load

薬院法律事務所

刑事弁護

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第28回 軽犯罪法1条28号(軽犯罪法、刑事弁護)


2024年12月28日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は東京都内で暮らしている男性です。先日帰宅途中に凄く好みの女性を見かけて、ナンパできないだろうかと考えて10mほど離れて後ろをつけていきました。ところが10分ほど歩いていると、途中でその女性が立ち止まったので、私も立ち止まりました。10秒ほどすると、女性が走り出して立ち去ってしまいました。私がつけているのがバレたのではないかと思うのですが、犯罪として通報されないか心配しています。

A、どういうルートを通っていたかが問題です。例えば、実際に帰り道が同じであったということであれば、あなたの内心としては後をついていったのだとしても、「つきまとい」とはされないでしょう。しかし、自宅とは逆方向といったことであれば、軽犯罪法違反として立件される可能性があります。

 

 

【解説】

 

本日は、軽犯罪法第1条第28号「他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者」について解説します。

その趣旨は、「人の身辺に立ちふさがるなどの行為は、それ自体、人の行動の自由を妨げて不快感を与えるだけでなく、人の生命・身体・財産等に危害を加えるための準備行為である場合が多い。本号は、以上のような、人の行動の自由の保護と暴力行為の未然防止の観点から設けられたものと理解される」(稲田輝明・木谷明『軽犯罪法』平野龍一ほか編『注解特別刑法7 風俗・軽犯罪法編〔第2版〕』(青林書院,1988年1月)127頁)とされているところです。

この規定がつかわれるのは、女性へのつきまとい事例がほとんどだと思います。「前兆事案」として現在は女性・子どもに対するつきまといについては警察が早期対応をしています。繰り返す場合には迷惑行為防止条例やストーカー規制法で取締りがなされることもあります。

 

軽犯罪法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/

第一条左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十八 他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者

 

前兆事案の認知情報
更新日:2024年12月16日

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/jokyo_tokei/jokyo/zencho.html

「前兆事案」とは
子供と女性を対象とする性犯罪等の前兆とみられる声掛け、つきまとい、身体を掴む等の暴行等(刑罰法令に触れない程度のものも含む。)
不同意性交等、不同意わいせつ等の子供と女性を対象とする重大な性犯罪等に発展するおそれのある次の罪種

公然わいせつ、わいせつ物頒布(営利目的のみのものは除く。)
性的欲求に基づくと認められる住居侵入、着用中の衣類等の汚損及び損壊等
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
性的欲求に基づくと認められる住居等ののぞき見等の軽犯罪法違反
卑わい行為等の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反及び東京都青少年の健全な育成に関する条例違反

 

【参考文献】

 

伊藤榮樹原著・勝丸允啓改訂『軽犯罪法 新装第2版』(立花書房,2013年9月)193-194頁

【「つきまとう」とは, しつこく人の行動に追随することであるが,立ち塞がるほど相手方に接近する必要はない。尾行がその典型的な例である。通行人が不要だと言って断っているのに, しつこく追随して, わいせつ写真等を売りつけようとしたり,客引きをしたりする行為は, 「不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとう」の適例であろう (判例集に掲載されたものとしては,道路上で,通行中の人に対し「実演と映画を見ませんかと言いながら追随したケースを本号に当たるとしたものがある-東京高判昭36.8.3高刑集14巻6号387頁。)。歩行者や自転車に乗って行く者を自転車に乗って, あるいは,それらの者や自動車に乗って走行する者を自動車に乗って「つきまとう」ことも可能である。警察官や興信所の者が,職務上の必要から人を尾行するような行為も,本号の構成要件を充足する。

(中略)

これに対して,深夜たまたま帰宅方向が一緒であったため,先を歩く女性の背後を一定の距離をおいて歩くこととなり,結果的に当該女性に不安を覚えさせる結果になったとしても,それは,そもそも「つきまとった」とはいえないであろうから, ここでいう「不安を覚えさせるような仕方」にも当たらないであろう (101問175頁)。】

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3110

軽犯罪法違反事件の弁護要領・総論(軽犯罪法、刑事弁護)

軽犯罪法違反(つきまとい)で、不起訴にしてもらいたいという相談(軽犯罪法、刑事弁護)

性的姿態等撮影罪(未遂)と、迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)、軽犯罪法違反(つきまとい)の分水嶺