初めて万引きで警察から呼び出された場合の対応【防犯カメラで特定されたという相談】
2026年06月23日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は福岡市内に住む30代の会社員です。
先日、警察から電話があり、「店舗での商品持ち去りの件で話を聞きたい」「防犯カメラであなたが特定されている」「警察署に来てほしい」と言われました。
思い当たることがあります。
数週間前、ドラッグストアで日用品と化粧品を買い物していた際、一部の商品を会計せずにバッグに入れて店を出てしまいました。その場では店員さんに声をかけられませんでした。後日、防犯カメラで確認され、警察に被害届が出されたようです。
商品代は数千円程度です。私はこれまで前科も前歴もありません。警察から電話が来てから、怖くて眠れません。会社や家族に知られたらどうしよう、逮捕されるのではないか、前科がつくのではないかと不安です。
警察には正直に話した方がよいのでしょうか。お店に謝罪して商品代を支払えば許してもらえるのでしょうか。初めての万引きでも起訴されることはあるのでしょうか。
A、万引きは、法律上は窃盗罪です。
「商品代が安い」「初めて」「その場で捕まっていない」「後から防犯カメラで特定された」という場合でも、刑事事件として扱われます。
もっとも、前科前歴がない初犯で、被害額が比較的小さく、事実関係に大きな争いがなく、被害弁償や謝罪、示談ができれば、不起訴を目指せる可能性があります。
警察から呼び出された場合、無視してはいけません。無断で出頭しない、電話に出ない、住所を変える、勤務先を隠すといった行動は、逃亡のおそれがあると見られる可能性があります。
一方で、何の準備もせずに警察署へ行き、その場の流れで供述調書を作成してしまうことも危険です。
特に、防犯カメラで特定されている場合には、警察が一定の証拠を持っている可能性があります。事実と違う否認をすると、反省していない、証拠に反する弁解をしていると見られることがあります。
他方で、防犯カメラに映っているからといって、警察の見立てをすべてそのまま認める必要もありません。
問題になるのは、
・本当にその商品を持ち去ったのか
・会計を忘れたのか、盗むつもりだったのか
・商品をバッグに入れた経緯
・他にも未精算の商品があるのか
・過去にも同じ店舗で同じような行為がないか
・被害品は返還できるのか
・被害弁償ができるのか
・家族や勤務先への影響
・再発防止策
です。
初めての万引きであっても、警察対応、被害店舗への対応、検察官への不起訴意見書提出を適切に行う必要があります。
警察から呼び出された段階で、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。
【解説】
1 万引きは窃盗罪です
万引きという言葉は日常的に使われますが、法律上は窃盗罪です。
窃盗罪は、他人の財物を盗んだ場合に成立します。店舗の商品は店の所有物又は管理物ですので、代金を支払わずに店外へ持ち出せば、窃盗罪が問題になります。
「数百円だから大丈夫」
「商品を返せば済む」
「初めてだから注意で終わる」
「その場で捕まっていないから事件にならない」
と考えるのは危険です。
店舗側からすれば、商品そのものの被害だけではありません。防犯カメラの確認、警備員や店員の対応、被害届の作成、警察対応、棚卸し、再発防止の負担が生じています。
初犯であっても、万引きは刑事事件です。
2 防犯カメラで後日特定されることは珍しくありません
万引き事件では、その場で店員や警備員に声をかけられず、後日、防犯カメラで特定されることがあります。
典型的には、次のような流れです。
店舗が棚卸しや在庫確認で被害に気付く
防犯カメラを確認する
商品をバッグやポケットに入れる場面が映っている
会計記録と照合する
同じ人物の入退店映像やレジ映像を確認する
ポイントカード、電子決済、駐車場、周辺カメラなどから人物を特定する
警察に被害届を出す
警察から本人に連絡が来る
最近は、防犯カメラの画質が高くなっています。店内だけでなく、出入口、駐車場、商業施設の通路、近隣店舗のカメラなどが確認されることもあります。
「その場で捕まっていないから大丈夫」とは限りません。
3 警察から呼び出された場合、逮捕されるのか
警察から電話で呼び出された場合、多くの方が「警察署に行ったら逮捕されるのではないか」と心配します。
初犯の万引きで、住所・勤務先が安定しており、警察の呼出しに応じ、証拠隠滅や逃亡のおそれが低い場合には、在宅事件として進むことも多いです。
しかし、必ず逮捕されないわけではありません。
次のような事情がある場合には、逮捕のリスクが高まります。
・警察からの呼出しを無視している
・住所や勤務先が不安定
・身元引受人がいない
・防犯カメラ上、常習性が疑われる
・同じ店舗で余罪がある
・被害額が大きい
・高額商品や転売目的が疑われる
・組織的な万引きが疑われる
・盗品を処分している
・証拠隠滅や口裏合わせが疑われる
・同種前科、前歴がある
・否認内容が防犯カメラ等の証拠と大きく矛盾している
警察から呼び出されたら、無視せず対応すべきです。
ただし、出頭前に弁護士へ相談し、事実関係と対応方針を整理しておくことが重要です。
4 警察に行く前にしてはいけないこと
警察から呼び出された後に、焦って不適切な行動をすると、事件が悪化します。
してはいけないことは、次のとおりです。
・警察からの電話を無視する
・出頭予定日に無断で行かない
・盗んだ商品を捨てる
・商品を使い切る
・商品を売る、譲る、処分する
・レシートや袋を捨てる
・店舗に直接行って強引に謝罪しようとする
・店員に「被害届を取り下げてほしい」と頼む
・家族や友人に口裏合わせを頼む
・防犯カメラに映っていないと言い張る
・SNSに事件のことを書く
・弁護士に事実を隠す
特に、盗んだ商品が残っている場合には、捨てたり使ったりせず、そのまま保管してください。
商品が残っていれば、返還できる可能性があります。商品を処分すると、被害回復が難しくなり、反省していないと見られることがあります。
5 取調べ前に整理すべきこと
警察署へ行く前に、次の事項を整理してください。
・店舗名
・日時
・持ち去った商品
・商品の金額
・商品をバッグやポケットに入れた経緯
・レジを通した商品と通していない商品の区別
・会計を忘れたのか、盗むつもりだったのか
・店を出た後、商品をどうしたのか
・商品が残っているか
・過去にも同じ店舗で同じようなことがないか
・万引き以外の余罪がないか
・家族や勤務先への影響
・被害弁償ができるか
・再発防止策をどうするか
ここで大事なのは、言い訳を作ることではありません。
本当に盗むつもりだったのであれば、事実を受け止める必要があります。
一方で、記憶が曖昧なことや、警察の見立てと違うことについて、無理に認める必要はありません。
防犯カメラに映っている場合でも、映像だけで本人の内心がすべて分かるわけではありません。
たとえば、商品をバッグに入れたこと自体は映っていても、会計忘れなのか、盗む意思があったのか、他の商品と混同したのか、どの時点で未精算に気付いたのかは、事案によって異なります。
自分の認識を正確に説明することが重要です。
6 「買うつもりだった」「会計を忘れた」は通用するのか
万引き事件でよくある説明が、「買うつもりだった」「会計を忘れた」というものです。
本当に会計忘れであれば、その事情は主張すべきです。
しかし、次のような事情があると、会計忘れの説明は信用されにくくなります。
・商品をバッグの奥に入れている
・値札や防犯タグを外している
・レジを通さず店外へ出ている
・レジで他の商品だけ会計している
・商品を隠すような動きをしている
・店員や防犯カメラを気にしている
・過去にも同じ店舗で同様の行動がある
・店を出た後に商品を使っている
・警察から連絡が来るまで店に申し出ていない
一方で、
・買い物かごやカートに入れた商品と混同した
・子どもや荷物対応で混乱していた
・一部の商品は通常どおり会計している
・未精算商品が袋詰めや手荷物の整理中に混入した
・店を出てすぐ気付いて戻ろうとしていた
・商品が未使用で残っている
・同種前歴がない
といった事情があれば、故意を争う余地や、少なくとも情状として考慮される余地があります。
ただし、会計忘れの主張は、防犯カメラ、レジ記録、本人の行動、商品点数、過去の来店状況と照らして判断されます。
安易に「忘れただけ」と言えば済むものではありません。
7 防犯カメラがある場合の取調べ対応
防犯カメラがある事件では、警察が映像を見ながら質問することがあります。
「これはあなたですね」
「この商品をバッグに入れていますね」
「この時点で周囲を見ていますね」
「レジを通さず店を出ていますね」
「なぜこの商品だけ会計しなかったのですか」
と聞かれることがあります。
このとき、映像に映っている客観的事実について、明らかに自分であるのに否認すると、信用を失います。
一方で、映像から分からないことまで、警察官の評価に合わせて認める必要はありません。
たとえば、
「盗むために周囲を確認しました」
「最初から盗むつもりでした」
「過去にもやっています」
「常習的にやっています」
といった内容は、実際の認識と違うのであれば、安易に認めてはいけません。
供述調書には、自分の言葉で、正確に記載してもらう必要があります。署名押印をする前に、必ず内容を確認してください。
8 被害弁償と示談
初犯の万引き事件で不起訴を目指すためには、被害店舗への対応が重要です。
まず、被害品が残っている場合には、返還を検討します。
商品が使用済み、破損、食品で再販売できない場合には、代金相当額の弁償が必要になります。
もっとも、店舗側の被害は商品代だけとは限りません。店舗によっては、商品代のほか、警備費用、事務負担、迷惑料的な金額を含めた示談金を求めることもあります。
また、大手チェーン店では、社内方針として、加害者本人や家族からの直接謝罪や示談交渉に応じないことがあります。店舗の現場担当者が判断できず、本部や法務部、警察対応窓口が関与することもあります。
そのため、本人が直接店舗に行って、
「商品代を払うので許してください」
「被害届を取り下げてください」
「会社に知られたくないので大ごとにしないでください」
と頼むことは避けるべきです。
被害者側に圧力をかけたと受け取られることがありますし、店舗側の対応を硬化させることもあります。
弁護士を通じて、謝罪、被害弁償、示談交渉を行う方が適切です。
9 示談できれば不起訴になるのか
万引き事件では、初犯で被害弁償や示談ができれば、不起訴を目指せる可能性があります。
しかし、示談できれば必ず不起訴になるわけではありません。
検察官は、次のような事情を総合して判断します。
・被害額
・被害品の内容
・犯行態様
・計画性
・常習性
・前科前歴
・余罪の有無
・被害弁償の有無
・示談の有無
・被害者の処罰感情
・本人の反省状況
・家族の監督
・再発防止策
・精神的問題、依存傾向、ストレス要因
・職業や生活状況
初犯で、被害額が小さく、商品が返還され、示談が成立し、被害者が処罰を望まない場合には、不起訴の可能性は高まります。
一方で、被害額が大きい、複数回やっている、防犯カメラ上で常習性が疑われる、転売目的がある、同種前歴がある、被害者が強く処罰を求めている場合には、起訴される可能性もあります。
10 再発防止策を具体的に示す必要があります
万引き事件では、本人が「もう二度としません」と言うだけでは不十分です。
検察官や店舗側から見ると、再び同じことをしないための具体策があるかが重要です。
たとえば、次のような再発防止策が考えられます。
・当面、一人で店舗に行かない
・問題となった店舗には二度と行かない
・家族に買い物を同行してもらう
・セルフレジの利用を避ける
・バッグを店内に持ち込まない
・買い物リストを作る
・会計前の商品をバッグやポケットに入れない
・ストレスや衝動性に問題がある場合は医療機関やカウンセリングを利用する
・家族に事件を説明し、監督してもらう
・クレプトマニア、窃盗症の疑いがある場合は専門的支援につながる
特に、本人が「なぜやったのか分からない」「お金に困っていたわけではない」「衝動的にやってしまった」と話す場合には、再発防止策が重要になります。
単なる反省文だけでなく、生活上の具体的な仕組みを作る必要があります。
11 勤務先や家族に知られるのか
初めての万引きで警察から呼び出された場合、勤務先や家族に知られることを心配する方が多いです。
警察が必ず勤務先に連絡するわけではありません。
住所、勤務先、身元が確認でき、本人が出頭に応じ、在宅事件として進む場合には、勤務先に知られずに手続が進むこともあります。
しかし、次のような場合には、勤務先や家族に知られる可能性があります。
・逮捕される
・勾留される
・実名報道される
・警察が身元確認のため勤務先へ連絡する
・勤務中や通勤中の事件である
・職場近くの店舗での事件である
・被害店舗が勤務先と関係している
・取調べや検察庁出頭で欠勤が必要になる
・公務員、教員、医療職、士業などで報告義務が問題になる
・家族を身元引受人にする必要がある
勤務先に知られたくないからといって、警察からの呼出しを無視することは逆効果です。
在宅事件として進め、不起訴を目指すことが、結果的に勤務先への発覚リスクを下げることにつながります。
12 検察庁から呼び出されることがあります
警察で取調べを受けた後、事件は検察庁へ送致されます。
その後、検察庁から呼出しがあり、検察官から事情を聞かれることがあります。
検察官は、起訴するか、不起訴にするかを判断します。
初犯の万引き事件では、検察官の取調べまでに、
・被害弁償
・示談
・謝罪文
・反省文
・家族の監督書
・再発防止策
・必要に応じた通院、相談記録
を整えておくことが重要です。
警察で話した内容と、検察庁で話す内容が大きく食い違うと、信用性が問題になります。
そのため、最初の警察取調べの段階から、事実関係を正確に話すことが大切です。
13 弁護士ができること
初めての万引き事件で弁護士ができることは、次のとおりです。
・警察出頭前の相談
・事実関係の整理
・取調べ対応の助言
・防犯カメラを前提にした供述方針の検討
・供述調書作成時の注意点の説明
・被害店舗への謝罪、被害弁償、示談交渉
・謝罪文、反省文の作成助言
・家族への説明方法の整理
・再発防止策の作成
・逮捕回避のための意見書作成
・検察官への不起訴意見書提出
・勤務先や学校への対応方針の検討
・クレプトマニア、窃盗症が疑われる場合の支援先検討
特に、防犯カメラで特定されている事件では、警察が一定の証拠を持っている可能性が高いです。
事実を認めるべき部分と、正確に説明すべき部分を整理し、被害店舗への対応を早めに進めることが重要です。
まとめ
初めての万引きであっても、警察から呼び出された場合には、刑事事件として対応する必要があります。
特に、防犯カメラで特定された事件では、警察が一定の客観証拠を持っている可能性があります。
警察から連絡が来た場合には、
・無視しない
・商品を捨てない、使わない、売らない
・店舗に直接押しかけない
・防犯カメラに反する不自然な否認をしない
・取調べ前に事実関係を整理する
・被害弁償、謝罪、示談を検討する
・再発防止策を具体的に作る
・弁護士に相談する
ことが重要です。
初犯で、被害額が比較的小さく、被害弁償や示談ができ、反省と再発防止策を示せれば、不起訴を目指せる可能性があります。
薬院法律事務所では、万引き、置き引き、窃盗事件について、警察対応、取調べ前の助言、被害店舗との示談交渉、不起訴を目指す弁護活動を行っています。
「防犯カメラで特定された」
「警察から万引きの件で呼び出された」
「初めてでどうすればよいか分からない」
「会社や家族に知られたくない」
「不起訴にしてほしい」
という場合には、早めにご相談ください。
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