会社の更衣室に盗撮用の隠しカメラを設置して発覚したので、自主退職すべきかという相談(盗撮、労働問題)
2024年09月22日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、全国展開している某企業の福岡支店で営業部長をしています。既婚者で子どももいる身でありながら恥ずかしいことですが、女性の部下に対して恋愛感情を持ってしまい、彼女のことを知りたくて更衣室にカメラを仕掛けて盗撮してしまいました。発覚して警察を呼ばれ、会社からは自宅待機命令を出されているのですが、自主退職すべきか迷っています。降格処分と配置転換で済むのであれば、家族を養うためにも勤務は続けたいです。
A、内容からすれば、懲戒解雇相当事案です。示談が成立すれば解雇を回避できる可能性もありますが、自主退職について現実的に考えた方が良いでしょう。
【解説】
会社内で盗撮行為をしたというご相談が時々あります。重大なことではないと思い込んでいる人もいますが、会社内における重大な背信行為であり、基本的には懲戒解雇が妥当する事案になります。私の取扱経験でも刑事処分前に懲戒解雇がなされた事案が複数回ありました。退職届を出した後でも、退職の効力が発生する前に懲戒解雇処分がなされることもあります。
※性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000067
(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
※法務省 性犯罪関係の法改正等 Q&A 令和5年7月
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html
※労働契約法
https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128
(懲戒)
第十五条使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
(解雇)
第十六条解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
【参考文献】
三上安雄ほか『懲戒処分の実務必携 Q&A〔第2版〕』(民事法研究会,2024年3月)244頁
【Q70 職場内での盗撮行為に対してはどのような懲戒処分が妥当か
当社の B支店において、支店長が、女子更衣室に隠しカメラを設置して、女子社員の着替えを撮影していたことが発覚しました。どのような処分が妥当でしょうか。
(((●ズバリ回答●)))
職場での犯罪行為であり、職場秩序および女性社員への影響に鑑みれば懲戒解雇処分が妥当と解されます】(荒川 正嗣)