load

薬院法律事務所

刑事弁護

成人した娘が万引きを繰り返している場合、親としてどう対応すべきか


2026年06月12日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、成人した娘が万引きを繰り返しています。

以前にも店舗で万引きをして、家族で謝罪し、商品代を支払ったことがあります。その時は、本人も「もうしない」と泣いて謝っていました。

しかし、また万引きで警察から連絡が来ました。本人は社会人ですが、実家で暮らしています。仕事もしていますし、お金が全くないわけではありません。なぜ万引きをするのか、親としても理解できません。

親として、どう対応すればよいでしょうか。今回もすぐに店に謝りに行って、商品代を払えばよいのでしょうか。刑事事件として弁護士に相談すべきでしょうか。

A、成人した娘さんが万引きを繰り返している場合、親御さんだけで抱え込むべきではありません。早めに刑事事件に詳しい弁護士へ相談し、必要に応じて医療機関、カウンセリング、家族支援などの第三者を入れるべきです。

万引きは、法律上は窃盗罪です。成人であれば、刑事責任を負うのは本人です。親が代わりに責任を負うわけではありません。

しかし、現実には、親御さんが被害店舗への対応、警察対応、弁護士費用、被害弁償、生活環境の調整、再発防止に関与することが多いです。

ここで重要なのは、「親が代わりに尻拭いすること」と「本人が再発しないように支えること」は違うという点です。

毎回、親がすぐに謝りに行き、商品代を払い、本人が本当の原因を見ないまま終わらせると、本人にとっては「また何とかなる」という構造が残ることがあります。それでは再発防止になりません。

一方で、本人をただ責めても、やめられるとは限りません。

成人した娘さんが万引きを繰り返している場合には、単なる出来心ではなく、窃盗症、強いストレス、摂食障害、買い物依存、孤立、精神的不調、認知の偏り、生活上の行き詰まりなどが背景にあることがあります。

もちろん、病気だから許されるという話ではありません。万引きには被害者がいます。被害店舗への謝罪・被害弁償・示談交渉は重要です。

しかし、つまずきの原因を取り除かなければ、また同じことが起きる可能性があります。

したがって、親としては、

・事実を正確に確認する
・嘘や証拠隠滅に協力しない
・被害店舗へ直接押しかけない
・弁護士を通じて被害弁償・示談交渉を検討する
・本人の同意を得て弁護士に依頼する
・必要に応じて医療機関やカウンセリングにつなぐ
・家族として何を支援し、何をしないかの境界線を決める
・再発防止策を本人と一緒に具体化する

ことが重要です。

 

【解説】

 

1 成人した娘の万引きは、親の事件ではなく本人の刑事事件です

 

まず確認すべきことは、成人した娘さんの万引きは、親御さんの事件ではなく、本人の刑事事件だということです。

万引きは、法律上は窃盗罪です。

成人している場合、刑事責任を負うのは本人です。親御さんが代わりに処罰されるわけではありません。

もっとも、本人が実家で暮らしている場合、親御さんが身元引受人になったり、被害弁償を立て替えたり、弁護士費用を出したり、通院やカウンセリングに付き添ったりすることがあります。

つまり、法的には本人の事件ですが、再発防止のためには家族の関与が必要になることがあります。

ここを分けて考える必要があります。

親がすべてを背負う必要はありません。
しかし、本人任せにして放置すればよいというものでもありません。

 

2 繰り返している場合、「今回だけ」と考えてはいけません

 

初めての万引きであれば、本人も家族も「今回だけの出来心」と考えがちです。

しかし、複数回の万引きがある場合には、「今回だけ」と考えるべきではありません。

特に、次のような場合には注意が必要です。

・過去にも店舗で捕まったことがある
・家族が知らない余罪がありそうである
・同じような商品を繰り返し盗んでいる
・お金があるのに盗んでいる
・盗んだ物を使っていない
・盗んだ後に隠す、捨てる、ため込む
・本人が「なぜ盗んだのか分からない」と言う
・「もうしない」と言いながら繰り返している
・摂食障害、過食、買い物依存、ギャンブル、借金、精神的不調がある
・ストレスが強い時期に万引きが起きている

このような場合、単に叱るだけ、商品代を払うだけ、反省文を書かせるだけでは不十分なことがあります。

刑事事件としての対応と、再発防止のための生活・心理面の対応を並行して考える必要があります。

 

3 親がすぐに店へ謝りに行けばよいとは限りません

 

親御さんとしては、被害店舗にすぐ謝りに行きたい、商品代を払いたいと思うでしょう。

その気持ちは自然です。

しかし、本人や家族が直接店舗へ行くことが、常に適切とは限りません。

被害店舗からすると、加害者本人や家族が突然来ること自体が負担になることがあります。店舗側には、会社方針として示談に応じない、個別対応しない、警察に任せるという場合もあります。

また、親御さんが「何とか警察沙汰にしないでください」と強く頼むと、口止めや圧力と受け取られる危険もあります。

被害店舗への謝罪や被害弁償は重要です。しかし、進め方を誤ると逆効果になることがあります。

弁護士が入れば、店舗側の意向を確認し、謝罪、被害弁償、示談、今後の立入禁止、接触禁止などを適切な形で申し入れることができます。

特に、既に警察が関与している場合には、本人や家族が直接店舗へ動く前に、弁護士へ相談すべきです。

 

4 被害弁償は重要だが、「親が払って終わり」にしてはいけません

 

万引き事件では、被害弁償が重要です。

商品が返還されていても、店舗側には警備、従業員対応、警察対応、防犯体制などの負担があります。被害品の状態によっては商品として販売できないこともあります。

したがって、被害弁償や示談交渉は、不起訴、罰金、正式裁判回避などに影響することがあります。

しかし、親御さんが毎回すぐにお金を払って終わらせるだけでは、再発防止になりません。

重要なのは、本人が自分の問題として引き受けることです。

たとえば、

・本人が謝罪文を書く
・本人が被害額を把握する
・本人が可能な範囲で弁償原資を負担する
・親が立て替える場合でも、本人と返済計画を決める
・本人が再発防止策に取り組むことを弁償支援の条件にする
・通院、カウンセリング、家計管理、買い物ルールを決める

といった対応が考えられます。

親が支えることは重要です。
しかし、本人の責任を全て親が引き取ってしまうと、本人が変わる機会を失うことがあります。

 

5 親がしてはいけないこと

 

成人した娘さんの万引き事件で、親御さんがしてはいけないことがあります。

・店舗に強く口止めを求める
・警察に虚偽説明をする
・娘に「やっていないと言いなさい」と言う
・防犯カメラに映っていないはずだと否認を勧める
・盗んだ物を隠す、捨てる、返したふりをする
・余罪について口裏合わせをする
・本人の同意なく、本人名義の書面を作成する
・会社や家族に虚偽説明をする
・毎回すぐに弁償だけして、原因を見ない
・本人を罵倒し、追い詰めるだけで終わる
・本人の生活を全て監視し、かえって嘘を増やす

証拠隠滅や口裏合わせに関与すると、親御さん自身が問題になる可能性もあります。

また、本人を追い詰めすぎると、本人が本当のことを話さなくなり、かえって再発防止が難しくなります。

親としては、怒りや不安があるのは当然です。しかし、対応は冷静に組み立てる必要があります。

 

6 本人が成人している場合、弁護士に依頼するには本人の意思が重要です

 

成人した娘さんの事件では、親御さんが弁護士に相談することは可能です。

しかし、弁護士が本人の代理人として活動するには、原則として本人の意思確認が必要です。

親御さんが弁護士費用を出すことはあります。
親御さんが事情を説明することもあります。
親御さんが資料を集めることもあります。
親御さんが身元引受人になることもあります。

しかし、本人が弁護士との面談を拒否し、弁護人として依頼する意思を示さない場合、弁護士が本人の代理人として勝手に活動することはできません。

したがって、親御さんとしては、まず本人に、

「責めるためではなく、これ以上悪くしないために弁護士に相談しよう」
「お店への対応も、警察への対応も、専門家に相談して進めよう」
「親が全部代わりに払って終わらせるのではなく、あなた自身が立て直すために相談しよう」

と伝えることが重要です。

本人が相談を拒否する場合でも、親御さんだけで事前相談を行い、どのように本人に話すべきか、どのような対応が考えられるかを確認することはできます。

 

7 万引きを繰り返す背景を見なければ、再発することがあります

 

万引きを繰り返す場合、背景に何があるのかを見る必要があります。

もちろん、万引きは犯罪です。被害店舗があります。本人が責任を負うべきことです。

しかし、責めるだけでは再発防止にならないことがあります。

背景には、たとえば次のような事情があることがあります。

・強いストレス
・孤立
・家庭内の葛藤
・職場での問題
・摂食障害
・過食や拒食
・買い物依存
・うつ、不安、睡眠障害
・発達特性
・認知機能の問題
・更年期や体調変化
・借金や家計不安
・自尊心の低下
・怒りや寂しさの処理困難
・衝動性の問題
・窃盗症、いわゆるクレプトマニア

ただし、万引きを繰り返す人が全て窃盗症というわけではありません。医学的な診断は医師等の専門家が行うべきものです。

弁護士が安易に「病気だから仕方ない」と決めつけるべきでもありません。

大事なのは、刑事事件としての責任を軽く見るのではなく、再発防止のために原因を具体的に見ていくことです。

 

8 窃盗症が疑われる場合

 

窃盗症、いわゆるクレプトマニアが疑われる場合には、医療機関や専門的支援につなぐことを検討すべきです。

窃盗症が疑われる場合には、次のような特徴が見られることがあります。

・お金があるのに盗む
・必要のない物を盗む
・盗んだ物を使わない
・盗む前に強い緊張感がある
・盗んだ直後に一時的な解放感がある
・後から強い後悔や自己嫌悪がある
・「もうしない」と思っても繰り返す
・摂食障害や過食、買い物依存などがある
・家族にも理由を説明できない

もっとも、これはあくまで一般的な説明です。実際に窃盗症かどうかは、専門家の判断が必要です。

窃盗症が疑われる場合でも、「病気だから無罪になる」「処罰されない」と考えるべきではありません。

むしろ、刑事事件としての責任を受け止めたうえで、専門的支援を受け、再発防止策を具体化することが重要です。

 

9 再発防止策は、生活の中に落とし込む必要があります

 

再発防止策は、「もうしません」という決意だけでは足りません。

生活の中で、実際に万引きしにくい仕組みを作る必要があります。

たとえば、次のような方法が考えられます。

・一人で店舗に行かない
・セルフレジを使わない
・大きなバッグを持って入店しない
・特定の店舗に近づかない
・ストレスが強い日は買い物に行かない
・衝動が出たら店舗から出る
・通院やカウンセリングを継続する
・日記や記録をつける
・借金や家計の問題を整理する
・必要に応じて仕事や生活環境を見直す

これらは、本人の尊厳を奪うための監視ではありません。

本人が再発しないための環境調整です。

ただし、成人した本人に対して、親が一方的にルールを押し付けるだけではうまくいきません。本人と話し合い、実行可能な形にする必要があります。

 

10 刑事事件としての対応

 

成人した娘さんが万引きで警察から呼び出された場合、刑事事件としては次の対応が重要です。

・事実関係の確認
・余罪の有無の確認
・警察の取調べへの対応
・供述調書の確認
・被害店舗への謝罪・被害弁償・示談交渉
・不起訴を目指すための資料作成
・再発防止策の具体化
・家族の監督書、陳述書の作成
・必要に応じた医療機関やカウンセリングへの接続
・検察官への意見書提出
・正式裁判になった場合の情状弁護

万引きを繰り返している場合、初犯よりも不起訴や軽い処分が難しくなることがあります。

過去に微罪処分、前歴、罰金、執行猶予がある場合には、さらに慎重な対応が必要です。

特に、執行猶予中の再犯や、同種前科がある場合には、実刑のリスクも問題になります。

だからこそ、早期に弁護士へ相談し、被害回復と再発防止を形にする必要があります。

 

11 親が身元引受人になる場合

 

万引き事件では、親御さんが身元引受人になることがあります。

身元引受人になる場合には、単に「今後は監督します」と書くだけでは不十分です。

具体的に何をするのかを示す必要があります。

たとえば、

・本人と同居しているか
・買い物の方法をどう見直すか
・通院やカウンセリングにどう関与するか
・本人と定期的に話し合うか
・家計や借金をどう管理するか
・ストレスが強い時に誰へ相談するか
・再発の兆候があった時にどう対応するか
・店舗への立入制限をどう守るか

といった内容です。

ただし、親が全てを管理する形にすると、本人の自立を損なうこともあります。

大事なのは、本人が自分の問題として向き合いながら、必要な部分で家族が支える形を作ることです。

 

12 親自身も支援を受けるべきです

 

成人した娘さんが万引きを繰り返している場合、親御さんも大きな負担を抱えます。

怒り、恥ずかしさ、不安、罪悪感、疲労、将来への心配が重なります。

「育て方が悪かったのか」
「なぜこんなことをするのか」
「また警察から連絡が来たらどうしよう」
「近所や職場に知られたらどうしよう」

と悩むことがあります。

しかし、親御さんが一人で抱え込むと、冷静な対応が難しくなります。

弁護士、医療機関、カウンセラー、家族会、依存症支援機関など、第三者の支援を使うことも考えるべきです。

本人だけでなく、家族も支援を受けることが、結果として再発防止につながることがあります。

 

13 親としての基本方針

 

成人した娘さんが万引きを繰り返している場合、親としての基本方針は次のとおりです。

第1に、隠さないこと。
事件をなかったことにしようとしないことです。

第2に、嘘をつかないこと。
警察、店舗、弁護士、家族に対して虚偽説明をしないことです。

第3に、すぐに尻拭いだけで終わらせないこと。
弁償は重要ですが、それだけでは再発防止になりません。

第4に、責めないこと。
本人がなぜ繰り返すのかを見なければなりません。

第5に、第三者を入れること。
弁護士、医療機関、カウンセリング、支援機関を使うべきです。

第6に、本人に責任を引き受けさせること。
親が全部代わりに背負うのではなく、本人が謝罪、弁償、再発防止に取り組む必要があります。

第7に、親としての限界を決めること。
支援はするが、嘘や証拠隠滅には協力しない。弁償する場合でも条件を決める。本人が支援を拒む場合には、親も専門家に相談する。こうした境界線が必要です。

 

まとめ

 

成人した娘さんが万引きを繰り返している場合、親御さんだけで解決しようとしてはいけません。

万引きは窃盗罪です。成人であれば、刑事責任を負うのは本人です。

しかし、再発防止のためには、家族の関与が重要になることがあります。

大切なのは、親が代わりに尻拭いをすることではありません。

本人が自分の問題として向き合い、被害店舗への謝罪・被害弁償・示談交渉を行い、なぜ万引きを繰り返しているのかを整理し、再発防止策を生活の中に作ることです。

そのためには、

・弁護士への相談
・被害店舗への適切な対応
・警察・検察への対応
・余罪の整理
・医療機関やカウンセリングへの接続
・家族の関与
・買い物ルールの見直し
・ストレスや生活環境の調整

が必要になります。

親としては、隠さない。嘘をつかない。責めるだけで終わらせない。支援と尻拭いを区別する。第三者を入れる。

この方針が重要です。

成人した娘さんが万引きを繰り返している場合には、できるだけ早く、万引き事件と再犯防止に詳しい弁護士へ相談してください。

 

関連する当事務所の記事

万引き事件弁護要領(在宅事件)

一人で出来る、万引き依存からの脱却方法(万引き、刑事弁護)

万引き事件、初犯で起訴猶予になる方法(万引き、刑事弁護)

文献紹介 愛甲修子「愛着障害はどうやったら治せるのか?」そだちの科学 no.33「愛着とその障害」 (2019年10月号)77-82頁(万引き、刑事弁護)

万引き事件で執行猶予中の再犯で再度の執行猶予を得る方法