コロナウイルスによる売上減少に対し、家賃の減額請求ができるか?
2020年04月14日賃貸借事件(一般民事)
通常の場合、売上が下がったからといって直ちに家賃の減額が認められるわけではありません。しかし、今の状況では認められる可能性は十分あります。
家賃に苦しんでいるテナントは、とりあえず借地借家法32条1項に基づき賃料減額請求はしておいた方がいいです。減額請求をしておかないと、過去に遡っての減額はできません。
書式はネット上に転がっているので割愛しますが、要するに賃貸借契約を特定した上で、減額(具体的な金額が良い)を申し入れるだけです。
澤野順彦編『不動産法論点大系』(民事法研究会,2018年4月)558頁
「賃料増減請求訴訟の今日的課題一継続賃料の鑑定評価上留意すべき事項」
澤野順彦
弁護士・不動産鑑定士
564頁
【借地借家法上の賃料増減請求は、賃貸借の目的物である土地または建物(およびその敷地)について、借地については、土地に対する租税その他の公課の増減、土地価格の高低、その他の経済事情の変動により、または近傍類似の土地の賃料と比較して、また、建物賃貸借については、土地・建物に対する租税その他の公課の増減、土地・建物価格の高低、その他の経済事情の変動、または近傍同種の建物の賃料と比較して、現行賃料が不相当となった場合には、契約の条件にかかわらず、相手方に対し、賃料の増減を請求できるというものである(借地借家11条1項、32条1項)。そして、この賃料増減請求権を定める規定は、判例上も学説上も強行規定と解されている。
そして、賃料増減請求権行使の要件は、借地借家法11条1項および32条1項に例示されているが、この中には、賃借する土地または建物を使用することにより生ずる収益の増減については何らふれられていない。これは、賃料は、賃貸借の目的物である土地または建物(およびその敷地)の経済的価値そのものから発生する果実であり、借地上の建物あるいは賃借建物の収益利用による収益に依存するものではないからである。土地の賃貸人は、借地人が借地上建物を他に賃貸していかほどの収益をあげても何ら口を差し挟むことはできないし、また、建物賃借人が賃借建物における営業でいかほどの収益をあげても、もしくはその営業で損失を生じても、建物賃貸人には建物賃貸借上何らの権利も発生しないし、また、その損失のリスクを負う義務もないからである。この理は、極めて自明のことであるが、訴訟や鑑定評価の実務では、借地上建物の賃料収益が減少したり、賃貸建物による営業収益が低下した場合に、賃料減額請求を肯定する傾向に陥ることが少なくないが、誤りであろう。もっとも、これらの賃借物利用による収益の低下が、その他の経済事情の変動要因に起因することが立証できる場合には、相応の賃料減額が認められる。】
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※借地借家法
(借賃増減請求権)
第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。