書籍紹介 原田隆之編著『公認心理師ベーシック講座 司法・犯罪心理学』(万引き、盗撮、刑事弁護)
2024年11月04日刑事弁護
弁護士が刑事弁護業務に取り組むにあたっては、「罪を犯した人」の心理について学ぶ必要があります。これは、自白事件だけではなく否認事件においても大事なことで、「こういう犯罪となるのはおかしい」という直感が働くようになります。とはいえ、犯罪心理学の本は信憑性がいまいちなものも多いので、しっかりとした研究に基づいた、ベーシックなもので学ばなければなりません。本書は新人の刑事弁護人から、ベテランの刑事弁護人までお勧めできる本です。
原田隆之編著『公認心理師ベーシック講座 司法・犯罪心理学』(講談社,2022年10月)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000325626
重要と思った記述を引用します。
35頁
【このように,科学的エビデンスから見ても,加害者臨床では要支援者の個人情報の取り扱いは,通常以上に厳重かつ慎重になされるべきである。
しかしながら,司法・犯罪臨床で守秘義務の問題に対して心理師が葛藤を抱える場面は少なくない。例えば,治療中に対象者が再犯に至ってしまった場合である。残念ながら,犯罪行動が薬物依存や窃盗症,パラフィリア障害などの嗜癖的様相をもっている場合,治療中の再犯は, しばしば起こりうる。その結果,対象者が逮捕され刑事事件として立件されると,警察や司法機関から,本人の治療内容や症状に関する照会を依頼されることがある。これは,先に説明した守秘義務が解除される一例の「法令行為等」に該当するだろう。一方,ただちに自傷•他害,あるいは生命に関わる事態につながらないケースで,治療内容などを他機関に提供する必要がある場合は,その必要性を本人へ説明し,同意を得たうえで行われることが望ましい。】