【解決事例】盗撮の余罪が多数ある事件で、不起訴にできないかという相談
2024年08月15日刑事弁護
※解決事例は実際の取扱事例をモデルにしていますが、特定を避けるため、複数の事例を組み合わせる等した上で、大幅に内容を変更しています。
【相談】
Q、私はショッピングセンターで盗撮をしたところ、後日警察に家宅捜索に入られました。前科はないのですが、これまでに撮影した映像が大量に押収しています。前科がつくと海外出張ができなくなるリスクがあり困るのですが、不起訴にできないでしょうか。
A、一般には不起訴にすることが困難な類型ですが、示談が成立した上で、被害者が赦し、本人が真剣に更生に取り組むことで不起訴となる可能性はあります。
【解説】
私が以前取り扱った事例をモデルにしています。私にご依頼された時点で、事件から数ヶ月が経過していました。被害者の方は、この間とてもご不安な思いをされていることは容易に想像できました。犯人は特定されたというのに、犯人から何一つ話はなされない。不気味だったと思います。そこで、まずは検察官に直接面会し、事情を話して、示談交渉の申し入れをしました。検察官としては、立件された事件のみを示談したからといって許されるものではない、必ず起訴するという姿勢でした。後述の記事のとおり、被害者不詳でも起訴は可能ですので、立件された事件以外を起訴することも可能です(当時は迷惑行為防止条例違反でしたが、現在であれば性的姿態等撮影罪になります)。なので、検察官の話はその通りなのですが、少なくとも発覚した事件についての被害弁償はすべきということで、示談交渉の申し入れをしました。また、並行して本人の更生のための活動、精神科医への通院や、ワークブックへの取り組み、自助グループへの参加を促しました。示談交渉は予想通り大変難航しましたが、最終的に、被害者は処罰を求めないということで、示談が成立しました。検察官としては、それでも起訴したいという意向でしたが、被害者に処罰を求めないという意思を明確に表明して頂いたおかげで、不起訴となりました。
非常に困難な事件でした。不起訴になったときに、検察官から「先生がご尽力されたからということで」と皮肉っぽい感じで言われたことが良く記憶に残っています。この事件では、被害者対応、検察官対応、そして本人の更生、いずれも高いハードルがあり、最高でも罰金刑は免れないだろうと考えていましたが、最終的には不起訴という結果になりました。被害者対応は、被害者のお気持ちが第一です。今回は、示談交渉が遅れたことで被害者にご不安を与えるという二次被害が出ています。ですが、本人もご家族も努力されて、誠心誠意お話させて頂いたことが、示談につながったと思います。検察官対応も、直接面会をしてお話をしたり、本人の努力をきちんと示せたことが、不起訴につながったと思っています。
※性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000067
(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
※法務省 性犯罪関係の法改正等 Q&A 令和5年7月
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html