路上でコスプレをしている女性を撮影したら、盗撮だといわれて恐喝されたという相談(刑事弁護、犯罪被害者)
2024年12月02日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市に住む20代男性です。先日、深夜に天神の繁華街を歩いていたところ、若い女性が露出度の高いゲームのキャラクターのコスプレをしているのを見かけました。凄く好みだったので、スマホを起動して撮影していたところ、撮影されていることに気がついた女性が近づいてきて、「盗撮しただろ」と言われました。ごめんなさいといったのですが、許してもらえず、彼氏らしき人が来て、身分証をとられて、示談金を払うように言われました。手持ちのお金がないのでATMにいって30万円を引き出して下ろして渡したのですが、身分証明書の写真も撮られていて、悪用されるのではないかと不安です。でも警察に届けたら自分が犯罪者にされるのではないか怖くて警察には届けられません。
A、女性が16歳未満でなければ、性的姿態等撮影罪は成立しないものと思われます。仮に16歳未満であっても、明らかに幼いといったことがなければ「故意」が欠けるとされることが多いでしょう。盗撮ハンターの可能性もありますので、弁護士に面談相談の上、警察に被害届けを出すことが考えられます。
【解説】
無断撮影行為そのものが適切ではないことは前提として、ご質問の事例の場合は、女性が「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出」しているため、性的姿態等撮影罪は原則として成立しないものと考えられます。つきまとって撮影した場合などには迷惑行為防止条例違反の成立が考えられますが、それにあたるかどうかは具体的な事案によるのでわかりません。肖像権侵害ということで民事上の損害賠償請求の問題となることはあり得ますが、仮に民法上違法とされる撮影行為であったとしても、金額が高すぎるように思います。内容からすると、最初から金銭を得ることを目的としていた可能性も考えられます。いずれにしても、個人情報が悪用される可能性も考えると、警察に相談に行くべきと思いますが…自身が犯罪者とされる危険性も存在しますので、まずは弁護士の面談相談を受けることをお勧めいたします。
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000067
(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
【参考文献】
浅沼雄介ほか「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律について(1)」法曹時報76巻2号(2024年2月号)23-122頁
52頁
【イ露出等による撮影対象からの除外
(7) 撮影行為の対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら性的な姿態を露出するなどした場合については、保護法益を放棄したと評価できると考えられる。
そこで、本項第1号から第3号までにおいては、「性的姿態等」から「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているもの」を除いた「対象性的姿態等」が処罰対象となる撮影行為の客体とされている。
これに対し、16歳未満の者は(そのうち13 歳以上16 歳未満の者については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者との関係では)、性的な姿態の撮影行為に応じるかどうかについて有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠け、保護法益の放棄ができないことから、本項第4号の撮影行為については、撮影対象者が自ら露出するなどしたものも含め、「性的姿態等」が処罰対象となる撮影行為の客体とされている。】