【解決事例】盗撮事件で、被害者に名前を伝えずに示談したいという相談(刑事弁護)
2018年07月19日刑事弁護
※解決事例は実際の取扱事例をモデルにしていますが、特定を避けるため、複数の事例を組み合わせる等した上で、大幅に内容を変更しています。
【相談】
Q、私は、駅で盗撮をしてしまい、周囲の人に取り押さえられました。前科がつくと困るので示談をして不起訴にしてもらいたいのですが、他の弁護士さんに相談したら、示談書を作成するにあたって私の名前を知らせるというのです。私の名前で検索をすると勤務している会社のホームページがでます。SNSなどで拡散されたら会社にいられなくなるのですが、なんとか名前を出さずに示談ができないでしょうか。
A、確かに、民事上の和解書を作る場合は、名前を入れないと難しいということはあります。しかし、不起訴にするために示談書を交わすという場合、あえて名前を伏せたまま交渉をして、示談することができることもあります。私の場合、そのやり方で何件も不起訴にしてきました。
【解説】
私が取扱う典型的なケースをモデルにしています。モデルケースでは、刑事事件として受任し、早速示談交渉をして、被害者と面会しました。示談書案は作成していましたが、依頼者の名前の上に付箋をはる形で示談書を取り交わしました。そして、示談にあたっては、被害者の名前も依頼者には伝えません。正式な裁判にならない限り、知る必要もないことです。
盗撮事件を起こした場合、名前が拡散されるのではという恐怖を皆持たれています。示談書を作成する際に工夫することでこのように名前を知られずに済むことがあります。被害者側の場合、犯罪捜査規範10条の3に基づいて、加害者の住所氏名を知ることができる場合があります。しかし、今の時代、加害者の住所氏名を知られるとSNSなどで拡散される可能性があり、プライバシー侵害の危険性があります。そこで、弁護人として、あらかじめ窓口を弁護人にすることや、住所氏名を教えないように申し入れます。これも弁護人をつける意義の一つです。犯罪捜査規範で言うところの(住所氏名の開示が)「被害者の救済に資する」をなくします。事例によっては、警察に対して、(住所氏名の開示が)「関係者の名誉その他の権利を不当に侵害する」ことも指摘します。盗撮事件や万引き事件だと、少なくとも早期であれば、氏名も開示されていないという印象です。
警察庁 犯罪捜査規範(被害者対策関係部分)
【犯罪捜査規範の改正(被害者対策関係部分)の概要
犯罪捜査規範とは、昭和32年に制定された国家公安委員会規則のことであり、警察官が捜査活動の際に守るべき心構えや捜査方法、手続き等を定めています。
そもそも警察は、個人の権利と自由を保護することを目的に設置された機関であり、犯罪による権利侵害等があった場合にその被害者又は親族(以下「被害者等」。)を救済することは、自らの設置目的を達成するために当然行うべき事柄です。
また、近年、被害者等の受ける様々な被害の深刻な実態について、国民の関心が高まるとともに、警察に期待される役割も大きなものになっています。
そこで、警察の設置目的を達成するため、犯罪の捜査に関し行う被害者対策について、その一層の推進を図るべく、犯罪捜査規範上に被害者対策に関する以下のような規定を設けました。】
【参考文献】
刑事法令研究会編『新版第2訂 逐条解説犯罪捜査規範』(東京法令出版、2002年3月)21頁
「(被害者等に対する通知)
第十条の三
捜査を行うに当たっては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過その他被害者等の救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。
ただし、捜査その他の警察の事務若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、この限りでない。
〔平二国公委規八・追加〕一
被害者等の「救済」に資すると認められる事項その他の事件の内容 には、
○犯罪被害給付制度、損害賠償謂求制度等の概要
○警察やカウンセリング機関等の各種相談窓口
○捜査により明らかになった被疑者の氏名及び住居その他事件の内容等が含まれる。
このように、事件の内容を被害者等に通知することにより、被害者等は捜査が適正に遂行されていること等を知り その精神的打撃の軽減に資することとなる。」
兵庫県弁護士会「実践 犯罪被害者支援と刑事弁護」出版委員会 編著『実践 犯罪被害者支援と刑事弁護』(民事法研究会、2015年7月)21頁
「警察段階では「被害者連絡制度」を利用して、捜査状況や検挙状況を確認することができます(平成18年12月7日付け警察庁丙刑企発第53号ほか)。捜査が進捗していない場合には、本制度で照会することが督促的な意味も持ちます。
また、民事賠償の請求先を特定するため、犯罪捜査規範10条の3を根拠に加害者情報(氏名・連絡先等)を知らせてもらうことも可能です。同規定に基づく照会は、捜査終了後は断られることがありますので、捜査中に行っておく必要があります。」
http://www.minjiho.com/shopdetail/000000000801/
※2025/1/4 chatGPT o1 proで検証してもらいました。
以下の回答は、「提示された文章(【解決事例】盗撮(万引き)事件で、被害者に名前を伝えずに示談したいという相談)」が、**現行の法令・実務の観点から大筋で正確かどうか(真偽)**を検討するものであり、最終的な法的アドバイスを目的とするものではありません。あくまで「記載内容に著しい誤りや虚偽がないか」を評価するものです。
1. 文章の概要
- 事例: 駅での盗撮(あるいは万引き)をしてしまった相談者が、前科を回避するため(不起訴を狙うため)示談を望んでいる。ただし「被害者に自分の名前が伝わるのが怖い」という要望がある。
- 回答・解説:
- 通常は「示談書(和解書)」を作成する際に加害者・被害者双方の氏名を明示するのが一般的だが、なかには「加害者の実名を記載しない(伏せたまま)示談」が成立する場合もある。
- 事例として、実務上「弁護人が窓口となり、加害者の名前を被害者に知らせずに示談し、その後、不起訴になった」ケースが複数あるという紹介。
- また、犯罪捜査規範10条の3を根拠に被害者は加害者の氏名・住所を警察から教えてもらう可能性があるが、弁護人が「不要な個人情報の開示は控えて欲しい」と申し入れるなどして、被害者が加害者の住所氏名を知らなくても示談に至ることがあり得る、としている。
2. 主な論点と真偽の検討
(1) 一般的に「示談書」は当事者の氏名を明らかにする必要があるか
- **民事上の示談書(和解書)**では、法的効力を確実にするために、通常は当事者の氏名・住所などを記載します。実際の裁判などで有効性を争われた際に「誰との契約か分からない」状態だと無効主張される恐れがあるためです。
- ただし、「示談書」の性質や、今後裁判にならない見込み(正式に争われることがない見込み)が高い場合は、当事者同士が納得すれば、氏名を伏せる形の書面を作成すること自体は理論的には不可能ではないのも事実です。
- 実務上はレアケースですが、弁護人だけが窓口となり、当事者本人の氏名を開示せずに合意(示談)をまとめるという場面はゼロではありません(被害者が「相手の名前はいらない。とにかく損害や精神的苦痛の補償がなされればよい」と考える場合など)。
評価
- 文章が示している「加害者の名前を伏せたまま示談書を取り交わす」方法は、一般的ではないものの、絶対に不可能というわけではない、という実務の一部を紹介している点で、完全な虚偽とはいえません。
(2) 犯罪捜査規範10条の3との関係
- 犯罪捜査規範10条の3
捜査を行うに当たっては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過その他被害者等の救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。
ただし、捜査その他の警察の事務若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれがある場合は、この限りでない。 - ここには「被疑者の氏名及び住居その他事件の内容を通知できる」という旨が含まれています。ただし、「不当な侵害」や「支障を及ぼす」おそれがあると警察が判断すれば、必ずしも開示しないこともあり得る。
- 文章が述べる通り、被害者が「民事で損害賠償請求するために加害者情報が必要」と強く求めた場合、警察が開示を認めるパターンもある一方、弁護人が慎重に交渉し「今回の場合は不要」と判断されれば、氏名開示が行われない可能性もゼロではない。
評価
- 「必ず被害者が加害者の氏名を教えてもらえるわけではない」「警察が開示しない選択をする場合もある」という指摘は、犯罪捜査規範上も可能性としては正しいです。
- したがって、文章の「捜査機関への働きかけ次第で、加害者氏名を被害者に伝えないまま示談にすることができるかもしれない」という論旨は、一定の合理性があります。
(3) 実務上の可否
- 示談の成立要件は、あくまで「当事者(被害者側と加害者側)が合意に至ること」。弁護人が代理人となり、被害者が「相手の名前を知らなくても示談金さえ受け取れれば良い」と納得すれば成立はし得ます。
- ただし、被害者が相手の氏名を知りたいと思っていたり、金額に不満を持ったりすれば、当然に難航します。
- さらに、検察官が示談の有効性(示談の合意が当事者同士のものか)をどう評価するか、あるいは「被害者が後から(示談を)蒸し返す可能性はないか」など懸念は残ります。
- 文章のように「実名を貼り付箋で隠して示談書を取り交わした」「その後、不起訴になった」事例が実際に存在しても、不起訴の理由が「氏名非開示だから」とは限りません。早期に弁護士が介入し被害者へ謝罪・賠償した事実が大きかった可能性も考えられます。
評価
- 文章は「こういうやり方で何件も不起訴になった」と述べていますが、そこには**「示談金額や謝罪の誠実さ、被害者の意向、捜査機関の判断」など多様な要因**が絡んでいるはずです。
- しかし、「完全に虚偽だ」とまではいえず、一部の実務では可能性があるというレアなケース紹介としてはあり得る話です。
(4) 結論づけ方(真偽評価)
- **「加害者の名前を一切知らされずに示談が成立する」**のは相当にイレギュラーですが、絶対に不可能というわけではありません。
- **「その方法で何件も不起訴にしてきた」**という表現はやや誇張的に聞こえる部分はあるものの、弁護士の実務経験として(被害者があえて加害者名を求めず示談が成立→結果的に不起訴)という事例も皆無ではないと思われます。
- 文章中に書かれている犯罪捜査規範10条の3の引用や、警察の被害者連絡制度において加害者情報を求める・求めない可能性、という指摘については事実に即しており、誤りはありません。
3. 総合評価
- 示談書作成時に加害者名を記載しないという方法自体は、法的には「当事者同士が合意すれば理論上は成立し得る」話。
- 実務としてはレアケースだが、文章がいう「示談の目的が、形式的な民事手続の備え(裁判用)ではなく、不起訴に向けた被害者との和解と宥恕(ゆうじょ)の獲得」であれば、被害者が相手の実名にこだわらない限り、成立し得る可能性は否定できない。
- ただし、全ての事案で警察や被害者が加害者氏名を非開示のまま示談を受け入れるわけではない。文中のように「名前を伏せたまま示談→不起訴」が何度も実現するのは、かなり限定的な状況が揃ったケースといえる。
- 捜査機関による被疑者情報の開示は、犯罪捜査規範10条の3の運用次第であり、必ず開示される・必ず拒絶できるといった単純な問題ではない。ここは文章でも「申し入れを行う」程度の書き方に留まっており、明確な誤解を生む表現ではありません。
結論
- 文章の記載に、明らかな虚偽や大きな誤りは見当たりません。
- 「弁護人を通じて氏名を隠したまま示談できるケースもあり得る」ことは、理屈として否定できず、また犯罪捜査規範の内容も正しく引用されています。
- ただし、現実には被害者が加害者の身元を強く知りたがる場合が多く、また捜査機関が情報を開示する可能性もあるため、常に名前非開示の示談が成功するとは限らない点は留意が必要です。
総合して、**「珍しい形だが、完全に誤りというわけではない」**というのが妥当な評価です。文章で述べられている手法も理論上可能であり、一部の現場で実践されている可能性もあるため、虚偽情報とは断定できません。
4. まとめ
- 提示文章は、「盗撮・万引きなどの被疑者が示談を望む際に、加害者氏名を被害者に通知しない形で合意する方法があり得る」という主張をしており、その前提として犯罪捜査規範10条の3などを引用しています。
- これらの内容は法的に完全なデマというほどではなく、一部の事案では実践例がある可能性も否定できません。
- むしろ「氏名を隠す示談が絶対に認められる・必ず成功する」というニュアンスで誤解される恐れはありますが、文章自体に「常に可能だ」とは書かれておらず、「こういう事例がある」「工夫できる余地がある」との紹介にとどまっています。
- よって、**文章は大筋で“真”寄り(完全な虚偽ではない)**と評価できます。