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薬院法律事務所

刑事弁護

警察実務・昇任研究会「警察官のためのQ&A講座 第41回 飲酒運転」警察公論2023年12月号(飲酒運転の故意)


2024年01月29日読書メモ

警察公論2023年12月号に、飲酒運転に関する警察実務が簡単にまとめられていたので紹介いたします。

 

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3885

 

特に、よくある弁解「一晩寝たので酒は抜けていた。」といったものに対する警察の態度が興味深かったので引用します。基本的な知識として、飲酒運転の故意は「酒気を帯びて運転することのみであり、処罰するに足りる態様に達しているかどうかはもっぱら客観的に判断されるべきもの」です(幕田英雄「酒酔い運転・酒気帯び運転」藤永幸治編集代表『シリーズ捜査実務全書14 交通犯罪(4訂版)』(東京法令出版,2008年4月)253頁)。この点は表記の記事でも同じですが、次の通り解説されています。

 

【「一晩寝たから、もう大丈夫だと思った。」という弁解もよく聞かれるところであるが、これも、眠ることによって酒が完全に抜けるわけではない以上、基本的には「ちょっと休んだから、もう酒は抜けたと思っていた。」という弁解と同じように、酒気帯びの認識を否定することにはならない。
もっとも、いつかはアルコールが完全に分解されて体内の保有量がゼロになることから、飲酒後、相当長時間が経っている場合には、自己の体内のアルコール保有量がゼロになったと信じるに足りる場合もあり得る。このような場合には、飲酒終了後の経過時間と、検知されたアルコール量とを勘案し、故意が阻却されるかどうかを判断すべきであるものと解されている。】

 

この論点については、城祐一郎『Q&A実例交通事件捜査における現場の疑問〔第2版〕』(立花書房,2017年10月)1頁以下に詳しいですが、特に「一晩寝た」場合は故意が阻却され刑罰を受けないこともありえますので(行政処分は免れないです)、悩ましい事件は弁護士の面談相談を受けるべきでしょう。

 

事件番号
 昭和52(あ)834
事件名
 道路交通法違反、業務上過失傷害
裁判年月日
 昭和52年9月19日
法廷名
 最高裁判所第一小法廷
裁判種別
 決定
結果
 棄却
判例集等巻・号・頁
 刑集 第31巻5号1003頁
原審裁判所名
 東京高等裁判所
原審事件番号
 
原審裁判年月日
 昭和52年3月16日
判示事項
 道路交通法一一九条一項七号の二に規定する酒気帯び運転の罪の故意
裁判要旨
 道路交通法一一九条一項七号の二に規定する酒気帯び運転の罪の故意が成立するためには、行為者において、アルコールを自己の身体に保有しながら車両等の運転をすることの認識があれば足り、同法施行令四四条の三所定のアルコール保有量の数値まで認識している必要はない。
参照法条
 刑法38条1項,道路交通法65条1項,道路交通法119条1項7号の2,道路交通法施行令44条の3

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51832

【なお、道路交通法一一九条一項七号の二に規定する酒気帯び運転の罪の故意が成立するためには、行為者において、アルコールを自己の身体に保有しながら車両等の運転をすることの認識があれば足り、同法施行令四四条の三所定のアルコール保有量の数値まで認識している必要はないとした原判断は、相当である。】

 

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