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薬院法律事務所

刑事弁護

交通事故、相手が怪我したという主張が信用できないという相談(保険金詐欺、当たり屋)


2024年09月11日読書メモ

【相談】

 

Q、私が、スーパーの駐車場から車を出そうとしたところ、進路に急に車が入り込んできて衝突しました。相手はむち打ちということで治療を受けているそうですが、わざとぶつかるようにしたのではないかと疑っていますし、怪我をしたという主張も信用できません。診断書はあるそうですが、私はどうすればいいでしょうか。

A、保険金詐欺の可能性があります。警察に事情を説明するとともに、弁護人をつけて刑事処分・行政処分について争うことが考えられます。

 

【解説】

 

いわゆる「当たり屋」の事件は、今なお後を絶ちません。組織的に交通事故を偽装するパターンもあるようで、むち打ちのように自訴のみで診断書がでることを利用するようです。しかし、何も対応しなかった場合には「過失運転致傷」として処罰や行政処分を受ける可能性は否定できません。不審な点がある場合は、保険会社に任せるだけではなく、弁護士の面談相談を受けましょう。那須修編共著『プロ直伝!交通捜査のQ&A』(東京法令出版,2021年9月)に詳しい説明がありますが、警察も見落とすパターンが良くあるようですので、積極的に当事者から主張していくことが大事です。

 

【参考文献】

 

得能博(福岡県警察本部交通部交通捜査課)「偽装交通事故を手段とする常習詐欺グループと結註した柔道整復師らによる組織的自動車保険金詐欺事件の検挙」月刊交通2018年11月号(608号)37-51頁

41-42頁
【Bグループの詐取手口は、偶発的事故を装った、第三者巻き込み型の偽装交通事故(以下「巻き込み作出事故」という。)を手段とするものであり、その手口は、大型商業施設や大型量販店、公営オートレース場等の大型駐車場において、駐車場枠内から後退発進する状態で駐車する第三者運転の車両を探し出し、その車が後退すると同時に、Bグループ員が複数搭乗する車両を故意に衝突させたにもかかわらず、「車をぶつけられた。」などと主張し、事情を知らない第三者を加害運転者に仕立て上げるもので、C整骨院における通院・受診を偽装していたものである。その事故形態からは、被害者側とみなされるBグループ員サイドにも過失があると認定され、任意保険対応の一括払制度では過失割合に応じて減額される上、審査が厳しいため、自賠責保険の限度内という制限は受けるものの、審査が甘く被害者側に重大な過失が認められない限り減額適用されない、自賠責保険の被害者請求(いわゆる法16 条請求)を悪用し、換言すれば、保険制度の盲点を利用して自賠責保険金名下で現金を手中にしていたものである。
このBグループの請求意図は、自賠責保険金が書類審査だけで支払われる簡便性と確実性、そして何よりも情を知らない第三者を巻き込むことで、作出事故が看破されにくいことを考慮しての連続犯行であった。】

 

交通犯罪(救護・報告義務違反)