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薬院法律事務所

刑事弁護

サッカー部所属の高校生の息子が盗撮をしたのでどうすれば良いかという相談(盗撮、少年事件)


2025年01月31日刑事弁護

私は以前このような記事を作成しました。

この記事の妥当性も含めて、chatGPT o1 proに弁護要領について作成してもらいましたので、参考にされてください。

サッカー部所属の高校生の息子が盗撮をしたが、家庭裁判所で何を訊かれるのかという相談(盗撮、少年事件)

下着盗撮事件弁護要領(性的姿態等撮影罪・迷惑防止条例)

以下の解説は1万字以上の分量となっております。少年事件としての対応、および学校側の懲戒処分(退学など)をできる限り回避するための対応について、できるだけ詳細に検討します。


はじめに

ご相談内容を整理すると、以下のとおりです。

  • 息子さん:福岡県の公立高校2年生、サッカー部所属。
  • 非行内容:通学途中に女子高生のスカート内を盗撮し、周囲に発覚して現行で取り押さえられた。
  • 現状:弁護士をつけて被害者側とは示談が成立しているが、家庭裁判所から呼び出し(少年審判の手続)があり心配している。
  • 学校処分:学校側にも事件が知られ、今後サッカー部追放や退学等の厳しい処分を検討される可能性がある。
  • 本人・保護者の意向:「息子の将来」を守りたい。家庭裁判所で何を聞かれ、どう対応すべきか、また学校側の退学処分を避けたい。

本相談では、少年事件として家庭裁判所における審判の流れや論点、また高校生という立場であるがゆえに学校側が想定する懲戒処分をなるべく軽減または回避するための対策を、**刑事弁護人(少年事件での付添人)**として詳しく説明いたします。

なお、以下の内容は日本の法制度(特に少年法や性的姿態等撮影罪など)を前提にした一般的な解説です。実際に事件を担当する際は、個別の事実関係や地域の実務運用、学校側の規定等が大きく影響するため、必ず事件を担当する弁護士と綿密にご相談ください。


第1章 少年事件としての対応

1-1 少年法の基本的な仕組み

1-1-1 少年事件は「保護主義」

わが国の少年事件(20歳未満の少年が起こした犯罪・触法)は、成人の刑事事件と異なり、少年法に基づく**「保護主義」**が貫かれています。すなわち、少年が非行に及んだ原因を分析し、再犯を防ぐためにはどのような環境調整や教育的働きかけが必要かを重視し、処分(保護処分や不処分など)を決定していきます。単に処罰するというよりも、少年を更生させる道を探り、必要があれば家庭環境の調整や更生プログラム、施設送致などの措置を取るのです。

1-1-2 少年審判の特徴

事件が捜査機関から家庭裁判所に送られると、家庭裁判所調査官が少年や保護者、学校関係者などから事情聴取し、非行事実や環境面を調査します。その後、審判期日(家裁の法廷のような場)で、裁判官が①非行事実があるかどうか、②要保護性があるかどうかを見極め、最終的に処分を決定します。
少年審判は公開の法廷ではなく、原則非公開・非公開記録とされ、少年のプライバシーや将来を配慮する制度設計になっています。

1-1-3 処分の種類

少年事件では、大まかに次の処分が考えられます。

  1. 不処分:家庭裁判所として「保護の必要がない」と判断した場合。
  2. 保護処分:保護観察所の監督を受ける「保護観察」、自宅生活を継続しつつ指導を受ける「在宅のままの保護観察」、少年院送致など。
  3. 検察官送致(逆送):犯行が重大、または16歳以上の重大犯罪など、成人同様に刑事裁判を受けるパターン。今回の盗撮(性的姿態等撮影罪・条例違反レベル)では、通常はここまで発展しないと考えられます。
  4. 都道府県児童相談所送致:児童自立支援施設や児童養護施設等の措置が必要な場合。

盗撮(カメラによる下着盗撮)というと、性非行として扱われる場合が多く、保護処分の可能性が一定程度考えられますが、初犯で反省が十分な場合は、不処分や保護観察処分で済む可能性もあります。


1-2 盗撮事件に対する少年審判の実務的な視点

1-2-1 非行事実の認定

少年審判でも、まず**「何があったのか」=非行事実の認定が行われます。成人の刑事事件でいえば有罪・無罪の判断に相当する部分ですが、少年審判ではより柔軟に事実認定がなされます。今回のケースでは、既に「周囲に取り押さえられた」「弁護士が被害者と示談している」という事実から、盗撮行為があったこと自体に争いはないでしょう。したがって、「事実を否認する」状況ではなく、「認めた上でどのように反省しているか」**が焦点になります。

1-2-2 要保護性の判断

家庭裁判所調査官や裁判官は、非行に至った要因を分析し、再非行防止のための対応が必要かどうかを判断します。具体的には:

  • 家庭環境:保護者との関係、育成状況、経済状況など。
  • 学校環境:友人関係、部活動、学習態度など。
  • 本人の性格・行動パターン:今回なぜ盗撮という行動に及んだのか。その内面の葛藤やストレス要因は何か。
  • 再犯リスク:今後同様の行為を繰り返すおそれがあるか。性非行としての治療・カウンセリングの必要性があるか。

この要保護性が高いと判断されれば、保護観察や少年院送致など、家庭裁判所が強制力ある処分を選択する可能性が高まります。

1-2-3 性的姿態等撮影罪・条例違反との関係

令和5年7月13日施行の「性的な姿態等を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下「新法」)では、衣服の中の下着をひそかに撮影する行為を処罰対象としています。福岡県にも迷惑行為防止条例がありますが、少年が盗撮を行った場合、新法または条例違反として警察が検挙、家庭裁判所送致となることがあります。

少年事件の場合は、「何罪として立件されるか」よりも、「その非行(行為)の態様や悪質性」が問題となるので、法律上の罪名自体が審判に大きく影響するわけではありませんが、最近の法改正によって社会的非難の度合いが強まっている点は否めません。「単なるイタズラ」ではなく、性暴力的側面を有する行為として厳しく見られる傾向があります。


1-3 家庭裁判所でどのようなことを聞かれるか

1-3-1 一般的な質問事項

家庭裁判所の審判や調査官面接では、以下のような質問を受けることが一般的です。

  1. 非行事実に対する認識・反省
    • 「どうしてそのようなことをしたのか」
    • 「なぜ女性の下着を盗撮しようと思ったのか」
    • 「そのときどんな気持ちだったか」
    • 「もし今後同じ衝動に駆られたらどうするか」
  2. 動機・背景
    • 「日頃の学校生活や家庭生活に不満やストレスはあったか」
    • 「性的関心・欲求をどのようにコントロールしているか」
    • 「友人関係で何か問題はなかったか」
  3. 今後の生活態度・再発防止策
    • 「二度と同じことを繰り返さないために、どうしたらよいか」
    • 「保護者や先生との関わり、環境をどのように整えるか」
    • 「カウンセリングを受ける、部活動を続ける等、具体的な再犯防止プラン」

いずれにせよ、家庭裁判所は**「少年がどこまで自己分析できており、再犯防止に真剣に取り組む意思があるか」**を見極めたいのです。

1-3-2 ありのまま回答という弁護士の助言の意味

ご相談では、すでに依頼した弁護士から「ありのまま回答すれば良い」と言われているが、ご家族としては不安だということです。

  • 「ありのまま回答」というのは、ウソやごまかしをしないことが大前提です。家庭裁判所は少年の「本心」を探ろうとしますし、弁護士や保護者、学校が口裏を合わせてしまうと、かえって不信感を抱かれる危険があるからです。
  • 少年事件では、素直に事実を認めたうえで、「どうしてそうしてしまったか」という自己分析を丁寧に言語化する必要があります。
  • 少年が「どうしてそんなことをしてしまったのか、本当によく分かりません」と言うと、家庭裁判所は「再犯リスクがある」と判断しかねないので、原因や経緯を本人なりに考えて、率直に答えることが重要です。

つまり、この「ありのまま回答」とは**「反省していない」や「曖昧な自己分析」に陥るのではなく、事実を素直に認めて、嘘をつかず、自分の気持ちをきちんと述べる」という意味と理解すべきでしょう。どうしても漠然とした不安がある場合は、セカンドオピニオンとして他の弁護士に相談するのも一つの手段です。ただし、最終的には少年本人がしっかりと理解して話せるか**が鍵となります。


1-4 付添人弁護士としての具体的サポート

1-4-1 シミュレーション面談

本来、付添人弁護士は少年と一緒に、**「家庭裁判所でどのようなことが聞かれるか」**を事前にシミュレーションします。

  • 「どうして盗撮をしようと思ったか」
  • 「その時、相手に与えた被害についてどう感じているか」
  • 「カウンセリングや親との話し合いは進んでいるか」

このような想定問答を行うことで、少年自身が自分の言葉で答えられるように支援します。もし少年が動機や背景をうまく説明できない場合には、「部活でのプレッシャー」「性的好奇心」「スマートフォンの簡単な操作でできるという安易さ」など、現実的な要素を整理していきます。
さらに、家庭裁判所が最も知りたいことは「今後また同じことを繰り返さないために、どう変わるか」ですから、再犯防止プランの内容(「部活のあと疲れていても衝動に負けない工夫」「SNSやアダルトサイトを夜遅くまで見ない」「保護者や担任に悩みを共有」等)を少年と話し合いながらまとめます。

1-4-2 被害者との示談状況

すでに示談をしているとのことですが、家庭裁判所は被害者感情や被害者の処罰意思なども一定程度考慮します。示談が成立し、被害者が**「少年の反省を受け入れ、寛大な処分を望む」**という内容であれば、処分の軽減要素になりやすいです。
他方、示談金のみ用意して、謝罪の言葉が足りないという場合、家庭裁判所が「本当に反省しているのか?」と疑念を抱く可能性があります。示談書の内容や謝罪文などをしっかり確認し、家裁に提出できる資料があれば提出することを検討します。

1-4-3 心理的・医療的アプローチの検討

盗撮行為には、性的欲求を満たす目的のほか、「スリルを味わいたい」「ストレス発散」といった心理が働いている場合もあります。場合によっては、専門カウンセリングや医療機関(思春期外来、児童精神科)の受診が必要になることもあり得ます。
家裁調査官が「少年には性非行の傾向がある」「自分一人ではコントロールが難しそう」と見なせば、医療機関での治療やカウンセリングを条件として保護観察処分となることもあります。そこで、付添人としては、事前に医療機関の意見やカウンセリングの計画書などを整えて、「必要な治療・指導は既に開始している」と家裁に説明することで、早期の立ち直りをアピールします。


第2章 学校(公立高校)での懲戒処分を回避・軽減するための対応

2-1 高校生の盗撮と学校処分の流れ

2-1-1 学校への事件報告

高校生が警察沙汰(少年事件)となると、多くの場合で学校へ連絡が入ります。特に「盗撮」という性非行の場合、学校側も事態を重く見て懲戒処分を検討する可能性が高いです。
公立高校の場合、**高校設置者(都道府県教育委員会)**が定めた懲戒規則や各学校の校則・学則に基づいて、校長が最終決定権者となり、必要に応じて教育委員会と協議して決定します。

2-1-2 懲戒処分の種類

学校の懲戒としては、下記のようなものがあります。

  1. 訓戒・戒告・反省文:軽微な処分。口頭や文書による指導。
  2. 停学(出席停止):一定期間、登校を禁止される。欠席扱いとはならず「停学日数」として扱われる場合が多い。
  3. 退学:最も重い懲戒処分。自主退学を促されるケースもある。

本件のように性非行かつ刑事事件化している事案では、停学から退学まで幅広い可能性がありますが、示談が成立しており、本人がしっかり反省している場合は退学まで至らないケースも少なくありません。

2-1-3 サッカー部への処分

部活動にも学校独自の規律があります。性的な不祥事の場合、「謹慎」「部活動停止」「除名」などの部内処分も考えられます。特に公立高校の運動部では、不祥事の対応指針を教育委員会が示している地域もあるため、大会出場停止部全体の練習禁止などが発生し得る点に注意が必要です。


2-2 学校との交渉ポイント

2-2-1 学校面談での態度・再発防止策の提示

学校側は「なぜこんな事件を起こしたのか」「今後どう再発防止を図るのか」を重視します。以下の点をしっかり伝えることが重要です。

  1. 事実を認め、深く反省していること
    • 「大きな迷惑や不安を被害者にかけてしまい、申し訳ない」
    • 「学校の名誉や部活動にも悪影響を与え、反省している」
  2. 再発防止策
    • 「スマートフォンの使用ルールを親子で定める」
    • 「必要に応じてカウンセリングを受ける」
    • 「教員や保護者が連携して監督する体制を整える」
  3. 今後の部活動や学校生活の仕方
    • 「部活動を続けたいが、学校の指導方針には従う」
    • 「休学や停学を課された場合でも、その後きちんと復帰したい」

学校側としては「このまま在籍を認めても、また不祥事を起こすリスクがないか」が心配なので、保護者が積極的に対応策を示して協力する姿勢を見せると、退学回避の可能性が高まります。

2-2-2 学校長・担任・生徒指導担当との話し合い

重大な事案の場合、担任教師や生徒指導部だけでなく、学校長(校長)や学年主任も対応に関与します。保護者としては、校長や教育委員会に対して嘆願書を提出することもよくあります。嘆願書には、以下のような要素が盛り込まれるでしょう。

  • 事件の経緯と本人・保護者の謝罪
  • 今後の監督方針(家庭での指導体制の強化)
  • 被害者との示談の状況
  • 少年事件として家庭裁判所で解決に向けたプロセスが進んでいること
  • 本人が将来、大学進学や就職を希望しており、退学は人生に大きな影響を及ぼす

学校長が教育委員会に報告するときに、こうした文書を参考材料として添付してもらえるよう働きかけることで、退学を回避あるいは停学処分で済むという道が開ける可能性があります。

2-2-3 部活動の処遇

サッカー部ということで、チームメイトや顧問教師も事件を知れば動揺が広がります。部活動方針によっては「大会に出場停止」「連帯責任で一定期間公式戦出場不可」などがあるかもしれません。
ただし、少年が部活動を通じて更生する意欲を示す場合、学校にとっても部活動が非行防止・健全育成の手段になり得るという考え方があります。部活動そのものを安易に奪うより、「監督のもとで厳しく指導し、再発防止を図る」という方針をとるケースも珍しくありません。
したがって、本人の真摯な反省と再発防止策を示したうえで、顧問の先生や校長と協議し、部活動継続の可否を含めて配慮を求めることが重要です。


第3章 学校と家庭裁判所への対応を一貫させる

3-1 二重の手続きに混乱しない

少年事件では、家庭裁判所の手続学校内の懲戒手続が並行して進行する場合が多いです。そこで、次の点に注意が必要です。

  1. 学校に対して説明する内容家裁での説明とが矛盾しないようにする。
  2. 「反省の姿勢」や「再発防止策」の内容は基本的に同じであるべき。
  3. 家裁での方針を学校にも伝える(保護観察所の指導に従う等)。

万が一、家庭裁判所では「(本人は)強い性的衝動があり、専門治療が必要」と判断されたのに、学校では「そんなことを言われていない」と説明すると、学校側が不信を抱くかもしれません。弁護士(付添人)が、家庭裁判所の対応状況や保護観察所との連携状況を把握しながら学校と話を進めるとスムーズです。

3-2 家庭内での監督体制

**「今後、家庭でどのように少年を監督・指導していくのか」**は、家裁・学校ともに非常に重視します。特にスマートフォンを使って盗撮した場合、以下のような監督策が考えられます。

  • 保護者のスマホ利用管理:夜10時以降は保護者預かりとする、アプリの使用状況を定期的に確認する等。
  • ネット・SNSとの向き合い方:アダルト動画や過激な画像への接触をどう制限・管理するか。
  • 家族のコミュニケーション:日頃から悩みやストレスを共有しやすい雰囲気づくり。

これらを具体的に実施していると、家庭裁判所も「本人だけでなく保護者も本気で取り組んでいる」と評価し、軽い処分で済む可能性が出てきますし、学校側も「保護者と連携しながら再発防止策を進められる」と安心しやすいです。


第4章 具体的な弁護方針とアドバイス

ここから、**刑事弁護人(少年事件での付添人)**の立場として、具体的なステップやアドバイスを整理します。

4-1 家庭裁判所での付添人活動

  1. 事実関係の確認・動機の掘り下げ
    • 少年本人との面談を重ね、なぜ盗撮という性非行に至ったのかを詳細に聴取。
    • 「ただの好奇心」「スカートの中を見てみたかった」「友人に誘われた」など単純な理由だけではなく、部活動や学業でのストレス、家族関係の悩みなどの背景がないかを慎重にチェック。
  2. 家庭環境・学校生活状況の把握
    • 保護者面談で家庭状況を聞き取り(共働きのため放任気味だった、思春期における性教育が十分でなかった等)。
    • 学校の担任や部活の顧問からヒアリングし、少年の普段の態度・交友関係を把握。
  3. 再発防止策の立案
    • カウンセリングや専門医受診が必要か判断。
    • スマホ・ネット利用の管理策。
    • 親子のコミュニケーション方法(定期的な話し合いの場の設定など)。
  4. 家庭裁判所調査官との面談対応
    • 調査官に対して、弁護士とともに「再発防止策」「被害弁償状況」「親の監督体制」を積極的に説明。
    • 調査官の意見は審判に大きく影響するため、この段階で少年の姿勢を誠実に伝えることが重要。
  5. 審判期日の立ち会い
    • 少年が緊張しないよう事前にリハーサル。
    • 審判の場で裁判官からの質問に対し、付添人としてサポートし、補足説明が必要なら発言する。
    • 「少年は深く反省し、既にこうした行動をとっている。保護処分に付さなくても十分立ち直りが見込める」等、適切な処分を求める意見を述べる。

4-2 学校対応のサポート

  1. 学校面談への同席(可能であれば)
    • 学校から許可があれば、弁護士が同席して状況を説明。
    • 少年事件での進捗状況や再発防止策、被害者との示談経緯などを正確に伝え、学校側の不安を解消。
  2. 嘆願書・誓約書などの文書作成
    • 退学処分を避けるため、「誓約書」(今後同様の行為を行わない、スマホ使用を管理する等)や「嘆願書」(反省と更生の意志、家庭裁判所での取り組み状況)を丁寧に作成し、校長や教育委員会に提出。
  3. 懲戒処分審査手続での意見陳述
    • 公立高校では、重大処分の前に「生徒・保護者の意見を聴取する手続」が用意されていることがあります。その際、保護者が「退学は避けてほしい」理由を述べる場で弁護士がサポートするケースもあります。
  4. 部活動顧問との連携
    • 部活の指導方針・試合出場についての判断は顧問や校長の裁量が大きい。
    • 少年がサッカーを通じて更生できる見込みが大きいなら、その点を強調し、部から完全に排除するのではなく、一定期間の謹慎や指導強化で済むように要望する。

第5章 今後の展望と注意点

5-1 少年事件の見通し

盗撮事件は社会的に批判されやすく、性非行として重く見られます。しかし、初犯であり、被害者と示談が成立している、さらに少年が深く反省し家庭や学校で環境調整が進んでいるという状況ならば、下記のような処分が想定されます。

  1. 不処分:家庭裁判所が「これ以上の保護は必要ない」と判断するケース。再犯リスクが低く、既に環境が整えられていると評価されればあり得る。
  2. 保護観察:少年院送致ほどではないが、一定期間「保護観察所」の指導監督を受ける。再度性非行を起こさぬようカウンセリング等が課される場合もある。
  3. 児童自立支援施設等送致:環境的に問題が大きい場合や、家庭での監護が困難と見なされる場合。ただし本件でそこまで行く可能性は低いかもしれない。

いずれにせよ、本人の態度や家庭・学校の協力体制が評価されれば少年院送致など重い処分に至る確率は低いと考えられます。

5-2 学校での処分見通し

学校は世間体や再発リスクを懸念し、厳しい処分を選択しがちです。ただし、公立高校の場合は教育委員会の方針もあり、**「初犯であり、本人の反省が見られるなら、停学処分で様子を見る」**という選択をする可能性も十分にあります。退学となると少年の将来に重大な影響を及ぼすため、学校側も慎重に判断することが多いです。

  • 停学期間:1週間〜1か月程度の停学を課し、その後復帰を認めるケースも少なくありません。
  • 進学への影響:停学期間の成績や学習補習など、いくつかのフォローが必要となりますが、退学を回避できれば大学受験への道は引き続き開かれます。

5-3 本人・保護者へのメッセージ

今回のように、**「優等生」「サッカー部エース」など、周囲から見れば全く非行と無縁と思われる少年が、スマホを使った盗撮をしてしまう」**ケースは決して珍しくありません。思春期の性衝動や好奇心、ストレス、ネットやSNSの影響など、複合的な背景があるのが通常です。
大切なのは、この機会に少年が「自分はなぜそういう行動に走ったのか」を真剣に考え、再発防止策を実践し、保護者や学校が協力してサポートしていくことです。少年法はそのための制度設計になっており、学校も教育機関として少年の立ち直りを支援する立場にあるはずです。


第6章 「記事の妥当性」についての検証

ご相談内容では、下記の記事が提示され、「ありのまま回答というアドバイス」についての疑問が示されています。また、記事中では「他の弁護士のセカンドオピニオンを求めても良い」と記載があります。ここでは、その記事の内容を踏まえて、妥当性や補足すべき点を検証します。

  1. 記事本文の要旨
    • 「少年事件で盗撮が増えている。スマホで手軽に撮影できる環境が原因の一つ」
    • 「非行歴のない少年が突然盗撮で捕まるケースも珍しくない」
    • 「弁護士が『ありのまま答えればいい』というアドバイスをしがちだが、ちゃんと『どうしてそうなのか』を説明すべき」
    • 「家庭裁判所で聞かれる内容を、弁護士がきちんと事前説明すべき」
  2. 「ありのまま回答」への留意点
    • 確かに、家庭裁判所で嘘をついたり曖昧な説明をすると、少年の「向き合う姿勢」が疑われて逆効果です。
    • 一方、少年自身が自分の内面をしっかり整理できるよう、弁護士・保護者がサポートすることは必須です。
    • 記事でいう「ありのまま回答」とは、「何も準備しなくていい」という意味ではなく、「正直に喋る」ことを前提としたうえで、少年が自己分析を深めるサポートが必要、という趣旨と解釈すべきでしょう。
  3. セカンドオピニオンの必要性
    • 少年事件に不慣れな弁護士だと、事前面談やシミュレーションが十分でない場合もあり得ます。
    • 少年事件では「付添人活動」に精通した弁護士が望ましいのは事実で、保護者が不安を感じたら別の弁護士に相談する選択肢はあります。
    • もっとも、付添人が1人しか就けられないわけではないため(事務所内で複数弁護士がサポートしてくれるケースもある)、まずは今の弁護士に「具体的にどうすればいいか詳しく教えてほしい」とリクエストするのが先決です。
  4. 記事の妥当性
    • 全般的に、少年事件(特に盗撮)における注意点や、家庭裁判所の考え方についておおむね正しい概説がなされていると思われます。
    • ただし、記事だけでは各家庭裁判所の実務運用の違いや個々の事例の具体的な事情(家庭環境、被害者の意向など)までは言及していません。あくまで一般論として参考にすべきです。

結論として、この記事は少年事件の一般的な注意点を端的にまとめており、妥当性は認められるが、一方で「どういう回答がベストか」「家庭裁判所で具体的に何をどう説明するか」については、少年自身の状況に即した詳細なアドバイスが必要になります。そこがまさに付添人弁護士の役割なのです。


第7章 まとめ

以上、1万字以上にわたって、少年事件(盗撮)における家庭裁判所対応と、学校側での退学処分を回避・軽減するための対応を検討しました。主なポイントを整理します。

  1. 少年事件では「保護主義」:非行の原因究明と再犯防止が重視される
    • 家庭裁判所では、非行事実を認めた上で、少年がどれだけ自己分析・反省し、再犯防止に取り組めるかが大切。
  2. 「ありのまま回答」の真意
    • 嘘や隠ぺいは厳禁。
    • しかし、何も準備しないままだと、十分に反省やメカニズムの説明ができず、かえって悪影響。
    • 弁護士や保護者が事前に少年の内面を掘り下げ、一貫した説明をできるようにサポートすることが重要。
  3. 学校処分を回避・軽減するためのポイント
    • 校長・教師へ謝罪と反省を丁寧に示し、保護者も連携して再発防止に取り組む姿勢を明示する。
    • 嘆願書や誓約書など、文書ベースの誠意を示す。
    • サッカー部含めて、部活動の顧問や仲間たちの協力を得られるなら更生に資するとアピール。
  4. 被害者との示談や謝罪
    • 盗撮被害は精神的苦痛を伴うため、被害者が受けたショックをどう考えているかを少年が深く理解することが大事。
    • 示談書と併せて謝罪文などを整備し、家裁や学校に提出できるようにする。
  5. 再発防止策
    • 性非行としてのアプローチ:カウンセリングや医療機関の検討。
    • スマホ・SNS利用管理:親子での約束、使用時間やアプリ制限。
    • ストレス・悩みの共有:定期的に面談し、相談しやすい環境づくり。
  6. 付添人弁護士(少年事件に精通した専門家)への相談
    • 少年法手続は独特であり、慎重な対応が必要。
    • 不安が拭えないときはセカンドオピニオンも検討。
    • ただし、最終的には少年自身と保護者の連携・意欲が成功の鍵を握る。

結局のところ、家庭裁判所で「少年の更生可能性」をしっかり示し、学校に対しても「このまま在籍を続けても大丈夫だ」という安心材料を提供することが、退学回避や保護処分の軽減につながります。サッカー部で活躍してきた息子さんの将来を大切にするためにも、時間をかけて原因や背景を掘り下げる作業は欠かせません。


最終アドバイス

  • 早めに付添人弁護士と十分な面談を重ねる
    • 審判の直前になって慌てて準備しても時間が足りません。
  • 少年自身が「なぜ盗撮したのか」「被害者に何をしたのか」を真正面から認識する
    • 「ただの出来心」「好奇心」と片づけず、本当の理由や性衝動、ストレスを具体化する。
  • 親が積極的に家裁や学校とのパイプ役を務める
    • 「学校には行きにくい」と萎縮せず、校長や生徒指導の先生と面談を行い、息子さんの反省と改善策を伝える。
  • 部活動での処遇
    • 本人の状況次第では、大会出場などは難しい期間もあるかもしれませんが、将来的には復帰して頑張れる環境を用意する。
  • カウンセリング・専門治療の検討
    • 可能なら、専門機関で思春期の性行動に関する支援や指導を受けるのも手段の一つ。家裁調査官の評価も得やすい。

これらを地道に積み重ねれば、少年審判でも「不処分」または「保護観察」で済む可能性が高まり、学校処分も退学より軽い形(停学など)で着地する可能性が十分あります。「優等生であった」という事実や部活での実績、示談成立などは大きな追い風です。
最終的には、少年の将来を守りつつ、被害者への謝意と社会ルールを守る姿勢を示すという点を軸に、保護者と弁護士が連携してまいりましょう。


以上が、少年事件(盗撮)における家庭裁判所での対応、および学校側の退学処分回避に向けた詳細検討です。どうか本件が円満に解決し、息子さんの将来を立て直せるよう祈っております。今後の対応については、必ず実務経験豊富な少年事件専門の弁護士と十分に相談し、手続きを進めてください。