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薬院法律事務所

刑事弁護

家族が薬物事件を起こした場合、責める前に考えるべきこと


2026年06月12日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、家族が薬物事件を起こしました。

警察から連絡があり、息子が大麻を持っていた、あるいは薬物を使用した疑いで取調べを受けていると言われました。場合によっては逮捕されるかもしれないとも言われています。

本人は「もう二度としない」「友人に誘われただけ」と言っています。しかし、スマートフォンには薬物を使う友人とのやり取りがあるようです。親としては、怒りもありますし、情けない気持ちもあります。なぜそんなことをしたのかと責めたくなります。

家族として、まず何を考えるべきでしょうか。

A、家族が薬物事件を起こした場合、責める前に、まず「刑事事件としてどう対応するか」と「薬物から離れるために何が必要か」を分けて考えるべきです。

もちろん、薬物事件は重大です。大麻、覚醒剤、麻薬等の違法薬物を所持・使用することは、刑事事件になります。家族が怒り、悲しみ、失望するのは当然です。

しかし、家族が感情的に責めるだけでは、刑事事件としても、再犯防止としても、よい結果につながらないことがあります。

薬物事件では、本人が「もうしません」と言っていても、それだけでは不十分な場合があります。薬物を使う友人関係、SNSでの入手経路、孤立、ストレス、精神的不調、生活環境、飲酒や他の依存傾向など、薬物使用につながった原因を具体的に整理する必要があります。

また、家族がしてはいけないこともあります。

薬物や使用器具を捨てる。
スマートフォンの履歴を消す。
使用仲間と口裏合わせをする。
警察に嘘をつくよう本人に言う。
本人を責めすぎて、本当のことを話せなくする。

これらは、逮捕・勾留・処分に悪影響を与えることがあります。

家族として大事なのは、本人をかばって事件を隠すことではありません。
また、本人を責めて突き放すことだけでもありません。

本人に責任を引き受けさせながら、薬物から離れるための環境を作ることです。

そのためには、早期に弁護士に相談し、必要に応じて、医療機関、精神保健福祉センター、麻薬取締部の再乱用防止支援、カウンセリング、自助グループなどの専門的支援につなぐことを検討すべきです。

※初回の違法薬物自己使用事件で十分な再犯予防対策をとらず、結果として再犯をして刑務所で服役することになった事例は多数存在します。初犯こそ十分な対応が必要です。

 

【解説】

 

1 家族が最初に確認すべきこと

 

家族が薬物事件を起こした場合、まず確認すべきことは、感情論ではなく事実関係です。

次の点を整理してください。

・本人は逮捕されているのか、在宅で取調べを受けているのか
・問題になっている薬物は何か
・大麻、覚醒剤、麻薬、向精神薬、危険ドラッグ等のどれか
・所持なのか、使用なのか、譲受けなのか、譲渡なのか
・自己使用目的なのか、営利目的や譲渡が疑われているのか
・所持量はどの程度か
・初犯なのか、前歴・前科があるのか
・同居先や実家に家宅捜索が入る可能性があるか
・スマートフォンやパソコンが押収されているか
・大学、勤務先、アルバイト先に知られる可能性があるか
・20歳未満の少年事件なのか、20歳以上の成人事件なのか
・本人が薬物をどこから入手したのか
・使用仲間がいるのか
・本人が薬物使用を軽く見ていないか

薬物事件では、単純な自己使用・少量所持なのか、譲渡・営利目的・組織的関与があるのかで、処分の見通しが大きく変わります。

家族としては、まず事実を落ち着いて確認する必要があります。

 

2 本人を責めるだけでは、本当のことを話さなくなる

 

家族が薬物事件を起こした場合、本人を責めたくなるのは当然です。

「なぜそんなことをしたのか」
「家族に迷惑をかけてどうするのか」
「もう信用できない」
「大学や会社はどうするのか」
「将来を台無しにするつもりか」

そう言いたくなると思います。

しかし、責めるだけでは、本人が本当のことを話さなくなることがあります。

薬物事件では、本人が家族に言いにくい事情を抱えていることがあります。

・実は以前から使っていた
・使用仲間がいる
・SNSで入手していた
・借金して購入していた
・大麻以外の薬物にも接触していた
・大学や職場で孤立していた
・精神的につらい状態だった
・家族に言えない生活上の問題があった

これらは、本人が責められると思うほど隠します。

しかし、弁護方針や再犯防止策を立てるには、本当のことを知る必要があります。

家族は、本人の行為を許す必要はありません。
しかし、まずは事実を話せる状況を作ることが重要です。

 

3 絶対にしてはいけないこと

 

家族が薬物事件を起こした場合、家族が焦ってしてはいけないことがあります。

次のことは避けてください。

・薬物を捨てる
・使用器具を捨てる
・スマートフォンやSNSの履歴を消す
・アカウントを削除する
・友人や売人に連絡する
・使用仲間と口裏合わせをする
・警察に嘘をつくよう本人に言う
・本人に「知らないと言いなさい」と言う
・家族が勝手に警察へ不正確な説明をする
・本人の部屋を整理して証拠をなくす
・学校や勤務先に事実と違う説明をする
・弁護士に不利な事情を隠す

これらは証拠隠滅や口裏合わせと見られる可能性があります。

逮捕、勾留、勾留延長、保釈、処分、判決に悪影響を与えることがあります。

家族が本人を助けようとしてしたことが、かえって本人を不利にすることがあります。

薬物事件では、「隠す」のではなく、「正しく対応する」ことが重要です。

 

4 刑事事件としての対応

 

薬物事件では、刑事事件としての対応が必要です。

家族がすべきことは、まず弁護士に相談することです。

弁護士が確認すべきことは、たとえば次の点です。

・逮捕・勾留を避けられるか
・勾留された場合、準抗告や保釈を検討できるか
・違法捜査の問題がないか
・職務質問、所持品検査、採尿、捜索差押えの手続に問題がないか
・本人が何を認め、何を争うべきか
・入手経路についてどう対応するか
・スマートフォンの任意提出や解析にどう対応するか
・初犯か再犯か
・起訴前に不起訴を目指す余地があるか
・起訴後に執行猶予を得るために何を準備すべきか
・薬物から離れるための具体策をどう資料化するか

薬物事件では、初犯・少量・自己使用目的であれば、執行猶予付き判決が見込まれることがあります。

しかし、それだけで安心してはいけません。

問題は、今回刑務所に行くかどうかだけではありません。
次に同じことをしないかどうかです。

 

5 家族が身元引受人になる場合

 

逮捕・勾留されている薬物事件では、家族が身元引受人になることがあります。

身元引受人になる場合、単に「監督します」と言うだけでは不十分です。

具体的に何をするのかを示す必要があります。

たとえば、

・本人と同居するのか
・下宿先から実家に戻すのか
・使用仲間との関係をどう断つのか
・スマートフォンやSNSの使い方をどう見直すのか
・通院や相談に誰が同行するのか
・再使用したくなった時に誰に連絡するのか
・薬物に関する物や連絡先をどう整理するのか
・仕事、大学、アルバイトをどう立て直すのか
・本人の生活リズムをどう整えるのか
・家族自身が相談先を持つのか

こうした内容を具体的に準備することで、勾留回避、保釈、情状弁護、再犯防止の資料になります。

 

6 薬物から離れるには、本人の意思だけでは足りないことがあります

 

薬物事件でよくあるのは、本人が「もう二度としない」と言うことです。

もちろん、その言葉自体が嘘とは限りません。本人は本気でそう思っていることが多いです。

しかし、意思だけで薬物から離れられるとは限りません。

薬物を使う人間関係が残っている。
SNSで入手先とつながっている。
ストレスが強い。
孤立している。
睡眠や生活リズムが崩れている。
精神的な不調がある。
薬物の危険性を軽く見ている。

このような状態のまま、本人の意思だけに頼るのは危険です。

薬物から離れるためには、環境を変える必要があります。

 

7 入手経路と使用仲間を断つ

 

薬物事件で最も重要な再犯防止策の一つは、入手経路と使用仲間を断つことです。

具体的には、

・売人や入手先の連絡先を遮断する
・薬物を使う友人関係を断つ
・SNSや通信アプリの使い方を見直す
・大麻や薬物関連のアカウントを見ない
・使用していた場所に近づかない
・薬物を使うイベントや集まりに行かない
・一人暮らしが危険なら実家に戻る
・大学や職場の人間関係を見直す
・必要に応じてスマートフォンの利用ルールを作る

といった対応です。

家族としては、「友人と付き合うな」と一方的に怒るだけではなく、なぜその交友関係が危険なのか、どうやって距離を取るのか、距離を取った後に孤立しないようどう支えるのかを考える必要があります。

 

8 専門機関につなぐ

 

薬物から離れるには、弁護士だけでは足りません。

必要に応じて、専門機関につなぐ必要があります。

相談先としては、たとえば次のようなものがあります。

・精神科
・心療内科
・依存症専門医療機関
・精神保健福祉センター
・保健所
・麻薬取締部の再乱用防止支援
・カウンセリング
・自助グループ
・回復支援施設
・大学の学生相談室
・職場の産業医、相談窓口

ただし、本人の状態によって適切な支援先は変わります。

いきなり集団プログラムに行くことに抵抗がある人もいます。
医療機関に行くことを嫌がる人もいます。
家族に付き添われることに反発する人もいます。

大事なのは、形式的に一度だけ行くことではありません。

本人が継続できる支援につながることです。

 

9 家族自身も相談先を持つ

 

薬物事件では、家族も大きな負担を受けます。

家族は、怒り、不安、恥、罪悪感、疲労を抱えます。

「育て方が悪かったのではないか」
「なぜ気づけなかったのか」
「また使ったらどうしよう」
「警察や職場、学校にどう説明すればよいのか」
「本人を信じてよいのか」
「監視すべきなのか、突き放すべきなのか」

と悩むことがあります。

しかし、家族だけで抱え込むと、対応が極端になりがちです。

怒りすぎる。
過度にかばう。
本人の嘘を信じすぎる。
全てを管理しようとする。
家族自身が疲弊する。

こうなると、本人の回復にも悪影響が出ます。

薬物問題では、本人だけでなく、家族も相談先を持つことが重要です。

家族相談、精神保健福祉センター、麻薬取締部の家族相談、医療機関、カウンセリング、家族会などを利用することも考えるべきです。

 

10 責めることと責任を取らせることは違います

 

家族が薬物事件を起こした場合、家族は本人を責めたくなります。

しかし、責めることと、責任を取らせることは違います。

責めるだけでは、本人は萎縮したり、嘘をついたり、開き直ったりすることがあります。

一方、責任を取らせるとは、

・警察や裁判で嘘をつかない
・自分の行為を認める
・薬物を使った原因を考える
・入手経路や使用仲間を断つ
・家族に必要な範囲で説明する
・専門機関に相談する
・再犯防止策を実行する
・大学や職場への対応を弁護士と整理する
・裁判後も支援を継続する

ということです。

家族が目指すべきなのは、本人を壊すことではありません。

本人が自分の責任を引き受け、薬物から離れる行動を取るように支えることです。

 

11 「かばう」と「支える」は違う

 

家族は、本人を守りたいと思います。

しかし、かばうことと支えることは違います。

かばうとは、

・薬物を隠す
・警察に嘘をつく
・本人の責任をなかったことにする
・本人の代わりに全て処理する
・本人に何も変えさせない
・家族が全部尻拭いする

ことです。

これは、結果的に本人のためになりません。

支えるとは、

・弁護士に相談する
・事実を整理する
・身元引受人になる
・専門機関につなぐ
・使用仲間と離れる環境を作る
・本人が再発防止策を実行するよう関与する
・家族自身も相談先を持つ
・本人が嘘をついた時には見逃さない
・本人の責任を本人に引き受けさせる

ことです。

薬物事件では、家族が「支える」方向に立つことが重要です。

 

12 大学・勤務先への対応

 

家族が薬物事件を起こした場合、大学や勤務先への対応も問題になります。

大学生であれば、停学、退学、実習、留学、奨学金、就職活動への影響が問題になります。

会社員であれば、懲戒処分、退職、休職、配置転換、資格、報道、職場発覚が問題になります。

大学や勤務先に必ず報告すべきかどうかは、事案によります。

逮捕、報道、家宅捜索、服務規程、学則、職務関連性、資格への影響によって判断が変わります。

ただし、報告する場合でも、事実関係が整理されていない段階で、不正確な説明をしてはいけません。

「薬物を使ったことは事実だが、現在捜査中である」
「弁護士に相談し、刑事手続に対応している」
「薬物から離れるための専門機関への相談を始めている」
「家族が監督体制を作っている」

というように、事実と対応状況を整理して説明する必要があります。

大学・勤務先対応は、弁護士と相談して慎重に進めるべきです。

 

13 弁護士に相談すべきタイミング

 

家族が薬物事件を起こした場合、次の段階では早急に弁護士へ相談してください。

・警察から家族に連絡が来た
・家族が逮捕された
・家宅捜索を受けた
・スマートフォンを押収された
・薬物の所持や使用を本人が認めている
・本人が詳しい事情を話さない
・本人が薬物を軽く見ている
・使用仲間や入手先が残っている
・20歳未満の少年事件である
・大学や勤務先への影響が不安である
・国選弁護人がついているが、家族として不安がある
・保釈や身元引受けを検討したい
・薬物から離れる支援先を探したい
・再犯が心配である

薬物事件は、刑事手続だけで終わらせるべきではありません。

裁判が終わった後の生活こそが重要です。

 

まとめ

 

家族が薬物事件を起こした場合、家族が責めたくなるのは当然です。

しかし、責める前に考えるべきことがあります。

・まず事実関係を確認すること
・薬物や証拠を隠さないこと
・警察や弁護士に嘘をつかないこと
・本人を責めすぎて本当のことを話せなくしないこと
・刑事事件としての対応を早期に弁護士へ相談すること
・入手経路と使用仲間を断つこと
・専門機関につなぐこと
・家族自身も相談先を持つこと
・本人をかばうのではなく、責任を引き受けさせながら支えること
・裁判後も続く再犯防止策を作ること

薬物事件で大事なのは、今回の処分だけではありません。

薬物から離れられるかどうかです。

初犯で執行猶予になったとしても、使用仲間や入手経路が残っていれば、再犯する危険があります。再犯すれば、次は実刑になる可能性があります。

家族だけで抱え込むべきではありません。
本人の意思だけに任せるべきでもありません。
弁護士、医療機関、精神保健福祉センター、麻薬取締部の再乱用防止支援、カウンセリング、自助グループなど、第三者の支援を使うべきです。

家族が薬物事件を起こした場合には、責める前に、まず早めに弁護士へ相談してください。

 

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