階段の下からミニスカートの女性の下着を覗いたところ、警察に通報されたという相談(痴漢、刑事弁護)
2024年10月17日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は東京都に住む30代の男性です。ミニスカートの女子高生のグループを見かけて目で追っていたのですが、彼女たちが歩道橋に向かうのを見て、パンツが見えないかと思い後ろからついていきました。盗撮はしていません。すると、階段の途中で女子高生が振り返って「覗き」と騒がれたので否定したのですが、警察を呼ばれました。警察からは迷惑防止条例違反だといわれていますが、納得できません。
A、「卑わいな言動」として処罰される可能性があります。ただ、付近で同様の行為を繰り返していたといったことでなければ、犯罪が成立しないといえることもあるでしょう。弁護人をつけて意見書の提出を検討すべき案件だと思います。
【解説】
一般的には、「卑わいな言動」とは、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいうとされています(最高裁判例)。そして、この範囲は幅広いので、一般人目線から見て「卑わいな言動」といわれるものであれば、犯罪として立件されることがあります。女性のスカートをしたから覗きこむ事例については、昔から「卑わいな言動」、すなわち痴漢として取り上げられているのですが、盗撮ではないから大丈夫と思っている人もいると思います。
警視庁 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(略称「迷惑防止条例」)の一部改正について
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつ
て、次に掲げるものをしてはならない。
(3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をす
ること。
【参考文献】
警視庁生活安全特別捜査隊『公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の実務と解説(略称「迷惑防止条例」)』(警視庁,1995年3月)71頁
【(問)バスを待っている婦女の後から近づいて、スカートの下からのぞいた男がいるが、迷惑防止条例違反となるか
(答)卑わい行為違反(第五条第一項)となる】
SPE629号(警察公論2023年1月号付録)
35頁
【地域警察22 事件事故処理に関する記述であるが誤りはどれか。】
【(2)ミニスカートの女性が歩道橋の階段を上り始めた際、後方にいた男が足早に階段下に近寄り、スカート内をひそかにのぞき見した事案について、軽犯罪法1条23号の「窃視の罪」として送致することとした。】
74頁
【高所にいる女性のスカート内を下から見上げる行為は、人が通常衣服を着けないで肉体を露出している可能性のある場所をひそかにのぞき見る行為に当たらないことは明らかであり、軽犯罪法1条23号違反は成立しない。枝文の行為は、公共の場所・乗物において、人に対して著しく差恥又は不安を覚えさせるような行為と認められれば、迷惑防止条例の卑わい行為として問擬することとなる。】
※2025/1/7 chatGPT o1 pro に検証してもらいました。
以下の文章
「ミニスカートの女性の下着を階段下から覗いてしまった場合、盗撮していなくても迷惑防止条例違反(卑わいな言動)として処罰されうる」
といった趣旨については、結論として大筋で正しいといえます。以下、詳しく検討します。
1. 「覗いただけ」でも迷惑防止条例違反になりうるか
(1)迷惑防止条例の「卑わいな言動」とは
- 東京の迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)第5条1項3号は、「人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」を禁止しています。
- 「卑わいな言動」とは、社会通念上、性的にみだらで下品な動作や言語を広くカバーし、痴漢行為もここに含まれます。
(2)下着を“覗く行為”が該当する例
- 引用文献(警視庁生活安全特別捜査隊『迷惑防止条例の実務と解説』)でも、階段下などで女性のスカート内を見上げる行為が「卑わい行為」(痴漢)として取り扱われる旨が挙げられています。
- つまり、盗撮カメラの使用などがなくても、女性の下半身をのぞき込む行為そのものが、相手に強い羞恥心・不安感を与える卑わいな言動にあたり得るということです。
(3)実務上は「公共の場所」であり「人に対して」行われたことが要件
- 東京都条例の場合、「公共の場所や公共の乗物」といった不特定又は多数の者が利用する場所であることが前提です。歩道橋の階段は一般人が自由に往来する場所であり、「公共の場所」に該当します。
- さらに、当該行為が特定の被害者(ミニスカートの女性)に向けられた卑わいな行為と評価されれば、迷惑防止条例による処罰が成立しうることになります。
2. 軽犯罪法の「窃視罪」との違い
(1)「窃視罪」:軽犯罪法1条23号
- 軽犯罪法1条23号では、「人が通常衣服を着けないでいるような場所(浴場、更衣室、便所等)をひそかにのぞき見る行為」を“窃視の罪”として処罰します。
- しかし、階段や歩道橋は「通常衣服を着けないでいる場所」ではないため、窃視罪には該当しません。
(2)実務上は「迷惑防止条例」違反として処理
- 先に引用された警察公論付録(SPE629号)でも、階段下から女性のスカートをのぞき見る行為は「軽犯罪法1条23号の窃視罪は不成立」だが、「迷惑防止条例の卑わい行為として処罰対象になる」と明確にされています。
3. 「必ず犯罪が成立するか」には事案ごとの評価がある
(1)「卑わいな言動」は幅広いが…
- 迷惑防止条例の条文上、「人に著しい羞恥を抱かせ、人に不安を与えるような行為」があれば処罰対象になりうるため、下着覗きをして相手が明確に抵抗・不快感を示し、警察が通報されたケースでは立件されるリスクが非常に高いです。
(2)現場判断次第で不起訴や微罪処分の可能性も
- 軽微な初犯で、被害者との示談・謝罪が成立しているなどの事情があれば、捜査機関や検察が微罪処分、不起訴処分を検討する場合もあります。
- ただし、「卑わいな言動」の事実構造自体(=スカート内を覗き見したのは間違いない、被害女性が強く拒否し恐怖を感じた等)がはっきりしていると、条例違反として捜査が進む可能性は十分考えられます。
4. 総合評価:文章の真偽
文中で述べられている要旨は
- 「盗撮をしていなくても、階段下からスカート内をのぞき込む行為は迷惑防止条例の卑わいな言動として処罰され得る」
- 「軽犯罪法の“窃視罪”には当たらないが、痴漢行為として条例違反となるリスクがある」
- 「ただし、実際に立件されるかや処罰の重さは繰り返し・悪質性・被害者の心情など個別事情による」
これらの点について、判例・条例解説や警察公論の資料とも合致しており、文章の内容は概ね正確です。すなわち、
- 「下着覗き込み=卑わいな言動」という認定がなされるケース
- 「盗撮しなければ安全」という誤解は成り立たない
- 被害者が警察を呼んだ場合、条例違反として処罰(逮捕・書類送検)の可能性がある
という主張はいずれも事実に即したものであり、本件文章の真偽は「真」と評価できます。
5. 補足:弁護活動の要点
- 早期弁護士相談
- 被害者が強く処罰を求めるケースが多い痴漢類型では、早期に示談・謝罪の意向を示すことで、不起訴や起訴猶予を獲得しやすくなる場合があります。
- 「卑わいな言動」か否かの争い
- 動作の意図や態様、被害者からの認識などが曖昧な事案では、弁護人が事実関係を精査し、「単なる偶然の立ち位置だった」などを主張できる余地もあるかもしれません。
- ただし、明らかに覗き込みの意思・行為があった場合、条例違反の成立を否定するのは難しいと考えられます。
結論
- 結論: 「階段の下からミニスカートの女性の下着を覗く行為」は、盗撮を伴わなくても迷惑防止条例違反(卑わいな言動)として処罰されうる、という本文の趣旨は正しい。
- 理由:
- 軽犯罪法1条23号(窃視罪)は「人が衣服をつけないでいる場所を覗き見る」場合に限定されるため、階段・歩道橋では該当しない。
- 一方、東京都迷惑防止条例では「公共の場所・乗物における卑わいな言動」が処罰対象となっており、スカート内を覗き込む行為は被害者に強い羞恥や不安を与える行為として処罰される余地が十分ある。
よって、本文の指摘は条例解釈や警察実務に合致しており、本文の記述は真実性が高いといえます。