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薬院法律事務所

刑事弁護

後日不同意性交と言いがかりをつけられないように、性交中の姿を盗撮したという相談(盗撮、刑事弁護)


2024年11月01日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は、福岡市に住む30代の会社員男性です。マッチングアプリで知り合った女性とワンナイトを楽しむのが趣味なのですが、最近は刑法が改正されたということで、後日になって「不同意だった」と言いがかりをつけられないか不安になっています。そこで、盗撮用カメラを設置して、撮影して万一の場合に備えたいと思っています。ちゃんとした理由があるので盗撮にはならないと思うのですが、どうでしょうか。

A、立案担当者の解説で、正当な理由にならないという見解が示されています。裁判でも、特段の事情がない限り、正当な理由とは認められないと思います。

 

【解説】

参考文献の通りです。なお、相談事例は男性が盗撮する事例で作成しましたが、例えば、女性が、後日に不貞行為や児童買春といった理由で男性を恐喝する目的で盗撮していた場合も、同様に性的姿態等撮影罪が成立するでしょう。

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000067

(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロイに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

 

【参考文献】

浅沼雄介ほか「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律について(1)」法曹時報76巻2号(2024年2月号)23-122頁

66-67頁

【(注 13) 本号又は本項第4号の「正当な理由」があるといえるのは、

①撮影行為者と撮影対象者の関係が、撮影行為をめぐって利害が相反するようなものでなく、かつ、
② 社会通念上、撮影行為の動機・目的が正当なものであり
③ ①・②を前提に、撮影対象や方法などの態様も相当な範囲にとどまる
からであると考えられる。
これに対し、例えば、性交後に相手方から「性交に同意していなかった」などと主張されてトラブルになった場合に備えて、ひそかに、性交をしている間における相手方の対象性的姿態等を動画撮影する行為については、
〇 撮影行為者にとっては、自らの利益のために証拠保全をするものである一方、撮影対象者にとっては、全く利益がなく、むしろ保護法益を侵害するだけのものであって、その関係は、撮影行為をめぐって利害が相反するものである上、
〇 性的な行為をするかどうかの性的自由・性的自己決定権と、性的な姿態を他の機会に他人に見られないという性的自由・性的自己決定権は別のものであり、仮に、性交の相手方との間で前者の侵害をめぐって事後にトラプルになるおそれがあるとしても、後者を侵害する撮影行為をして証拠を保全するような方法が許容されるものではなく、そもそも、撮影行為の動機• 目的が社会通念上正当なものとはいえないこと
から、「正当な理由」があるとはいえないと考えられる。】