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薬院法律事務所

刑事弁護

性加害をする人の心理についての仮説(不同意性交・不同意わいせつ・独身偽装)


2024年01月14日読書メモ

私が、弁護士業務を通じて感じた、性加害(私は「性的なことで、意図的に相手に強い苦痛を与える行為」と定義します)をする人の心理的傾向と、再犯防止のための対策を書いてみます。もちろん、私が乏しい知識と経験を基に考えた仮説に過ぎませんし、網羅的なものでもありません。私が悩みながらいろいろ考えたことが誰かのヒントになるかも、という思いで書いています。

 

まずもっとも強調したいことですが、性加害、特に不同意性交は、非常に強い「苦痛」をもたらします。被害者に深い精神的・肉体的打撃を与えます。性加害が与える打撃の大きさについては、近年ようやく目を向けられるようになったのですが、被害者の人生に大きな影響を与えます。そして、性加害による苦痛は、被害者だけに留まりません。被害者家族にも、加害者家族にも深い苦痛をもたらします。

 

さらに、これは、刑事弁護人がいうことかと思われるでしょうが、刑事裁判という制度も、えげつないと思うことがあります。第三者が傍聴できる公開の法廷で行われるということもそうですし(憲法上やむを得ないのですが)、証人尋問という制度が本当に性加害の被害者の供述の吟味に適切な制度か強く疑問を持っています。性加害の被害者の記憶は変容しやすく、供述も変遷しやすく、反対尋問で弁護人から糾弾されることにより矛盾した発言をしてしまうことは十分考えられます。弁護人からいえば、証人尋問をせざるを得なくなるのは、捜査段階できちんと捜査官が供述を吟味できておらず、裏付け捜査をして被害者や関係者の証言の真実性を担保できていないことが原因だったりするので、弁護人が責められるのは筋違いという場合もありますが…

 

なので、私としては性加害がなくなることを望んでいます。そのためには、加害者が、性加害となる行動を、何故するのか?を突き詰めていくことが大事だと考えています。再犯防止だけではなく、将来の加害者・被害者を出さないためにです。

 

現代日本においては、性加害のうち、性犯罪となるものに対しては一定の刑罰と社会的制裁があります。そして、性犯罪とされない性加害についても、セクシャルハラスメントなど民事上の賠償責任や社会的制裁があります。かつ、性欲の発散を手助けする様々なポルノや風俗産業があります。その状況下で、あえて「性加害となる性行動」を選択する人たちには、やはりそれなりに理由があると思っています。再犯を防止できれば新たな被害発生は防げますし、子育てのヒントになるかもしれない、そう思っています。

 

特に、私は、「衝動的で」、「相手の苦痛が一切自分の苦痛にならず」、「呼吸するように嘘をつく」サイコパスの性加害者の存在が十分に意識されていないと感じていますので、その存在が「常識」となることを願っています。

 

 

1.不同意性交・不同意わいせつ(痴漢含む)事件

不同意性交をする人には、色々なパターンがあります。

暴力や脅迫、騙しうちなど「相手に苦痛を与える手法」で相手の人格を抑圧して性交をする人は、サイコパスで相手の苦痛を感じないので、最も効率的に、リスクがなく性交できる手法と判断して実行しているパターンと、相手の感情を読み取る能力が低く、相手の「拒否」をきちんと受け止められていないパターン、虐待を受けて育ち「暴力」で相手を支配しないと不安で性交できない(あるいは暴力を振るう側に立つことで自己肯定感を取り戻している)パターンなどが考えられます。

このうち、際立って危険なのがサイコパスのパターンです。

サイコパスのパターンは、昔は深夜に路上で襲うという手法が多かったと思いますが、防犯カメラの普及により、マッチングアプリで知り合った相手を狙うといったより犯罪として処罰されにくい手法を選択していると推測しています。サイコパス男性が女性を狙う場合は、「理想的な、優しくて、頼りがいのある男性」に擬態することで近づきます。そして、女性が妊娠した後に豹変し、捨てたり、DVを繰り返して「奴隷化」するといったことが考えられます。サイコパス男性の手口を知るためには、「恋愛工学」で検索すると参考になると思います(なお、「恋愛工学」そのものを否定する趣旨ではありません。道具の使い方の問題です。)。

あるいは、密室で、いきなり性加害をするパターンもあります。この場合、密室での性加害の後に、優しくするというのも良くある手口です。「被害申告」をさせないための手段であり、「あなたのことを好きすぎたのでこんなことをしてしまった」などと相手に思わせる手法の一つです。性犯罪被害者の「性犯罪被害者になりたくない」という心理につけ込む手法で、社会的地位が高く、プライドの高い相手に対しても行われることがあるでしょう。そうすると、被害者は信じたくなって「迎合メール」を送ったりしますので。そして、何度か性交をした後で、捨てます。何度か性交をするのも、「不同意性交」と言わせない手口です。性交中の写真を撮るというのも良くある被害申告を抑圧する手口です。

こうした「人に言えない」性被害を受けた女性は、強い「性嫌悪」を抱えることがあり、それが「性欲(特に男性の性欲)を強く否定する」といった形に転化しているパターンがあると、私は見ています。本当に復讐したい相手に復讐ができないからです。このパターンは「サイコパス」以外の誰にとっても不幸なことです。

ただ、警察もこういった手口はわかっていますので、後の「迎合行動」があってもそれで最初の「不同意性交等」が成立しないとは見ません。そして、犯人の逮捕と捜索差押によりデータを回収できることもありますし、実名報道により余罪が炙り出されて他の被害者が救われることもあります。なので、このページをご覧になって心当たりのある方は、是非今からでも警察に相談して欲しいと思っています。自分の事件は立件できなくても、最近の事件について、過去にも同種行為をしていた、ということが、最近の事件を処罰する決め手になることもありえます。

 

弁護士業務を通じてみる、サイコパスについての雑感

サイコパスは、魅力的に振舞えることが多いので、一見そんなことをするように見えなかったと言われたり、再犯防止のための「治療者」に対しても彼ら・彼女らが望むような姿を見せて振舞うことができるので、治療者に「好感」を持たれることすらありえます(実際に彼らのしたことはすさまじい犯行でも、彼らは「模範的」と好まれ、「盗撮犯」などの方が嫌悪されることもありえます)。

 

彼ら(彼女ら)は、情動的共感性が乏しいので、「倫理」や「罪悪感」アプローチは意味がありません。ひとつ文献を引用します。

日本弁護士連合会『令和3年度研修版現代法律実務の諸問題』(第一法規,2022年8月)461頁~

一般社団法人もふもふネット代表理事、大阪大学大学院人間科学研究科名誉教授 藤岡淳子

コーディネーター弁護士 竹中らく

「性犯罪の理解と対応-弁護士に知っておいて欲しいこと-」

471頁~

【3やんちゃ系
さらに「やんちゃ系」というものもあります。若い頃に、比較的軽い集団非行の経験があるなど、性犯罪者としては少し違う肌触りです。強制わいせつか強制性交が一般的で、外向的なタイプで、一緒になって行動する男性の仲間がいます。地域の「ちょい悪仲間」や学校の「ナンパ仲間」、会社の同僚などです。内省的な感じではなく、あまり考えることは得意ではありませんが、現実的な課題に取り組んでいくことができ、性犯罪者の中では、他の非行ができるぐらいの方が、わりと改善しやすいのではないかと思っています。性行動と社会生活について、向社会的な価値観・態度に修正していくことが必要です。
もふもふネットに来て、治療を受けようという人たちは、社会の中でやっていこうという姿勢はあるので、その方が自分にとってよく、得だと感じれば、来て学んでいくことができます。これまで述べたような非社会系の人とは、少しテイストが異なっています。グループの中にいても何か少し違う、わかり合えない感じはありますが、ある意味で別の男性のあり方のモデルにもなる人たちです。
①ありそうな事例-強制わいせつのEさん
例えば、強制わいせつの事例のEさんは、四○代で自営業をしていて、妻子もあります。中学高校時代に、多少不良交友があって、バイクを乗り回していましたが、警察沙汰になることまではありませんでした。ただし、父親と母親の仲が悪く、高校卒業後、家を飛び出して、住み込みで板前になっています。若くして、高校時代の女友達と結婚をし、自分は別に好きではなかったが、「結婚してくれっていわれたから、結婚した」などと言いながら、結婚直後からずっと浮気をしていました。
しばらくは板前の仕事を続けながら、子育てもしていましたが、父母の仲が悪かった実家が倒産の危機となり、頼まれて戻って家業を継ぎました。ところが、妻や父母との折り合いが悪くなり、自分ばかり損しているような気になって、気晴らしのため強制わいせつのアダルトサイトをみるようになりました。そして、アダルトサイトそのままに、夜、女性を後ろから襲って逮捕され、服役しました。アダルトサイトで、眼鏡のところにカメラをつけて、それで女の人の後をずっとつけていって、後ろから襲うという、非常にリアルな犯罪の動画があるらしく、それをみて、同じことをやったという人は、他にも何人かいると聞いたことがあります。
取調べに対しては、事件時の記憶がない、覚えていないと主張していました。刑務所を出てからもふもふネットに来るようになり、妻と同居し、子供も育てていて、いまは自営業をきちんとやって安定しています。非行系の人の場合は、他の性犯罪者に比べると、世間でいうところの男らしさのような感じはあります。
②ありそうな事例-強制性交のFさん
強制性交の事例のFさんは二○代の会社員で、高校時代にサッカーのクラブ活動を非常に熱心にやっていました。団体のスポーツクラブでは、ナンパをたくさんしたというような女性関係の自慢話を日常的にしていることも多くみられ、メンバーの中にはそのような影響を受けてしまう人が多くいるようです。Fさんもそうした一人で、会社に入ってしばらくして、飲み会で多量飲酒して、トイレに行ったときに、女子トイレから出てきた見知らぬ女の人に強制性交して、その場で逮捕されています。
家庭内には少し男尊女卑的な価値観があるのではないかと思います。Fさんはナンパもたくさんしていて、すぐにセックスができていたので、「セックスはそんな大変なものだとは思っていなかった」と、わりと悪びれず言います。しかし、いろいろな人に助言を求めて、どのようにしたら向社会的に生きていけるのかという価値観やふるまい方を学んでいって、いまは、新しい会社で営業職をやりながら、生活も安定しています。Fさんのような人たちも比較的、治療的な介入がうまくいくようです。】

 

この想定事例ですが、浮気をしていたとか、集団非行だとか、取調べで否認するといった、そういう行動から、私はサイコパスではないかと考えています。「衝動的」で、「罪悪感」を持たず、「嘘つき」なのです。「アダルトサイトを見たからだ」とか、「スポーツクラブのメンバーの影響」だとか、そういう「他人のせい」「社会のせい」にすることも重要なポイントです。「強制わいせつのアダルトサイトを見る」ことと「実際に女性を襲う」こと、「ナンパ」と「女子トイレから出てきた見知らぬ女の人に強制性交する」ことは全く違う行動です。後者は、いずれも「目の前の相手に強い苦痛を与える」という決定的な違いがあります。犯罪が行われる情景を想像してみれば、他者に対する共感性を持っていれば、およそ出来る犯罪ではないです。彼らが不同意性交をする本当の理由は「相手の苦痛を自分の苦痛として感じる心がないから(情動的共感性を欠くから)」です。ただ、「学習」により、「犯罪者として拘束されない」生き方を学ぶことは可能でしょう。あくまで自分のためですが。

なお、サイコパスの人は、より効率的に、リスクなく性交をするために「フェミニスト」を装ったり、社会的弱者とされる女性を「支援」する立場にたとうとすることもあるでしょう。自己肯定感が落ちている人は、特に操作しやすいからです。このタイプの性加害をなくしていくためには、防犯カメラの整備や、独身偽装を刑事処罰の対象にする等、「性加害が発生しにくい環境の整備」と、「多くの人が心理操作の手口を学んで耐性を持つこと」が大事だと思っています。シンプルな罪と罰、誤魔化しがきかない体制を作ることで、「嘘」や「恐怖」で支配して性交する手法がこの社会では難しくなっている、不特定多数との「性交」はリスクが高くなっていると考えてもらうしかないと考えています。

また、現状では不同意性交とされにくいですが、職場で上司が部下を不倫相手にするパターンもあります。セクハラ規制が厳しくなってきたことで減りつつあると思いますが、代わりにフリーランスの人に性行為に応じさせるパターンもあります。もちろん、学校などの閉鎖的な職場においては、立場を利用したセクシャルハラスメントはまだまだ多いようです。こういう場合は、表面上「同意」があるので問題が深刻になります。実際には「強いられた同意」なのですが、「同意」を表明したということで被害者の心を縛ります。この「強いられた同意」についてはDV問題に関する知見が蓄積されてきていますので、参考になるでしょう。心の底では嫌と思っていても「yes」を言わせて、その嘘を相手に信じこませることができる人たちがいます。場合によっては、相手の方が「積極的に望んだ」という形すらとらされていることがあります。モラハラによる心理操作は、男性だけではなく女性も行えますし、現に行われていることも多いです。それが「加害」であることはもっと周知されていくべきと考えています。

さらに、私は、いわゆる「性的グルーミング」もサイコパスが常習的に行う性加害の一種とみています。生殖可能な年齢以後で、操りやすい若年者(児童を含む)を狙って「恋愛」と思い込ませるのです。ホストクラブの手口は性的グルーミングの一類型ですし、既婚者上司が新入社員を不倫相手にするのもそうでしょう。時々ニュースになる、既婚者の、教育熱心な教師が、裏で複数の児童に性加害を繰り返していたというのもこのパターンだと推測しています。サイコパスが、趣味である他人の心理操作を、性欲処理を兼ねてしているのでしょう。「子ども」は心理操作がしやすく、かつ、性行為によるトラウマを負いやすいので、「他人の人生」をコントロールしたいというサイコパスにとっては恰好の獲物なのだと考えています。

名越康文『あなたの近くの危険な人物![図解]サイコパスの話』(図書印刷,2017年9月)

※ロバート・D・ヘア『診断名サイコパス 身近にひそむ異常人格者達』(早川書房,2000年8月)179-181頁

【性的暴力と暴力亭主
レイプは、サイコパスが暴力を冷酷かつ利己的な道具として使う恰好の例だ。むろんすべてのレイプ犯がサイコパスではなく、なかには情緒障害の著しい者もいる。ほかのレイプ犯は、女性を従属的な性として退ける文化および社会の産物だ。こうした男性たちの犯罪は、社会から見れば不快だし、被害者にとってはおそろしい心的外傷をのこすことになるけれども、サイコパスに引き起こされるものにくらべればまだ理解できる。
おそらく、連続および累犯的レイプ犯の半分はサイコパスだ。彼らの所業は、さまざまな要因の交錯の結果と見ることができる。性衝動や妄想のはけ口、力や支配に対する欲望、被害者を快楽ないし満足の対象物としてしか見ない感覚など。こうした交錯は、マスコミから〃紙袋レイプ犯″というあだ名をつけられた男ジョン・アウトンの場合を見ればよくわかる(子供や女性をレイプするとき、かならず紙袋をかぶっていた)。アゥトンは、司法精神科医によって、サイコパス、すなわち良心に欠け、人を操作することがうまく、自己中心的で、不実で、愛情を受け入れる能力に欠けている人格であると同時に、「被害者に心理的プレッシャーをかけることによって性的興奮を得る」性的サディストであると診断された。
また、最近では家庭内暴力に対して一般の認識が広がり、それを容認しない風潮がおおいに高まってきた。その結果、アメリカではそのような粗暴な者を家族が思い切って告訴したり、法廷命令による治療を受けさせたりしている。配偶者に暴力をふるう原因や力学は複雑で、経済的、社会的、心理的要因が山ほどあるが、妻にしつこく暴力をくり返す者のなかにはサィコパスが大勢いる、という証拠がいくつかある。
最近私たちは、配偶者に暴力をふるう者を治療するプログラムに自主的に、または法廷命令で参加している男性たちに、《精神病質チェックリスト》のテストを受けさせた。その結果、そのなかの二十五パーセントの男性はサイコパスであることがわかった。刑務所内の受刑者のなかのサィコパスの比率と、ほぼ同じだ。治療プログラムを受けていない精神病質的暴力亭主の比率がどれくらいかはわからないが、すくなくとも同じくらい高いのではないだろうか。

継続的に妻に暴力を働く大勢の男性は、サイコパスである可能性が高いという指摘がなされても、治療プログラムには重大な問題がのこっている.サィコパスは、行動を改めることを執勧に拒むからだ。暴力的な夫を治療するプログラムを運営していく財源は限られているし、多くの治療プログラムには長い順番待ちのリストがある。サィコパスは、ほかの男性にくらべて自分の行動を変えようとするより、裁判所にうまく取り入ろうとして、この種のプログラムに参加する傾向が強い。そしてほかの者よりも、そこで自己改善をはかろうとする意欲がない。
さらに言えば、サイコパスはまちがいなくそのようなプログラムを混乱させる。しかし、おそらくそのようなセラピーにサイコパスを送りこんだ結果いちばん心配されることは、暴力亭主の妻がこれでもう安全だと勘ちがいすることだ。「夫はもうなおったのよ・いまはすっかり心を入れ替えているはずだわ」と妻は考え、虐待に終止符を打つチャンスを逸してしまう。】

 

※参考

①の書籍は過激な表現を避けていますので、中学生でも読めます。「自衛」のために購入することをお勧めします。

①図解 サイコパスの話 (書籍)

サイコパスとは、犯罪を平然と犯す、平気でウソをつき人を欺き騙すなど「反社会的な人格」を持つ人を指す。感情に乏しく、「共感性」がない「冷徹」な人間で、人を支配したがり、目的のためには手段を選ばないーーそんな人間があなたのまわりにもきっといる!本書は心理学の面に焦点をあて、社会にまぎれ、職場、学校、サークルなどあらゆるコミュニティに、100人に1人の割合で存在すると言われるサイコパスを、よりわかりやすく図解する1冊。

https://www.nihonbungeisha.co.jp/book/b333158.html

②【文庫】良心をもたない人たち
マーサ・スタウト 著 /木村博江 訳
嘘をつく、空涙を流す、追いつめられると逆ギレする、自分にしか関心がない。二十五人に一人という割合で存在するという「良心のない人間」の本質を明かした本。

https://www.soshisha.com/book_search/detail/1_1929.html

③【文庫】良心をもたない人たちへの対処法
マーサ・スタウト 著 /秋山勝 訳
良心をもたない人(ソシオパス)の巧妙な攻撃から自分と自分の家族を守るには。臨床専門家が豊富な事例をもとに、自己防衛のための具体的な対処法を示す必読書。

https://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2673.html

※参考

記事紹介【事例から学ぶ:#027 精神病質の不正実行者を見分ける】

草柳和之「効果的なDV被害者支援のために : 被害者ファーストを探求する」家庭の法と裁判46号(2023年10月号)

「強いられた同意」という考え方について

いわゆる「性的同意」と「不同意わいせつ・性交」の関係について

 

2.集団不同意性交・集団不同意わいせつ事件

 

大学のサークルなどで、複数名が、少数の人に対して不同意性交・不同意わいせつを行う、というパターンです。首謀者はサイコパスで、周囲の人も、被害者も操っているということが考えられます(もちろん全員サイコパスというパターンもあります)。そのため、従属的な立場の人は「参加しないといけないと思った」という心理で参加していることもありえますが、「言い訳だ」と批判されるので訊き出さないと黙っていることもあります。「先輩がしているから自分もしないといけない」という同調圧力を利用した手法です。

このタイプの性加害を防止するためには、性的同意について「拒否できない環境」を作ることの問題性を周知することや、同調圧力を破ることを学生に講義すること(「ノー」ということをエンパワーメントする)、「リーダー」として振舞う人、あるいは実質的にグループ全体を掌握している人がサイコパスでないかという疑いを指導者が持つこと(外面をとりつくろうことが上手ですし、指導者側も操ろうとします)が必要です。また、サイコパスではない場合は、その集団の「伝統」に従って、他の集団では不道徳ないし犯罪とされる「行為」をすることで外部に逃げられないようにするといったパターンもあります。「悪意」はなく、むしろ「やらなければ失礼」とすら思っているパターンもありえます。昭和の飲み会でのセクハラ、裸踊りをさせることなどはこれでしょう。集団に帰属させる儀式です。これは、トップが率先して廃止しないといけないものです(その意味では、実は「加害者」とされる人も「被害者」であることがあります)。

 

3.独身偽装(独身詐欺)

 

現時点ではまだ性犯罪とされていませんが、いずれ性犯罪とされることになると見ています。私は加害者側の代理人をしたことはないのですが…既婚男性が、マッチングアプリで独身と偽装して不倫をしているパターンは、男性がサイコパスのことが多いだろうと考えています。交際中に既婚者と発覚しても、現行の日本の法制度の下では性犯罪とされず、貞操侵害の慰謝料は低いし、女性側が逆に妻から損害賠償請求を受けるリスクがあり(サイコパスは妻の心理のコントロールも巧みです)、かつ、被害者に不倫したという「不名誉」を負いたくないという心理があるので、表面化しにくいのです。つまり、既婚者であることを逆に利用して、性行為でトラブルになるリスクをコントロールできる。これは深刻な問題なのですが、不貞行為の相手方に共同不法行為責任を負わせることを望む人が多い現状では、当面変わらないのだろうと思います。

独身偽装をする男性は、男尊女卑でこういう行為をしていると思われるかもしれませんが(そう指摘されたらそう認めるかもしれません。そうであれば「社会のせい」であり「反省」で変わったとアピールできるので)、実際は、サイコパスの「唯我独尊」だと思っています。独身偽装をするサイコパス男性を見分けるのは難しいですが…「目の前の人がどういう経歴で、今ここにいるのか」を考えて、不自然な点がないか冷静に見極めることが大事だと思います。彼らは、魅力的な外見をしていることが多く、自信をなくして弱っている女性に対して「優しい男性」、「理解ある男性」、「頼りになる男性」などに擬態して肉体関係に持ち込み、そのこと自体で相手を縛ります。相手が好むであろう、女性向けのニュースや、女性の好むフィクション作品などの研究もして、「理想の男性」を演じます…不倫している時点でその人間性は明らかなのに、自分で自分を騙すようにあやつります。

 

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