私立高校に通学する高校生の息子が、学内で盗撮をして退学を求められているという相談(盗撮、少年事件)
2024年09月23日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私の息子は、福岡県の私立高校に通う高校二年生です。昨日、学校から連絡があり、息子が学校内で同級生のスカートの中を盗撮して、女の子にバレて捕まったそうです。今の時期からの転校が難しいので、出来ればそのまま学校を卒業させたいのですが、退学処分になってしまうでしょうか。
A、現在警察に通報されていないのであれば、まず行うべき事は被害者への謝罪と示談交渉です。被害者が赦した場合には退学処分を回避できる可能性はありますが、本人が復学することを望まない場合もあり得ます。警察に通報される可能性も考えて、早急に弁護士をつけるべきでしょう。
【解説】
近時、学生が校内で盗撮行為をする事例が増えているようです。「軽い気持ち」でするのかもしれませんが、下着等の盗撮は、性的姿態等撮影罪になり、犯罪が成立します。学校からも退学処分を含む重大な処分がなされる可能性がある犯罪です。「被害者の保護」という側面もありますので、学外での盗撮行為より重い処分が正当化されます。
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000067
(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
法務省 性犯罪関係の法改正等 Q&A 令和5年7月
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html
トップ > 裁判手続案内 > 裁判所が扱う事件 > 少年事件
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_syonen/index.html
【参考文献】
性的姿態等撮影罪制定前の文献ですが、中学3年生の生徒がスマートフォンで更衣中の女子生徒を盗撮し、友達に動画を拡散したという架空の事例について、警察への通報については謙抑的に考えるべきという論考があります。学校側との折衝にあたっては参考になるでしょう。
三坂彰彦「教育問題法律相談No.504 校内での生徒の盗撮行為と対応の留意点」(週間教育資料2019年6月10日号)
【以上のように学校内での盗撮行為は犯罪に該当するものですが、生徒がこうした盗撮行為を行ったことが判明した場合に、学校が、直ちに犯罪として警察に相談したり、通報したりすることについては慎重な検討が必要で、むしろ、まずは、当該生徒に対する学校としての教育上の指導をし、生徒の反省状況を確認する段階を先行させることが求められます】
※参考記事
須藤明「家庭裁判所調査官の実務-”家裁送致”のその先で-社会調査と心理検査」捜査研究2022年10月号(864号)32頁
※私は、全国各地の刑事事件の相談・受任をしております。本記事が、弁護士選びの参考になれば幸いです。