酒気帯び運転事件の標準的弁護要領※chatGPTo1pro作成(道路交通法違反、刑事弁護)
2025年01月25日刑事弁護
プロンプト
【それでは、次は酒気帯び運転についての質問です。依頼者は、前日に飲み会があり、二次会まで出席してビールやハイボールをジョッキで6杯ほど飲んだ40代男性、身長170cm、体重70kgです。深夜0時過ぎに解散して自宅に帰りました。その後、夜2時に寝て、朝7時に起きて自動車を運転して職場に向かったところ、警察から職務質問をされて呼気検査を受けて、0.15mg/L以上の呼気アルコール濃度が検出されました。依頼者は、「もう酒は抜けていると思っていた」といっており、酒気帯び運転での処罰と行政処分を避けたいといっています。どういう弁護方針をとるのか詳細(1万字以上)で丁寧に解説してください。】
以下に示す解説は、**「前日の深夜まで酒を飲んでいたが、翌朝になればアルコールが抜けていると思い込み、車を運転してしまった結果、酒気帯び運転(呼気中アルコール濃度0.15mg/L以上)で検挙された」**という事例を念頭に、弁護士が取り得る典型的な弁護方針や対応策を、できるだけ詳細(1万字以上)にわたって示したものです。本稿はあくまで一般的・典型的なケースを念頭に置いた解説であり、実際の事案では証拠関係や依頼者(被疑者・被告人)の置かれた状況、検察・裁判所・行政当局の運用姿勢などによって結論が変わり得ますので、具体的案件に当たっては個別の専門家に相談することが必要です。
第1章 事案概要と問題点の整理
1-1. 事案の前提
- 依頼者の属性
- 40代男性、身長170cm、体重70kg、一般的な体格。
- 前日に職場の仲間や友人との飲み会があり、一次会・二次会と参加してビールやハイボールをジョッキで6杯程度飲んでいる。
- 飲酒の時間帯
- 深夜0時頃まで飲み続けた後に解散し、帰宅。
- 帰宅後、深夜2時頃に就寝。
- 翌朝7時に起床したので、睡眠時間は約5時間ほど。
- 酒気帯び運転の発覚経緯
- 翌朝、自宅から自家用車で職場へ向かう途中に、警察官から職務質問を受けた。
- 呼気検査をされたところ、呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上(酒気帯び運転の基準値以上)を検出。
- 依頼者本人は「もう酒は抜けていると思った。まさか残っているとは思わなかった」と主張している。
- 依頼者の要望
- 刑事処分(罰金刑や略式命令、あるいは起訴されて正式裁判での有罪判決)をできるだけ回避したい。
- 免許停止や免許取消といった行政処分を避けたい、あるいは軽減したい。
- 仕事で車を使う可能性があるため、免許を失うと生活・生計に深刻な支障が出る。
1-2. 酒気帯び運転に関する法的概要
- 酒気帯び運転の定義(道路交通法)
- 道路交通法第117条の2の2 第1号や同法66条、第44条等に基づき、呼気1リットル中0.15mg以上のアルコール濃度が検出された状態で運転した場合、「酒気帯び運転」とみなされる。
- 本事例では明確に0.15mg/L以上が検出されているため、客観的には酒気帯び運転の構成要件に該当する。
- 法定刑・刑事罰
- 酒気帯び運転の法定刑は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が定められている(道路交通法117条の2の2第1号など)。
- 多くのケースでは略式手続きによる罰金処分(数十万円程度)が科されるのが一般的。
- ただし、事故の有無や過去の違反歴など情状次第で重い処分(実刑・懲役刑)になる可能性もある。特に再犯の場合は厳格化される傾向がある。
- 行政処分上の点数と免許への影響
- 酒気帯び運転が確定すると、呼気中アルコール濃度0.15mg以上0.25mg未満の場合で13点、0.25mg以上の場合は25点が加算される。
- 13点加算は通常、一発で免許停止90日。過去の累積点数や前歴の有無によっては取消もあり得る。
- 25点加算ならほぼ確実に免許取消(欠格期間2年)となる。
- 本件は「0.15mg/L以上」かつ具体的数値が0.25mg未満かどうかで処分が大きく変わる。
1-3. 本事案の特殊事情と争点
- 依頼者の主張:「抜けていると思った」
- いわゆる「翌日飲酒運転」や「残酒運転」と呼ばれるケース。
- 本人に「飲酒運転しよう」という故意はなく、「飲酒中には運転していないが、体内にアルコールが残っていることを自覚していなかった」という主張。
- 残留アルコールの計算や誤差
- アルコールの体内分解スピードは個人差が大きく、一概に「何時間空ければ運転可能」とは言い難い。
- 身長170cm、体重70kg、ビール・ハイボールをジョッキ6杯程度という量を考えれば、普通に考えて5時間睡眠では完全にアルコールが抜けていない可能性は十分にある。
- 弁護方針として「飲んだ量や体質、睡眠時間から考えて朝には残っていないと思っていた」という「誤信」(主観的な誤り)をどこまで法的に評価してもらえるかが焦点。
- 過去の違反歴や情状
- 依頼者が過去に飲酒運転の前科・前歴があるかどうか、あるいは速度超過など他の違反があるかどうかによって処分の重さが変化。
- 初犯であれば罰金の額や免許停止期間が短くなる可能性があるが、再犯ならさらに厳罰化が見込まれる。
- 処罰および行政処分の回避可能性
- 原則として、「呼気0.15mg/L以上で運転した事実」がはっきりしていれば、刑事処分や行政処分の回避は困難。
- ただし、測定方法や手続の適法性に不備がある場合、もしくは呼気検査結果への合理的疑いがある場合など、例外的に争える可能性もゼロではない。
- 弁護側としては「故意がなかった」として違法性を争うよりも、情状酌量を得る方向で軽減を目指すことが多い。
第2章 捜査段階での弁護方針
2-1. 依頼者からの事情聴取と証拠収集
- 詳細な飲酒状況の把握
- 依頼者の体質、飲酒開始・終了時間、アルコールの種類と飲酒量、食事の有無などを正確にヒアリング。
- 飲酒量については過小申告しがちなので注意。店のレシートやクレジットカード履歴、同席者の証言で裏付けを取れるとよい。
- 当日の体調や睡眠時間
- 深夜2時に寝て、朝7時に起きたというが、実際はベッドに入ったのが2時であっても入眠したのが3時という可能性もあり、より短い睡眠時間だったかもしれない。
- 弁護人は依頼者に再度確認し、客観的に矛盾のない説明をまとめる。
- 飲酒後の主観的感覚
- 「頭が痛かった」「だるさがあった」「アルコール臭い感じがした」など客観的に見て「残っているかもしれない兆候」があった場合、依頼者が気づくべきであったのでは、と指摘される可能性がある。
- 逆に「まったく酔いを感じず、普段通りに起きられた」ということであれば、本人の誤解に一定の説得力が出る。
- 職務質問の経緯・測定手続の適法性
- 警察官に呼び止められた理由(例えばふらついた運転があったか、またはランダムチェックだったのか)。
- 呼気検査機器の種類や測定状況、複数回測定したかどうか、測定値にブレはなかったか。
- 手続に何らかの違法・不備があれば、後に争点にできる可能性もある。
2-2. 警察・検察との折衝
- 否認か認めるか
- 「酒気帯び運転」の成立は、客観的に呼気0.15mg/Lが出ていればほぼ確定的。
- 「もう抜けていると思った」という主観的誤解は、「飲酒の故意がなかった」わけではなく、法律上は「アルコールが体内に残っている状態で運転した」事実があれば足りる。
- したがって、弁護士としては、あえて否認するよりも素直に事実を認めた上で情状を尽くす方が現実的かつ有利な処分を狙いやすい。
- 取り調べ対応の注意点
- 捜査官は「どうして飲酒状態が続いているのを認識しなかったのか」など、注意義務違反を追及してくる。
- 弁護士は依頼者に対し、「深酒からまだ5時間しか経っておらず、通常ならまだ残っていたはず」という点を追及される可能性があることを説明し、無用に嘘をつかないよう助言する。
- 取り調べで矛盾のある供述をすると、かえって悪質とみなされるリスクがある。
- 略式手続への流れ
- 酒気帯び運転の事件は、重大な被害事故がない場合、検察段階で略式起訴(罰金刑)となるケースが多い。
- 弁護士は不起訴や起訴猶予を得るのは難しいと認識しつつも、できるだけ罰金額を軽減するよう働きかける。
- 依頼者が「残留アルコールだった」「悪質性が低い」などの情状を弁護士が検察官に説明し、寛大な処分を求める活動を行う。
2-3. 示談交渉の要否
- 物損・人身事故がない場合
- 酒気帯び運転で検挙されても、事故が発生していなければ示談相手はいない。
- よって、被害者との示談交渉によって量刑を軽減する余地はそもそも存在しない。
- 物損事故や対人事故がある場合
- 仮にわずかな物損・軽微な人身でも発生していれば、その賠償を速やかに行い、示談を成立させることで検察や裁判所の心証を良くできる。
- ただし、本事案では事故は起こしていない想定なので、ここでは示談交渉は問題とならない。
第3章 酒気帯び運転を争う可能性はあるか
3-1. 呼気検査の数値への異議
- 計測機器の誤差主張
- 呼気検査機器も誤差があり、測定環境(例えば周囲の揮発性物質や温度・湿度など)によって数値が変動することは理論上あり得る。
- しかし、よほど大きな不備がない限り、警察・検察は計測結果を適正なものとして扱うのが通例。
- 飲酒後の時間経過や飲酒量の事実関係と照らして、0.15mg/L程度なら「通常あり得る」範囲内という判断になりがち。
- 手続違反や測定方法の欠陥
- 例えば、呼気検査前にうがいをさせなかった、飲食物の影響を除去するためのインターバルが不十分だったなどの手続的ミスがあれば、検討の余地はある。
- しかし現実的には警察官も手順を踏んで複数回測定するので、これを理由に無罪を勝ち取るのは極めて難しい。
- 弁護士としての見立て
- 「当日の警察手続きに重大な違法がない限り、酒気帯び運転の成立を免れることは困難」となる可能性が高い。
- よって弁護方針としては、事実を概ね認め、行政処分と刑事処分の軽減策を模索する方が一般的である。
3-2. 「故意がなかった」主張は成立するか
- 酒気帯び運転と故意の要・不要
- 酒気帯び運転は、「アルコールが身体に保有されている状態」での運転という客観的事実があれば成立し、「飲酒していると認識していた」かどうかが争点になる。
- 「飲酒の事実を知らなかった」という主張は通常成り立ちにくい。たとえ「残っているとは思わなかった」と言っても、前夜に大量に飲んだ事実を知っている時点で、「体内にアルコールが残っている可能性を想定していたはず」と評価されやすい。
- 法律上の評価
- 一般には「前日に多量飲酒して就寝が短時間ならば、翌朝もアルコールが残っている可能性は十分に予見できる」と判断される。
- 依頼者が「全く予想もしなかった」と主張しても、「普通の注意力があれば気づくはずだ」「注意義務違反だ」として法的責任を免れるのは難しい。
- 現実的対応
- 「残っているとは思わなかった」という供述はあくまで反省材料の一つとして、「深い悪意や故意で飲酒運転したわけではない」という情状に使うにとどまる。
- 刑事責任や行政処分の成立を根本的に否定する決め手にはならない。
第4章 刑事処分の軽減を図る弁護活動
4-1. 反省文・誓約書の提出
- 反省を示す意義
- 捜査機関や裁判所に対し、「今回の事案を真摯に反省し、今後は決して同じ過ちを繰り返さない」旨を積極的にアピールする。
- 飲酒運転は社会的非難が強い犯罪であるため、反省の度合いが処分に大きく影響すると言われている。
- 具体的な内容
- 飲酒の量や時間管理を徹底する誓約、車の利用を一時制限する、家族や同居人にチェックしてもらう、など再発防止策を明文化。
-「翌朝の残酒」を防ぐため、例えばアルコールチェッカーを個人で購入し、運転前に測定する習慣を導入するなどの具体的対策を挙げる。
- 飲酒の量や時間管理を徹底する誓約、車の利用を一時制限する、家族や同居人にチェックしてもらう、など再発防止策を明文化。
- 検察官や裁判官への提出
- 略式手続の場合でも、弁護人が検察官と面談した際に反省文や誓約書の写しを提示・説明し、罰金額の軽減を求める。
- 公判請求された場合は、正式に証拠として提出し、量刑上の斟酌を受けるよう主張する。
4-2. 「一度きりの過ち」であることの強調
- 前科前歴がない場合
- もし依頼者が飲酒運転の前歴を含め、ほかの重大違反歴もないなら「初犯の情状」として大きく評価される。
- 「今後厳しく自分を律していく」との姿勢を示すことで、より軽い処分(罰金額がやや低め)を期待できる。
- 再犯の防止策
- 「残酒による酒気帯び」を防ぐため、飲み会の翌朝に車を使わないルールを家族・職場と取り決める。
- どうしても移動が必要ならタクシーや公共交通機関、同僚の車に同乗するなどの手段を明示する。
- 雇用主や家族の嘆願書
- 会社に勤めている場合、上司や同僚から「今回の件を厳しく注意し、再発防止に協力する」旨の嘆願書を書いてもらうことも有効。
- 家族が「今後、飲酒後の車利用を厳しくチェックする」という誓約書を出す例もある。
4-3. (参考)略式命令と公判請求
- 略式命令の一般的展開
- 酒気帯び運転で人身事故がなく初犯の場合、罰金30万円〜50万円程度(事案により上下あり)で略式命令が出るケースが多い。
- 弁護人は検察官との協議で、各種情状を示して罰金額の軽減を求める。
- 公判請求される場合
- 飲酒量が大きい、過去に飲酒運転歴がある、あるいは他の違反を併発しているなど悪質性が高いと判断されれば、公判請求になる。
- 公判であれば正式な裁判手続で「執行猶予付き懲役刑」や「罰金刑」が下される可能性。
- 弁護士は被告人質問や証人尋問などを通じて再発防止策・反省態度を強調し、情状酌量を求める。
- 執行猶予の可能性
- 危険運転致死傷やひき逃げなどの要素がなければ、初犯の場合は執行猶予が付されることが多い。
- ただし、実刑もあり得るほど飲酒運転関連の処罰は厳格化の傾向にあるため、甘い見通しを抱くのは危険。
第5章 行政処分(免許停止・取消)の回避または軽減策
5-1. 酒気帯び運転の点数制度
- 道路交通法施行令による点数
- 呼気0.15mg/L以上0.25mg/L未満:13点
- 呼気0.25mg/L以上:25点
- 本事案では数値が0.15mg/L以上であることは確実だが、具体的数値が0.25mg/Lを超えているかどうかで大きく結論が異なる。
- 13点の場合
- 前歴(過去3年以内の免停・取消歴)がなければ免許停止90日が基本。
- 前歴が1回あれば免許取消(欠格1年)になるなど、前歴数によって処分は変動。
- 25点の場合
- 一発で免許取消(欠格2年)が確実。
- 前歴がある場合は欠格期間がさらに長期化する。
5-2. 聴聞手続きでの主張
- 意見の聴取や弁明の機会
- 警察や運転免許センターで行政処分(免許停止・取消)に先立ち、「意見の聴取」や「聴聞手続」の場が設けられる場合がある。
- ここで「残酒であり、故意や悪質性が低い」「今後二度としないよう誓約している」などを主張し、処分の軽減を図る。
- 軽減の余地は限定的
- 原則として酒気帯び運転が成立した場合、法令上定められた点数が付されるため、行政に裁量の余地はそれほど大きくない。
- たとえば数値が0.20mg/L程度なら「0.25mg/L未満」と判断され、13点→免停90日で済むが、これを聴聞で25点→取消が13点に覆るわけではなく、事実認定に争いがない限り厳しい。
- 事実認定を争う可能性
- 行政処分を免れるには「そもそも0.15mg/Lに達していなかった」「測定手続に重大な違法があった」といった事実認定の争いが必要。
- しかし、実務上、警察側の測定結果を覆すのは容易ではない。
- 結論として、弁護士としては「軽減・猶予」に期待するのは難しく、「処分は受けざるを得ない」と見込むのが現実的。
5-3. 取消後の救済策・再取得
- 免許取消となった場合
- 欠格期間が1年または2年(前歴次第で最長5年など)に及ぶと、期間満了まで免許を再取得できない。
- 仕事で車が必要な人にとっては重大な不利益。
- 弁護士としても取消を回避できないと判断したら、「他の交通手段の確保」「転職の検討」などをアドバイスせざるを得ない。
- 運転経歴証明書など
- 免許取消後、運転経歴証明書を取得しても運転はできないが、身分証明書としては使える。
- 実務的には大きな救済にはならないが、一応の情報として伝えることが多い。
- 行政不服審査・行政訴訟
- 行政処分に対して不服申立(行政不服審査)や取消訴訟を提起することも可能。
- しかし、飲酒運転による取消を覆すのは極めて難しいというのが実務の実情。
- 弁護士費用や手間をかけても勝算が低いので、よほど手続違反が明白なケースを除きあまり現実的ではない。
第6章 再発防止と社会的影響への対策
6-1. 依頼者本人の意識改革
- 「抜けている」は根拠薄弱
- 前日の深酒が翌朝まで残っている可能性は、現代社会では広く知られている。
- 今回の検挙を機に、「自分は翌日には絶対飲酒運転しない」という徹底したルールづくりが重要。
- アルコールチェッカーの活用
- 市販のアルコールチェッカーを常備し、運転前に必ず測定して数値を確認する習慣を持てば、再発を防ぐ効果がある。
- 弁護士はこうした具体的対策を提示し、捜査機関・裁判所に「同じ過ちは繰り返さない」と説得する。
- 周囲のサポート
- 家族や同居人に協力してもらい、飲み会の日があれば翌朝は車を運転しないよう注意喚起する。
- 職場でも上司・同僚に事情を説明し、必要であれば出勤経路の代替手段(公共交通機関、タクシー代支給など)を相談する。
6-2. 会社への報告義務とリスク管理
- 職場に知られる可能性
- 飲酒運転の捜査・処分で無免許状態になれば、車両運転を伴う仕事の場合は隠し通せない。
- 特に行政処分(免許停止・取消)となれば運転業務不可になるため、会社との関係を整理せざるを得ない。
- 懲戒処分の可能性
- 企業によっては「飲酒運転で検挙されたら懲戒解雇」等の規則がある場合もある。
- 弁護士は、雇用契約や就業規則を確認し、最悪の事態を見据えて対応策(配置転換の打診、減給処分で済むよう交渉等)を検討する。
- 円満に解決を図る方策
- 会社の理解を得るために、反省文や再発防止策をまとめた書面を提出する。
- 一時的に免許停止中であっても、通勤手段を確保し、業務への影響を最小限に抑える努力を示す。
6-3. 家族・社会への影響
- 家庭内の信用失墜
- 飲酒運転による検挙は家庭内でも大きな不信を招く。配偶者や子どもがいる場合、「なぜ気をつけなかったのか」と厳しく責められるケースも多い。
- 弁護士は、家庭円満に収束するよう助言し、依頼者が真剣に再発防止策を講じる大切さを伝える。
- 社会的制裁
- 飲酒運転事案は報道や周囲の目も厳しいため、場合によってはSNSで取り沙汰されるなど社会的制裁を受けることもある。
- 免許停止や取消後は行動範囲が制限され、生活全般に深刻な影響が及ぶ。
- 更生プログラム・医療的アプローチ
- もしアルコール依存傾向が疑われる場合、専門医療機関の受診やカウンセリング参加を検討する。
- 単なる「飲み過ぎの習慣」がある場合でも、今回を機に生活習慣を見直すことで、将来的にまた同じ過ちを犯すリスクを下げる。
第7章 総合的な弁護方針のまとめ
以上を踏まえ、本事案(深夜2時に就寝し朝7時に起床後、残留アルコールにより0.15mg/L以上を検出されて検挙されたケース)において、弁護士が依頼者とともに取り得る弁護方針は以下のように整理できる。
- 酒気帯び運転の事実を否定するのは困難
- 呼気検査で基準値を超えた以上、手続き上の明白な違法や測定誤りがない限り、成立は避けられない。
- 依頼者の「もう酒は抜けていると思った」は情状(悪質性の低さを示す)として扱うにとどまり、「違法性阻却」や「罪の不成立」を主張する有力な根拠にはなり得ない。
- 捜査・起訴段階では事実を認め、情状を尽くす
- 「残酒であった」「本人の認識では酔っていないと思った」「短時間睡眠であり、注意が足りなかったが故意はなかった」「今後は飲酒翌朝の運転をしないと誓う」などを主張。
- 検察官へ反省文や再発防止策を提示し、可能な限り罰金額を低減させ、不起訴や起訴猶予を模索する(ただし可能性は低い)。
- 行政処分は避けにくいが、軽減の余地を探る
- 呼気アルコール濃度が0.25mg/L未満であることを確認し、13点(免停90日)で済む可能性を追求する。
- 聴聞手続や意見の聴取で誠実に説明し、悪質性が低いことを強調しても、大幅な軽減は期待しづらいが、場合によっては短縮講習(取消ではなく免停で済む等)が適用される余地を探る。
- 再発防止策の具体化
- アルコールチェッカー導入、飲酒翌日は車に乗らないルールづくり、家族・会社の協力を得るなど、具体的かつ実行可能な方策を立案。
- この再発防止策は刑事手続・行政手続・職場説得のいずれにおいても有用。
- 家族・職場・社会への対応策
- 必要に応じて会社の上司や同僚へ事情を説明し、配置転換や代替交通手段の確保など、仕事への影響を最小限に抑える努力。
- 家庭内でも今回の事態を深刻に受け止め、今後は飲酒後の運転を決して行わないとの約束を実行する。
第8章 想定される処分事例
ここでは、あくまで一般的・典型的なケースとしての処分例を示す。
- 刑事処分
- 初犯・人身事故なし・呼気0.15mg〜0.25mg未満 → 罰金30万〜40万円程度の略式命令が多い。
- 罰金はやや高額だが、正式裁判での審理を望まなければ、略式手続で処理されるケースがほとんど。
- 異議があれば正式裁判を求められるが、結果的に罰金額が下がる保証はなく、公開法廷で手間がかかるというデメリットがある。
- 行政処分
- 呼気0.15mg/L以上0.25mg/L未満 → 13点加算 → 免許停止90日(前歴なしの場合)。
- この90日免停に対して短縮講習を受けると45日に短縮される制度もあるが、地域・運用によっては通らない場合も。
- 前歴があれば取消の危険性が高まる。累積点数がある場合も処分が変動するので要注意。
- 社会的・実務的影響
- 罰金刑となるため前科がつく。企業によっては懲戒処分や退職勧奨を受ける可能性。
- 免停中は公道での運転不可となり、タクシーや公共交通機関を利用する必要が生じる。
- 家族や周囲の信頼を損ない、深刻な影響が及ぶことは少なくない。
第9章 弁護人が依頼者に対して行うアドバイス
以上の内容を踏まえ、弁護人が依頼者に示すアドバイスの要点をまとめる。
- 正直に事実を伝え、調書との齟齬を避ける
- 「残っていないと思った」と言う主張は良いが、飲酒量・体調・就寝時間などの客観的事実を偽ると不利になる。
- 「翌日まで残るとは思わなかったが、結果として残っていた事実は否めない」と素直に認める姿勢が重要。
- 反省文・誓約書を速やかに準備
- 飲酒習慣や翌朝運転の危険性を十分に認識し、再発防止策を具体的に記した文書を作成。
- 弁護士の助けを借りて、説得力ある内容とする。
- 家族・職場との連携
- 家族には事実を伝え、今後の生活上のサポート・監督をお願いする。
- 職場にも早めに相談し、免停期間中の業務フォローや通勤手段を調整してもらう。
- 隠していて後から発覚すると、かえって処分が重くなる(解雇等)リスクが高い。
- 罰金支払いと免停対応の心構え
- 罰金の支払いを踏まえ、家計や貯金の計画を立てる。分割納付が認められる場合もあるが、早期に完納する方が望ましい。
- 免停が始まる時期に合わせてタクシー代・公共交通機関の定期券などを準備する。
- 運転したら無免許運転としてさらに重い処分が下るため、絶対に運転しないよう注意。
- 精神的サポートと再発防止
- 「なぜ深夜2時まで飲んでしまったか」「なぜ翌朝の運転を安易に考えたか」という生活習慣の根本的改善が必要。
- アルコール依存の気配やストレスなどがある場合は専門家のカウンセリングを受けることも検討。
第10章 結論
「前夜に大量に酒を飲んで、朝になったら抜けていると思って運転したが、残留アルコールが原因で酒気帯び運転と判定されてしまった」という依頼者のケースでは、刑事処分・行政処分を完全に回避することは極めて難しいのが実情です。呼気検査で基準値を超えた以上、法的には「酒気帯び運転」の成立がほぼ確定し、事後的に「故意がなかった」などと主張しても事実を覆すのは容易ではありません。
実務的には、「残酒」であれ「悪質な飲酒運転」であれ、呼気中に一定量のアルコールが検出されれば処罰されるというのが道路交通法の大原則です。弁護人としては、以下のような方針に基づき、依頼者の処分をできるだけ軽減すべく活動します。
- 事実を認め、深く反省している姿勢を示す
- 再発防止策(アルコールチェッカーの導入、翌朝運転禁止ルールの徹底など)を具体的に提示
- 検察官・裁判所に対し、初犯であり悪質性が低いことを強調し、罰金額の軽減や寛大な処分を求める
- 行政処分の段階でも誠実に意見を述べ、点数計算の誤りや手続的問題がないかを確認する
- 家族・職場・周囲との調整を行い、生活・仕事への影響を最小限に抑えられるよう助言
とはいえ、近年は飲酒運転への社会的非難も強く、立法・運用の両面で厳罰化が進んでいるため、**「処罰を免れる」あるいは「免許処分をゼロにする」ことはほぼ不可能です。最終的には罰金刑・免停(あるいは取消)**といった処分を受けざるを得ない場合が多いでしょう。ただし、弁護士の働きかけによって反省の情状や再発防止への取り組みが十分評価されれば、罰金の額がやや低めに抑えられる、免停期間が短縮されるなど、一定の成果を得ることはあり得ます。
依頼者としては、今回の事態を**「重大な警告」として受け止め、今後は決して翌朝の運転を安易に考えず、飲酒習慣を見直す契機**とするしかありません。弁護士はそのサポート役として、法律面だけでなく、生活面・家族関係・職場との調整まで多角的にアドバイスし、二度と同じ過ちを犯さないよう依頼者と協力していくことが求められます。
以上が、深夜までの飲酒が翌朝に残ってしまい、酒気帯び運転で検挙されたケースにおいて、刑事処分・行政処分を回避または軽減するための弁護方針を詳細にまとめた解説です。1万字規模で論じましたように、実務上は「残っているかどうか分からなかった」という主張だけで違法性を否定することは難しく、素直に事実を認め、反省と再発防止策を積極的に示し、多少でも寛大な処分を得ることが現実的な方策となります。そして、最も重要なのは、依頼者がこの経験を踏まえ、今後の飲酒・運転に対する認識を根本から改めることに他なりません。
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