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薬院法律事務所

刑事弁護

「他人の後ろ姿を盗撮して交番に連れて行かれたけど、データを消して、厳重注意されただけで帰された」という相談


2022年08月08日読書メモ

良くある相談ですので、私の見解を書きます。

但し地域によって異なる取扱いがあることも想定されますので、あくまで参考意見としてご覧ください。

まず、着衣の上からの盗撮については、一定の場合は迷惑行為防止条例違反になります。

 

着衣の上からの無断撮影も盗撮か?

もっとも、これにあたらない場合でも、望ましい行為とはいえません。肖像権侵害の問題も生じます。

そこで、警察官としては、警察法に基づき指導・警告を行うことになります。

標題の相談については、上記の取扱いがなされたものと思われます。

地域実務研究会編『地域警察官のための初期捜査活動』(立花書房,2005年8月)124頁

【ウ相手方に対する指導・警告又は説得
相談時点では刑罰法令に触れないが,将来,相談者等に危害が生じるおそれがあると認められる場合には,相談者等の意向を踏まえ,相手方に対する指導・警告又は説得を行う。この場合,原則として,相談者等の要請がある場合に,警察法に規定されている「犯罪の予防」という目的を達成するために指導・警告又は説得活動(相談者等の同意を得て住居内に立ち入ることを含む。) を実施すること。】

※状況に急迫性があれば、警職法5条、6条に従い立ち入り等の措置が行われることもあります。

この相談記録は警察に残されますが、いわゆる「前歴」や「前科」になるものではないです。

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/3.html

【また、寄せられた相談に対しては、相談内容に応じて関係する部署が連携して対応し、指導、助言、相手方への警告、検挙等、相談者の不安等を解消するために必要な措置を講じています。】

 

通常、盗撮事件(迷惑行為防止条例違反)として立件する場合はスマートフォン等を押収します。そして、スマートフォンの画面を表示させ、写真撮影したり解析に回します。押収した場合は解析にかけ、抹消された映像の復元をするのが一般的です。それがされていないということは、立件されていない可能性が高いと思います。

警察公論2018年12月号193頁

【(1)現場での差押え等

盗撮の被疑者は,身柄確保後に証拠物件であるスマートフォン等に残っている画像を消去したり. スマートフォン等の機器本体を破壊したりする等の証拠隠滅行為に出ることがあるため. 証拠物件のスマートフォン等を.犯行現場において早急に押収しなければならない。

(2)画像の証拠化

押収したスマートフォンは、それ自体犯行を疎明する証拠となるから、「証拠品見分結果報告書」等を作成するとともに.被疑(害)者に犯行状況等を説明させ、証拠化する。】