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薬院法律事務所

刑事弁護

任意同行の手順(警察は任意同行の際に用件を告げる義務はあるか)


2021年09月12日読書メモ

良くある質問のひとつです。

「任意同行ってどんな感じですか」。

 

実はこれ、刑事訴訟法と犯罪捜査規範にあるのです。逮捕状が発付されていても、誤認逮捕防止のためまずは任意同行というのもあります。

 

刑事訴訟法

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

 

犯罪捜査規範

(任意出頭) 第百二条 捜査のため、被疑者その他の関係者に対して任意出頭を求めるには、電話、呼出状(別記様式第七号)の送付その他適当な方法により、出頭すべき日時、場所、用件その他必要な事項を呼出人に確実に伝達しなければならない。この場合において、被疑者又は重要な参考人の任意出頭については、警察本部長又は警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。

2 被疑者その他の関係者に対して任意出頭を求める場合には、呼出簿(別記様式第八号)に所要事項を記載して、その処理の経過を明らかにしておかなければならない。

 

良く、「朝にくる」といわれますが、それは、在宅率が高いことと、任意性の確保というふたつの理由があります。あえて私服でくるとか、警察車両を使わないといった配慮もされているようです。

良くある質問で、「警察が用件を告げずに出てこいというのです。」というものがあります。

確かに刑事訴訟法上は被疑事実の告知は不要ですが、上記のように犯罪捜査規範の定めがあることから、少なくとも罪名又は事件名くらいの告知はするように求めることが考えられます。単なる拒否はオススメしないです。「正当な理由なく出頭しなかった。」として逮捕の理由にされる危険があります。

※参考文献

福岡県警察本部刑事部刑事総務課捜査研究会『警察官のための捜査実務質疑応答集〔全訂版〕』(東京法令出版,2010年3月)305頁

【被疑者に任意出頭を求める際、被疑事実の要旨を告げる必要の有無
問 被疑者の任意出頭を求めて取り調べる場合、被疑事実の要旨を告げる必要があるか。
答 必要はない。
・理由・
刑訴法上は、そのような規定はない。しかしながら、被疑者の任意出頭を求める場合はその理由の告知(少なくとも罪名又は事件名程度の告知) を要するとされていること及び取調べに当たっては被疑者に無用の不安感を抱かせないようにすべきこと等の観点に照らすと詳細な被疑事実を告げる必要はないが、 どのような容疑で取調べを受けようとしているのかを理解させる程度の内容は告げるべきであろう。
なお、 これについては供述調書を作成すると否とによる差異はない。】