論文紹介「盗撮によって事例化し自閉症スペクトラム障害が疑われた事例」
2018年07月20日刑事弁護
盗撮事件については、「何故本人が盗撮をしてしまうのか」を掘り下げて検討していくことが大事です。
私は様々な文献を読んでいるのですが、ひとつ参考になるかもしれないという文献がありましたので紹介いたします。
土橋攻昌(陸上自衛隊小倉駐屯地)「臨床経験 盗撮によって事例化し自閉症スペクトラム障害が疑われた事例」(精神科治療学30(12) ; 1657-1662, 2015)
【ところで盗撮といえば,一般に性的欲求がその原因と考えられやすいが,本事例の場合,動因としての性的欲求あるいは性的衝動の高まりは,あくまで副次的なものである可能性が高い。Aには性格特性としての高い衝動性も,生育歴上の性的逸脱行動も認められなかった。それではなぜ,Aは盗撮という行為を犯したのであろうか。盗撮はレンズを対象者(物)に向けて単にシャッターボタンを押すだけの行為であり,その行為自体には「対人的な交互作用が必要ない」8)という点が特徴的である。また盗撮の対象は,女性の顔や全身像といった人格的要素を伴うものではなく,むしろそういった要素を捨象したスカートの中の下半身という限局的な身体の一部分であることが多い。このような盗撮の持つ特徴や特異的な形式に,ASD特有の心理特性との密接な関連性を見出すことができる。すなわち,対人的・情緒的相互性の障害と限局化された興味・関心といったASDの中核特性は,対人的交互作用が無用でなおかつ限局的な性的関心を満足させる行為としての盗撮との強い親和性があると考えられるのである。したがって,ASDの本来的な特性は性的な関心や嗜好と結びつくことによって,盗撮行為にまで至る危険性を内包しているといえるかもしれない。ただし,盗撮行為をする人が皆ASD特性を持っているわけでも,ASD特性を持つ人がフラストレーションを抱え過ぎると必ず盗撮行為をするというわけでもない。】
生活の基本が変わらないと繰り返してしまい、結局再犯してしまいます。弁護人としては、そこについても出来るだけフォローしたいと思っています。
なかなか参考になる内容でした。
http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0102/bn/30/12index.html