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薬院法律事務所

刑事弁護

『家庭の法と裁判』14号 「特集 現代型非行の処遇-特殊詐欺を素材として」


2018年07月20日読書メモ

『家庭の法と裁判』14号 読書メモ。今回はむしろ刑事弁護人向けの特集です。とりわけ、少年事件で特殊詐欺の付添人をしている人は必読です。

「特集 現代型非行の処遇-特殊詐欺を素材として」

平成30年2月17日の判事・判事補7名による座談会です。
少年事件における、身柄事件の数割を特殊詐欺の案件(体感では2割~5割)が占めるようになったということで、その対応について話し合っています。

詐欺事件については、少年院送致が33.2%(一般事件は8.4% )と格段に高い数字だそうです。重大事件ではあるものの、非行性が進んでいない普通の大学生が「割のいいバイトがあるよ」程度で関与して、お年寄りをだますといった具体的なところまでは分かっていないというケースが少なくないとのことで処遇の選択が悩ましいそうです。

一般に、刑事事件では被害額が100万円を超えると実刑が見えてきますが、特殊詐欺では1000万円を超えるものもあり、なお厳しい問題があります。基本は犯罪の全体像を見てそこから従属性とかで引いていくので、裁判官は基本的には悪質な事案と捉えているそうです。とはいえ、少年の関与は受け子が圧倒的に多く、末端で良く事情を知らないので犯罪の悪質性を体感しにくい、という問題点が度々述べられています。

考慮要素としては、
①関与期間
②どの程度詐欺であることの認識があったのか
が重要なようです。

金額をどの程度重視するかという点については裁判官によって温度差があり、少年事件は要保護性が基本であり、金額の大きさは偶然によるもので重視すべきでないという裁判官と、かといって金額が大きい場合はやはり在宅処遇は躊躇することがある、などという裁判官もいます。悩ましい点のようです。

また、身分証明書のコピーなどを取られていて、詐欺と分かって辞めようとすると追い込みをかけるぞ、と脅されているパターンもあるとか。最近は成人ではなく少年を受け子としてターゲットにする流れがあるとのことでした。

そのような観点から、少年院送致の原決定を取り消した抗告審決定が3件引用されています。犯罪そのものの悪質さに目を奪われず、要保護性を十分考慮すべきということでしょう。

https://www.kajo.co.jp/magazine/index.php?action=magazineshow&magazine_no=6