過労や酩酊状態で「居眠りする危険性を予見し得たのに運転した」ような場合には、反則金では済まされずこちらが適用される可能性があります。

以上が居眠り運転事故に関連して適用されうる主な法令です。まとめると、「単なる居眠りによる不注意事故」であれば過失運転致死傷罪(7年以下の拘禁刑/100万円以下の罰金)が基本となり、状況次第で道路交通法の違反も問われます。一方、極端な事情(飲酒・薬物や重度の睡眠障害など)があれば危険運転致死傷罪と判断され、桁違いに重い刑が科されるリスクもあります。自分の事故がどの罪名に当たるかは捜査機関が事故状況を詳しく調べた上で決定しますが、どちらにせよ重大な交通犯罪であることに変わりはありません。次章では、どういった状況で居眠り運転が起きやすいかを見てみましょう。

居眠り運転が起きてしまう典型的なケース

「なぜ居眠り運転なんてしてしまったのか…」と自責の念に駆られているかもしれません。居眠り運転は決して珍しい現象ではなく、以下のような典型的状況で多発しています。

  • 長時間労働や連続運転による極度の疲労:長距離トラックや深夜の配送業務など、勤務時間が長く十分な休憩を取れない過酷な労働環境では、疲労により運転中に眠気が生じ重大事故につながるケースが後を絶ちません。実際、過去の事故例でも、連続乗務の疲れから渋滞中の車列に約80km/hで追突し、2名が死亡(他4名負傷)したケースや、長時間労働で疲労が蓄積した運転者が秋祭りの人混みに突っ込み、1名死亡・多数負傷者を出したケースなどが報告されています。どちらも運転者の強い疲労・眠気が原因で発生した痛ましい事故です。
  • 睡眠不足・体調不良による注意力低下:勤務以外の要因でも、前日の夜更かしや慢性的な睡眠不足は居眠り運転の大きな原因です。厚生労働省の調査では「睡眠時間が5時間未満の運転者は、6時間以上眠った運転者に比べてヒヤリハット(居眠りによるヒヤッとした体験)の頻度が2.3倍に上る」という結果もあります。また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のように自分で自覚していない睡眠障害により慢性的な睡眠不足状態となり、知らず知らずのうちに運転中に強い眠気に襲われるケースもあります。健康状態の悪化や風邪薬・花粉症薬の服用による眠気も注意が必要です。
  • 飲酒後の仮眠で安心してしまうケース:お酒を飲んだ後、「少し車内で仮眠したからもう大丈夫」と思って運転を再開し、結局は眠気に襲われて事故を起こすケースもあります。しかし、短時間の仮眠では体内のアルコールは十分に分解されず, 依然として飲酒運転の危険が残ります。実際、「飲酒後に1時間仮眠してから運転したものの居眠りして事故を起こし、酒気帯び運転で処分を受けた」事例も報道されています(鹿児島県曽於市, 2024年7月) 。飲酒による酩酊状態そのものが眠気を誘発するうえ、酒が残った状態で事故を起こせば厳罰は避けられません。
  • 単調な環境での運転:長時間の高速道路走行など景色の変化が少ない環境では、いわゆる「ハイウェイ催眠現象」により眠気や意識朦朧が生じやすくなります。深夜の閑散とした道路や慣れた通勤経路で気が緩んでしまったときなども危険です。

以上のように、居眠り運転は **「誰にでも起こり得る」事故原因ではありますが、同時に「適切な対策で防ぎ得たはずのもの」**でもあります。特に仕事上の疲労については、「無理なシフトを組んだ会社側にも原因があるのでは…」と思う方もいるかもしれません。しかし運転者本人としては、どんな事情があれ 「眠いならハンドルを握ってはいけない」のが大前提です。結果として事故を起こしてしまった以上、どのような事情であれ法的責任は厳然と問われます。そのうえで、次章では事故後に科される刑事処分の傾向を見ていきましょう。

刑事処分の傾向:事故の態様・被害状況による違い

居眠り運転事故を起こした場合の刑事処分(刑罰)は、事故の結果の重大さや悪質性に応じて大きく異なります。ここでは過去の統計や判例の傾向から、処分の幅を解説します。

① 被害が軽微な事故の場合:幸いにも被害者がかすり傷程度で済んだようなケースでは、刑事事件として立件されても不起訴(起訴猶予)処分となる可能性が高いです。実際、統計上は人身事故全体の8割以上が不起訴処分になっているとのデータもあります。過失運転致死傷罪の規定自体、傷害が軽い場合には情状により刑を免除できると定めており、検察官も社会的に十分な償い(被害者への弁償・謝罪など)がなされ反省も深ければ、あえて起訴して前科を付ける必要はないと判断しうるのです。「不起訴」となれば刑事裁判にはならず、罰金も科されません(いわゆる起訴猶予)。ただし不起訴を勝ち取るには被害者との示談成立や反省の態度などが重要で、これについては後述の示談の項目で詳述します。

② 負傷事故(被害者が怪我)の場合:被害者に骨折や後遺障害などの比較的重い傷害が生じた場合は、公判(正式な刑事裁判)となる可能性が高まります。もっとも、初犯で誠実に対応していれば執行猶予付き判決罰金刑にとどまるケースも多いです。量刑実務の感覚では、過失運転致傷罪で起訴された場合、有罪判決のほとんどで執行猶予が付くのが現状です。実務上、被害者の治療期間が短い事案などでは略式手続(書面審理)による罰金刑で済む例も多く、仮に公判請求され禁錮刑(※拘禁刑)となってもほとんどの場合は執行猶予付きとなっています。被害者にも一定の過失(もらい事故的な要素)があったり、被害者が加害者を許している場合などは罰金刑にとどまることもあります。このように、怪我事故であれば適切な賠償と反省により実刑(刑務所行き)を免れる公算は大いにあります

③ 死亡事故(被害者が亡くなった)の場合:被害者が命を落とす最も重大な結果となってしまった場合、過失運転致死罪として正式起訴されるのが通常です。やはり人命が失われている以上、罰金刑のみで済むケースは少なく、基本的には刑期(拘禁刑)が言い渡されます。量刑も重くなりがちですが、だからといって必ずしも刑務所行き(実刑)になるとは限りません。実は過失運転致死罪で有罪になった場合、約96%は執行猶予付き判決であり、実刑判決はわずか4%程度にとどまるとの統計があります。裁判所も被告人が初犯で深く反省し被害者遺族と和解しているような場合には、たとえ死亡事故でも執行猶予を付けて社会内で更生の機会を与えることが多いのです。実際に、居眠り運転による死亡事故でも、適切な弁護活動により執行猶予判決を勝ち取った例も見られます(※後述の事例紹介参照)。

もっとも、死亡事故で執行猶予を得るには被害者遺族の処罰感情が和らいでいることが重要であり、後述する示談や謝罪が極めてカギとなります。また、事故態様が悪質な場合や加重事由がある場合は事情が異なります。たとえば「無免許運転」「酒気帯び・酒酔い運転」「ひき逃げ(救護義務違反)」といった重大な道路交通法違反を伴うケースでは、裁判所も非常に厳しい姿勢で臨み、執行猶予が付かず実刑となる可能性が極めて高いです。また被害者が複数亡くなった事故など結果が重大な場合も、その重みから実刑や長期刑が見込まれます。居眠り運転そのものも「著しい過失」と評価されやすいため、特に信号無視や高速走行を伴うような悪質な居眠り事故では裁判官の心証も厳しく、実刑が選択される例もあります。

要するに、処分の重さは**「どれだけ重大・悪質な事故だったか」**によって大きく変わります。逆に言えば、事故後の対応次第で「悪質性をできるだけ減殺し、被害の重大性をカバーする」ことが重要です。次章では、そのための情状弁護上のポイントを解説します。

弁護活動で重視される情状要素とは

刑事事件の量刑(刑罰の重さ)を決める際、裁判所は事故の内容だけでなく様々な**情状(酌むべき事情)**を総合的に考慮します。居眠り運転事故の場合、以下のような点が情状弁護で重視され、適切に主張・立証することで処分の軽減につながります。

  • 事故に至った経緯・運転者の状況:まずは「なぜ居眠りに陥ったのか」という経緯です。例えば勤務状況(連日の長時間労働で疲労困憊だった等)や生活背景(睡眠不足に陥る事情があったか等)は重要な情状要素となります。会社から過酷な運行スケジュールを課せられていたような場合には、その事情を示す資料(勤務表や運行記録など)を提出し、事故が決して怠慢や遊興によるものではなくやむを得ない背景もあったことを訴えることになります。もちろん「会社が悪い」と責任転嫁する姿勢は逆効果ですが、客観的な勤務実態は示しておくと裁判官の心証も違ってきます。「過労運転の強要」はそれ自体が事業者の犯罪となり得るほど社会問題化している点でもあり、弁護人としては被告人が置かれていた労働環境を丁寧に説明します。反対に、事故原因について万一被害者側にも過失があった場合(飛び出しがあった等)は、その点も見落とさず主張すべきです(※ただし自身の過失が主要因であるのに被害者の落ち度ばかり強調するのは心証を悪くするので注意が必要です)。
  • 深い反省と再発防止への取り組み:加害者本人がどれだけ真摯に罪を悔いているかも、量刑判断に大きく影響します。具体的には、反省文(謝罪文)の提出や被害者への謝罪の意思表示などが有力なアピール材料です。形式的・紋切り型の文章では意味がなく、事故の経緯や被害者への思い、自分の非をどう受け止めているか、そして二度と繰り返さないための誓いなど、本質的な反省が伝わる内容であることが肝要です。弁護士と相談しながら自分の言葉で丁寧に綴った反省文は、裁判官に被告人の更生可能性を示す有力な資料となります。さらに、再発防止策を具体的に示すことも重要です。例えば、「今後は長距離運転の前には必ず十分な睡眠をとる」「夜間の運転業務からは外れるよう会社と調整した」「必要であれば運転を職業としない道を検討する」といった約束を明らかにします。場合によっては専門医のカウンセリングや安全運転講習を受講し、その修了証明を提出することも有効です。事故当時、仮に睡眠障害など健康上の問題があったなら、速やかに治療を開始したり医師の診断を仰いだりして、今後の安全運転に万全を期す姿勢を示すと良いでしょう。「なぜ居眠りに至ったのか」「今後どう防ぐのか」を自分なりに分析し、具体的な改善策を講じている被告人に対しては、裁判官も「更生可能性が高い」と判断しやすくなります。
  • 家族・職場の監督体制と嘆願書:被告人が社会復帰して更生するうえで、周囲の支援体制が整っているかも考慮されます。家族が監督・支援を約束している場合や、勤務先が再発防止に協力する姿勢を示している場合は、有利な情状です。例えば家族が「二度と無理な運転をさせない」「生活リズムを支える」と宣誓したり、上司が「今後深夜業務には就かせない」と明言している場合など、その旨を弁護士が報告・証明します。また、被告人の人となりや反省状況についての嘆願書を家族・親族、勤務先の上司や同僚などから集めることも有効です。嘆願書には「被告人は普段は真面目であり、今回の件を深く悔いています」「家族一同で更生を支えていきます」などといった内容を盛り込んでもらいます。それにより、「被告人は周囲から信頼され、社会内で更生できる環境がある」と裁判官にアピールできます。嘆願書自体が決定打になるわけではありませんが、執行猶予判決を下す材料の一つとしてプラスに働くことは確かです。

以上のような情状要素を丁寧に主張・立証するのが情状弁護の要となります。弁護士は被告人やその家族と十分に話し合い、提出できる資料(勤怠記録、医師の診断書、講習修了証、反省文、嘆願書など)を収集して裁判所に提出します。また、公判では弁護士が被告人質問を通じて本人の口からこれら情状を語らせ、裁判官に訴えていきます。「事故の重大さ」は消せませんが、「そこに至った背景」や「事故後の誠実な対応」「更生への決意」を具体的に示すことで、裁判官の心証は大きく変わります。前章で述べたように、たとえ死亡事故でも情状次第で執行猶予が得られる可能性がありますし、負傷事故であればなおさらです。次章では、情状弁護の中でも特に 「被害者への謝罪・示談」 というポイントに焦点を当てて解説します。

被害者への示談・謝罪と誠意ある対応の重要性

刑事事件において被害者との示談成立は、最強の情状とも言われます。特に人身事故の場合、被害者やご遺族が加害者を許して処罰を望んでいないと明確に示せれば、裁判所はその意思を大きく尊重します。この章では、被害者への謝罪や示談交渉をどのように行うべきか、そしてそれが量刑にどう影響するかを説明します。

▼ 示談とは何か?
「示談」とは、事件について当事者間で解決(和解)の合意をすることです。交通事故の場合、加害者が被害者に対し損害賠償金を支払い、被害者が加害者を許す(少なくともこれ以上の責任追及をしない)という内容の契約を結ぶのが一般的です。示談が成立すると、被害者は「民事上も解決済みで、加害者を厳しく罰してほしいとは思っていない」という意思を書面(示談書)で表明してくれることになります。この「被害者が処罰を望んでいない」という事実は、先述のとおり裁判官の量刑判断を大きく左右します。具体的には、示談成立によって「社会的に一定の償いがなされている」と評価され、執行猶予付き判決や減刑がより期待できるのです。また、起訴前であれば検察官が不起訴とする材料にもなります。極端な話、死亡事故であっても遺族が処罰を全く望まない場合には不起訴になるケースすらあります(もっとも極めて稀です)。したがって、事故加害者にとって示談成立は目指すべき最重要目標と言っても過言ではありません。実際、「示談が成立した人身事故では刑事処分が大幅に軽減される傾向」が報告されています。

▼ 謝罪と賠償は迅速かつ誠意を持って
示談成立のためには、加害者側の誠意ある対応が不可欠です。事故後はできるだけ早期に被害者(や遺族)に謝罪の気持ちを伝えましょう。直接面会できる状況であれば頭を下げて謝罪し、被害者の治療状況を見舞います。もし直接会えない場合でも、**謝罪文(手紙)**を送るなどして気持ちを伝えるべきです。ポイントは、決して言い訳をしないこと。「寝不足でつい…」などと言い訳すると返って心証を悪くします。ひたすら被害者への謝意と反省、償いの意思を述べることが大切です。

任意保険に未加入だった場合は要注意で、十分な賠償の見込みが立たないと不誠実と受け取られ不利な情状となりえます。弁護士と相談しつつ、少しでも多くの金額を賠償に充てられるよう検討しましょう。

▼ 誠意を伝える具体的な行動
示談交渉の過程では、加害者の誠意が伝わるかどうかが極めて重要です。具体的には以下のような行動が考慮されます。

  • 見舞い・謝罪:被害者が入院中であれば病室に赴き、治療費の心配などを伝えて誠心誠意謝罪します。退院後も容態を気遣う連絡を入れるなど、継続的に被害者を気にかける姿勢を示すことが大切です。
  • 葬儀・法要への参加:被害者がお亡くなりになった場合、可能であれば通夜や葬儀に参列し直接謝罪の機会を設けます。ご遺族が面会を拒む場合でも、香典や弔電を届けるなどできる限りの弔意を示しましょう。裁判では「加害者が通夜・葬儀に出席したか」「遺族に見舞いや謝罪をしたか」といった点も問われることが多く、出席していれば誠意ある対応の一例として評価され得ます。
  • 継続的な弔意・謝罪:死亡事故の場合、初期対応だけでなくその後も節目で誠意を示すと良いでしょう。例えば毎月の命日に花を手向けに行く、命日やお彼岸に墓参りをするといった行動です。ご遺族がそれを受け入れてくれるかは状況次第ですが、少なくとも弁護士を通じて「命日にお花をお供えしたいと申し出ている」などと伝えることはできます。「形だけでは」と思うかもしれませんが、その真摯な姿勢が伝われば遺族の処罰感情が和らぐ一助となる可能性もあります。
  • 被害者参加制度への対応:近年の重大事故では、被害者や遺族が刑事裁判に参加し意見を述べる「被害者参加制度」が利用されることがあります。もし被害者が公判に出席する場合には、休廷中などに直接謝罪の機会を持つことも考えられます。公の場で頭を下げるのは勇気が要りますが、裁判官の前で被害者に謝罪する姿はそのまま情状に反映されます。弁護士とも相談しつつ、できる限りの誠意を示しましょう。

以上のような対応を積み重ねることで、被害者側も「ここまで反省して誠意を尽くしてくれるなら、刑事処罰までは望まない」と思ってくれる可能性があります。実際、被害者感情が穏やかになれば検察官が起訴を見送ったり、裁判で執行猶予が付いたりする確率は格段に上がります。特に**示談書に「加害者を許します」「厳罰は求めません」**といった文言が盛り込まれていれば、裁判官も安心して執行猶予判決を出せるというものです。

もちろん、謝罪や示談は加害者が刑を逃れるための方便ではなく、本心からの行動でなければなりません。形だけ整えても、被害者には見透かされてしまいます。ですが逆に、心からの謝罪と賠償が伝われば、被害者も人間ですから「もう十分償ってくれた」「事故は許されないが、この人を社会から抹殺する必要はない」と考えてくれるかもしれません。示談が成立し被害者の処罰感情が収まれば、刑事処分は大きく緩和されます。居眠り運転事故の加害者にとって、被害者への誠意ある対応がいかに重要か、ご理解いただけたでしょうか。

弁護士選びと相談のタイミング:早めの相談で状況を整理しよう

居眠り運転で事故を起こしてしまったら、できるだけ早く弁護士に相談することを強くおすすめします。その理由は大きく二つあります。第一に、早期に専門家のアドバイスを受けることで、証拠や状況の整理が的確にでき、後々の刑事手続きで有利に働くからです。第二に、被害者対応や捜査機関への対応を誤らないようにし、必要な弁護活動を迅速に開始できるからです。

▼ 事故直後から弁護士に相談すべき理由
事故を起こした直後は動転して冷静な判断が難しいものです。しかし時間が経つほど、事故現場の状況や記憶は薄れていき、証拠も散逸してしまいます。ですから事故の記憶が新しいうちに事実関係を弁護士と整理することが大切です。「居眠りに陥るまで自分がどういう状態だったか」「直前にどんな兆候があったか」「事故現場の状況(信号や道路の様子)はどうだったか」等をヒアリングし、必要に応じて現場の写真やドライブレコーダー映像、車両の損傷具合、勤務記録などを確保します。弁護士が付けば警察や保険会社から資料を取り寄せることもできますし、証拠保全の観点から的確な指示を受けられます。

また、早期に弁護士が動くことで、被害者との示談交渉をスムーズに開始できる利点もあります。被害者側としても、事故直後は怒り心頭であっても、弁護士という第三者を通じた誠実な申し出があれば話し合いに応じてくれる可能性が高まります。「時間を置きすぎると被害者の心情が硬化し、示談が難しくなる」こともあるため、迅速な対応が重要です。

さらに、捜査段階で弁護士が付いていれば、警察・検察への対応について適切な助言が得られます。たとえば取調べでの供述も、事前に弁護士から「こういう点は素直に話し、こういう点は誤解のないよう注意」といったアドバイスを受けておけば、不用意な発言で不利な判断を招くリスクが減ります。居眠り運転事故では、供述の仕方一つで「危険運転致死傷に該当するような著しい無謀性があった」と誤解されかねません。実際、弁護士の弁護活動によって危険運転致死傷罪ではなく過失運転致死傷罪の適用を目指せた例もあります。このように、専門家の戦略的サポートがあるかないかで、適用法条や量刑が左右される可能性すらあるのです。

▼ 弁護士選びのポイント
では、どんな弁護士に依頼すれば良いのでしょうか。まず重要なのは、刑事事件、とりわけ交通事故案件の経験が豊富な弁護士を選ぶことです。交通事故の情状弁護には独特のノウハウがあります。被害者との示談交渉のやり方、保険会社との連携、過去の類似事例の量刑相場の把握、反省文や嘆願書の効果的な活用など、経験値の差が結果に直結します。また、居眠り運転事故は感情面のケアも重要です。不安に寄り添い、親身になってくれる弁護士だと安心して任せられるでしょう。法律事務所のウェブサイトで解決事例を確認したり、初回相談で実際に会ってみて信頼できそうか見極めると良いでしょう。

費用面が心配な場合でも、相談だけなら無料の法律事務所も多くあります。また、物損事故向けの「弁護士特約」は今回のような刑事案件には使えないかもしれませんが、分割払いに応じてくれる事務所もあります。何よりも**「刑務所に入らず社会で更生できるか」**の瀬戸際ですから、ここは必要経費と割り切って、まずは相談してみる価値があります。

▼ 起訴前からの弁護活動が鍵
繰り返しになりますが、起訴される前から弁護士が活動することで得られるメリットは計り知れません。示談交渉はもちろん、検察官に対して不起訴や寛大処分を求める意見書を提出するといった働きかけも可能です。実務上、検察官は加害者弁護士からの情状報告や示談成立の知らせを受けると、「この被疑者はきちんと反省・償いをしているな」と判断し、起訴猶予にすることもあります。起訴猶予(不起訴処分)を目指すには、まさに起訴前の弁護活動が勝負なのです。たとえ起訴に至ってしまっても、その段階までに集めた情状資料や示談結果は公判で大いに役立ちます。公判は短期間で結審することも多いため、起訴されてから慌てて準備しても間に合わない場合があります。ですから、「まだ警察から呼ばれただけだから」と油断せず、できる限り早い段階で弁護士に相談・依頼することを強くおすすめします。


居眠り運転による事故は、加害者にとって一生背負う十字架となります。しかし、その後の対応次第で刑事処分を軽減し、社会復帰の道を切り開くことは十分可能です。本記事で述べたように、法的には過失運転致死傷罪であれば執行猶予となる余地が大いにあり、被害者への真摯な謝罪と賠償、反省と再発防止策の表明が何より重要です。そして、そのプロセスを支えてくれる心強いパートナーが弁護士です。被害者への償いを果たしつつ、自分自身も二度と過ちを繰り返さないと誓って、更生への一歩を踏み出しましょう。辛い経験ではありますが、これを機に生活環境を見直し、安全運転の大切さを胸に刻むことで、必ずや更生し社会に貢献できる日が来るはずです。私たち法律の専門家も、あなたの再出発を全力でサポートします。一人で悩まず、どうか早めにご相談ください。共に乗り越えていきましょう。

(令和7年刑法改正に対応)

参考文献・出典:自動車運転処罰法、第66条・第70条ほか道路交通法各条、過去の裁判例、法務省発表資料、弁護士法人デイライト法律事務所「死亡事故で執行猶予がつく?」、アトム法律事務所「居眠り運転事故の罰則」等。各種データは2025年時点のもの。

交通犯罪弁護要領(救護義務・報告義務違反の例)