万引き事件で家庭裁判所調査官との面接で注意すべきこと
2026年06月25日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は福岡市内に住む40代の母親です。中学3年生の娘が、友人と一緒に雑貨店で万引きをしたとして警察に呼ばれました。
その後、家庭裁判所から呼出状が届き、娘と保護者で家庭裁判所に行き、家庭裁判所調査官の面接を受けることになりました。
娘は、警察では万引きを認めています。友人と一緒に店に行き、商品をバッグに入れて会計せずに出たようです。被害品は返還され、弁護士を通じてお店への謝罪と被害弁償も進めています。
ただ、娘は家ではあまり話しません。「反省している」「もうしない」とは言いますが、なぜ万引きをしたのか聞いても、「分からない」「友達に流された」と言うだけです。
家庭裁判所調査官との面接では、何を聞かれるのでしょうか。親として、どう準備すればよいのでしょうか。娘に「とにかく反省していますと言いなさい」と言えばよいのでしょうか。
A、家庭裁判所調査官との面接は、単なる反省文の読み上げではありません。
家庭裁判所調査官は、万引きという非行事実だけでなく、なぜその子が万引きに至ったのか、今後また同じことをしないためには何が必要か、家庭での監督や支援が十分かを見ます。
そのため、面接で大事なのは、きれいな言葉で「反省しています」と言うことではありません。
むしろ、
・何をしたのか
・そのとき何を考えていたのか
・なぜ止められなかったのか
・友人関係にどのような問題があったのか
・お金や買い物のルールはどうなっていたのか
・家庭で何を見落としていたのか
・被害店舗にどのような迷惑をかけたのか
・二度としないために何を変えるのか
を、本人と保護者が具体的に話せることが重要です。
親が「友達が悪い」「うちの子は本当はいい子です」「商品代は払ったので許してほしい」とだけ話すと、家庭裁判所からは、問題の本質を見ていないと受け取られる可能性があります。
一方で、子どもを追い詰めて、事実と違うことまで認めさせたり、過度に自己否定させたりする必要もありません。
万引き事件では、友人関係、仲間外れへの不安、家庭で言えないストレス、金銭感覚、衝動性、窃盗症の可能性、学校生活の問題など、背景は事案ごとに異なります。
家庭裁判所調査官との面接前には、弁護士と一緒に、事件内容、本人の気持ち、家庭環境、学校生活、被害者対応、再発防止策を整理しておくことをお勧めします。
【解説】
1 家庭裁判所調査官は何を見るのか
少年事件では、警察や検察での手続が終わった後、事件が家庭裁判所に送られます。
家庭裁判所では、裁判官が最終的な処分を判断しますが、その前提として、家庭裁判所調査官が少年本人や保護者から事情を聞きます。
調査官は、単に「万引きをしたかどうか」だけを見るわけではありません。
調査官が見ているのは、大きく分けて次の2つです。
第一に、非行事実です。
つまり、実際に何があったのか、どのような万引きだったのか、本人がどこまで関与したのか、友人との関係はどうだったのか、被害額や被害品は何か、余罪はあるのか、という点です。
第二に、要保護性です。
要保護性とは、簡単にいえば、少年が今後立ち直るために、家庭裁判所による保護処分や指導が必要かどうかという問題です。
万引き事件でいえば、
・また万引きをするおそれがあるか
・友人関係を見直せるか
・家庭で監督できるか
・学校生活に問題がないか
・本人が自分の行為を理解しているか
・被害者の立場を考えられるか
・親が現実的な再発防止策を作れているか
が問題になります。
つまり、家庭裁判所調査官との面接は、「反省しています」と言う場ではなく、「なぜ起きたのか」「どうすれば繰り返さないのか」を一緒に確認する場です。
2 万引き事件で聞かれやすいこと
万引き事件で家庭裁判所調査官から聞かれやすいのは、次のような事項です。
まず、事件当日のことです。
・いつ、どこの店に行ったのか
・誰と一緒だったのか
・何を盗んだのか
・商品を誰が選んだのか
・誰がバッグに入れたのか
・見張り役や荷物持ちのような役割があったのか
・店を出るとき、未精算だと分かっていたのか
・捕まったとき、どう感じたのか
次に、動機や背景です。
・なぜ万引きをしたのか
・お金がなかったのか
・欲しい物を買えなかったのか
・友人に誘われたのか
・断れなかったのか
・仲間外れが怖かったのか
・スリルや興味本位があったのか
・過去にも同じようなことがあったのか
・家族や学校に言えないストレスがあったのか
さらに、被害者への理解です。
・店にどのような迷惑をかけたと思うか
・商品代以外に、店員や警備員にどのような負担をかけたか
・謝罪文を書いたか
・被害弁償はどうなっているか
・今後、その店に行かないなどの約束をしているか
最後に、今後の生活です。
・友人関係をどう見直すか
・買い物のルールをどうするか
・お小遣いや金銭管理をどうするか
・親に困ったことを相談できるか
・学校生活をどう立て直すか
・再び誘われたらどう断るか
・保護者はどう監督するか
これらについて、本人と保護者がそれぞれ自分の言葉で説明できるようにしておく必要があります。
3 「反省しています」だけでは足りません
調査官面接でよくないのは、本人が形式的に、
「反省しています」
「もうしません」
「悪いことだと分かりました」
「親に迷惑をかけました」
とだけ話すことです。
もちろん、反省していることは大事です。しかし、それだけでは、なぜ万引きをしたのか、今後なぜ万引きをしないといえるのかが分かりません。
家庭裁判所が知りたいのは、本人が自分の行動をどこまで理解しているかです。
たとえば、
「友達に誘われたとき、本当は嫌だったが、断ると仲間外れにされると思った」
「欲しい物があったが、親に買ってほしいと言えなかった」
「店の商品を盗むことが、店員さんの仕事や他のお客さんにも迷惑をかけることだと考えていなかった」
「その場の雰囲気に流されて、止めることができなかった」
「今後は、会計前の商品をバッグに入れない。友達と店に行くときも、怪しい雰囲気になったらすぐ離れる」
というように、具体的に話せることが重要です。
きれいな反省の言葉よりも、自分の弱さや失敗を具体的に見つめているかが見られます。
4 親が「友達が悪い」と言いすぎる危険
少年の万引き事件では、友人と一緒に行っていることがよくあります。
実際に、友人から誘われた、断れなかった、見張り役をさせられた、盗品を持たされた、という事案もあります。
その場合、友人関係の影響はきちんと説明すべきです。
しかし、親が「友達が悪い」「うちの子は巻き込まれただけです」と言いすぎると、本人の問題を見ていないと受け取られることがあります。
家庭裁判所調査官は、単に「誰が一番悪いか」を見ているわけではありません。
本人が、その場でどう判断したのか、なぜ断れなかったのか、今後同じ状況でどう行動するのかを見ています。
したがって、
「友人に誘われたことは事実だが、本人もその場を離れず、止めることができなかった」
「仲間外れを恐れて流された面がある」
「今後は、その友人との付き合い方を見直し、危ない誘いには親や先生に相談する」
「親も、子どもの交友関係や学校での孤立感に気付けていなかった」
というように、友人の影響と本人・家庭の課題を分けて説明する必要があります。
5 「商品代を払ったから終わり」ではありません
万引き事件では、被害品の返還や被害弁償は非常に重要です。
商品が返還され、被害店舗への謝罪や弁償ができていれば、家庭裁判所でも良い事情として考慮されます。
しかし、「商品代を払ったから終わり」という考え方は危険です。
店舗側には、商品代以外にも負担があります。
防犯カメラの確認、警備員や店員の対応、警察への通報、被害届の作成、事情聴取、店内の防犯対策など、時間的・精神的な負担があります。
本人には、商品代だけでなく、店舗にどのような迷惑をかけたのかを考えさせる必要があります。
調査官面接では、
「商品代を弁償したので大丈夫です」
ではなく、
「商品代だけでなく、店員さんや警備員さんに時間を取らせ、店に不安を与えたことを理解しています」
「謝罪文を書きました」
「弁護士を通じて被害弁償を申し入れています」
「今後、問題となった店舗には立ち入らない約束をしています」
といった具体的な対応を説明する方がよいです。
6 親子で事前に話し合うべきこと
家庭裁判所調査官との面接前には、親子で落ち着いて話し合う必要があります。
ただし、親が尋問のように問い詰めることは避けてください。
「なぜやったの」
「どうしてそんなことをしたの」
「恥ずかしいと思わないの」
「正直に言いなさい」
「友達のせいにするな」
と責め続けると、子どもは黙るか、親が望む答えを言うだけになります。
親子で確認すべきなのは、次のような点です。
・事件当日、何があったのか
・どの時点で悪いことだと分かっていたのか
・なぜ止められなかったのか
・友人関係にどんな不安があったのか
・お金や欲しい物について、家庭で相談できていたのか
・学校生活や部活動でストレスはなかったのか
・親に言えなかったことはあるか
・今後、同じ場面でどう断るか
・家庭でどんなルールを作ればよいか
大事なのは、親が正解を押しつけることではありません。
子ども自身が、自分の言葉で「なぜ起きたのか」「次にどうするのか」を話せるようになることです。
7 親が調査官から聞かれること
家庭裁判所調査官は、保護者にも面接をします。
親が聞かれやすいのは、次のようなことです。
・子どもの性格
・幼少期からの様子
・学校生活
・友人関係
・家庭での会話
・親子関係
・お小遣いの管理
・スマートフォンやSNSの利用
・帰宅時間や外出のルール
・今回の事件を知ったときの対応
・被害者対応の状況
・今後の監督方法
・学校との連携
・再発防止策
ここで親が、
「うちの子は本当はいい子です」
「今まで問題はありませんでした」
「友達が悪いと思います」
「厳しく叱ったので、もう大丈夫です」
とだけ話しても、十分ではありません。
むしろ、
「これまで問題がないと思っていたが、子どもが友人関係で断れない不安を抱えていたことに気付けなかった」
「お小遣いの使い方や買い物のルールを十分に確認していなかった」
「事件後、親子で話し合い、当面は一人で店に行かないことにした」
「学校とも必要な範囲で連携し、友人関係を見直す」
「子どもが困ったときに相談できる時間を作る」
というように、保護者自身の見落としと今後の改善策を話すことが重要です。
8 調査官面接でしてはいけないこと
調査官面接でしてはいけないことがあります。
第一に、事実を軽く見せようとすることです。
「ちょっとした出来心です」
「子どものいたずらです」
「商品代は払いました」
「大げさに扱われている」
という態度は、被害店舗への理解が足りないと見られます。
第二に、子どもに台本を覚えさせることです。
調査官は、形式的な反省の言葉か、自分の言葉かを見ています。親や弁護士が作った言葉をそのまま話しても、本人の理解とは評価されにくいです。
第三に、友人や学校だけのせいにすることです。
友人関係や学校生活は重要な背景事情ですが、本人がどう判断し、家庭がどう支えるかを抜きにしては、再発防止になりません。
第四に、余罪や過去の行動を隠すことです。
過去にも同じようなことがあった場合、隠して後から発覚すると、調査官からの信用を失います。ただし、どこまで、どのように話すかは、事前に弁護士と相談すべきです。
第五に、子どもを過度に責めることです。
「この子は本当にだめです」
「信用できません」
「厳しく罰してください」
といった言い方は、家庭で支える力がないと見られることがあります。
反省と自己否定は違います。家庭裁判所は、子どもを立ち直らせるための場です。
9 再発防止策は具体的にする
万引き事件の調査官面接では、再発防止策が非常に重要です。
「もうしません」では足りません。
具体的には、次のような対策を検討します。
・会計前の商品をバッグやポケットに入れない
・買い物中は必ず買い物かごを使う
・当面は一人で店に行かない
・問題となった店舗には立ち入らない
・友人と店に行くときは、親に行き先を伝える
・お小遣い帳をつける
・必要な物は親に相談してから買う
・欲しい物を言えない雰囲気を家庭で作らない
・誘われたときの断り方を練習する
・仲間外れにされたときの相談先を決める
・学校の先生、スクールカウンセラーと連携する
・スマートフォンやSNSでの友人関係を見直す
・衝動性や窃盗症が疑われる場合は専門機関に相談する
本人の性格や事件の背景によって、必要な対策は違います。
友人に流された事件なら、交友関係と断り方が重要です。
お金や欲しい物を言い出せなかった事件なら、家庭内の相談ルールが重要です。
繰り返し万引きをしていた事件なら、窃盗症やストレス、摂食障害、家庭内問題、学校不適応なども検討する必要があります。
10 反省文・謝罪文・資料を準備する
家庭裁判所調査官との面接までに、必要な資料を準備しておくとよいです。
たとえば、次のような資料です。
・本人の反省文
・被害店舗への謝罪文
・被害弁償の資料
・示談書又は被害弁償申入れの経過
・問題となった店舗に立ち入らない誓約書
・保護者の監督計画
・学校生活の状況が分かる資料
・部活動、習い事、生活リズムに関する資料
・再発防止策をまとめたメモ
・カウンセリングや医療機関に相談した資料
・家族で作成した買い物ルール
・お小遣い管理表
ただし、資料をたくさん出せばよいというものではありません。
大事なのは、本人と家庭が、事件を具体的に見つめ、再発防止のために現実的な行動を始めていることです。
11 審判不開始・不処分を目指す場合
万引き事件であっても、事案によっては審判不開始や不処分を目指せることがあります。
そのためには、次の事情が重要です。
・非行事実が比較的軽い
・初回又は非行歴が少ない
・被害品が返還されている
・被害弁償や謝罪ができている
・被害店舗への対応が誠実である
・本人が自分の問題を理解している
・保護者が監督体制を作っている
・学校生活が安定している
・友人関係を見直している
・再発防止策が具体的である
・家庭裁判所の指導を待たなくても、在宅で更生できる見込みがある
逆に、被害額が大きい、複数回やっている、友人と集団で行っている、見張り役や盗品保管役など役割がある、親が事実を軽く見ている、被害者対応が進んでいない、再発防止策が抽象的、という場合には、保護観察などが検討される可能性があります。
12 弁護士ができること
万引き事件で家庭裁判所調査官との面接を控えている場合、弁護士は次のような活動を行います。
・非行事実の整理
・警察での供述調書の確認
・本人との面談
・保護者との面談
・調査官面接で聞かれる事項の説明
・本人が自分の言葉で説明できるようにする準備
・被害店舗への謝罪、被害弁償、示談交渉
・学校への報告方針の検討
・友人関係の整理
・家庭での監督計画作成
・再発防止策の具体化
・反省文、謝罪文の作成助言
・家庭裁判所への意見書提出
・審判不開始、不処分、又は軽い処分を求める付添人活動
弁護士の役割は、子どもに「正しい答え」を暗記させることではありません。
子どもが、なぜ万引きをしてしまったのか、自分の弱さはどこにあったのか、被害店舗に何をしたのか、今後どうすれば同じことをしないのかを、自分の言葉で話せるように支えることです。
また、親に対しても、叱るだけでも、かばうだけでもない対応を一緒に考えることが必要です。
まとめ
万引き事件で家庭裁判所調査官との面接を受ける場合、単に「反省しています」と言えばよいわけではありません。
家庭裁判所調査官は、事件そのものだけでなく、少年の性格、家庭環境、学校生活、友人関係、保護者の監督体制、再発防止策を見ています。
特に万引き事件では、
・なぜ万引きをしたのか
・友人関係にどのような問題があったのか
・被害店舗にどのような迷惑をかけたのか
・被害弁償や謝罪はどうなっているのか
・家庭で何を見直すのか
・同じ場面になったとき、どう断るのか
・買い物やお金のルールをどう作るのか
を具体的に説明できることが大事です。
親は、子どもを責めすぎてもいけません。逆に、子どもをかばって事実を軽く見てもいけません。
事実を正確に見つめ、被害者に誠実に対応し、家庭として再発防止の仕組みを作ることが重要です。
薬院法律事務所では、少年の万引き事件について、警察対応、被害店舗への謝罪・被害弁償、家庭裁判所調査官面接の準備、保護者の監督計画、再発防止策、少年審判での付添人活動を行っています。
「家庭裁判所から呼出状が届いた」
「調査官面接で何を話せばよいか分からない」
「子どもがなぜ万引きしたのか話してくれない」
「友人に流された事件でどう説明すべきか悩んでいる」
「審判不開始や不処分を目指したい」
という場合には、早めにご相談ください。


