2026年7月21日施行――危険運転致死傷罪が改正されました
2026年07月31日刑事弁護
2026年7月21日施行――危険運転致死傷罪が改正されました
2026年6月25日、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律及び道路交通法の一部を改正する法律」が成立し、同年7月21日から施行されました。今回の改正は、危険運転致死傷罪の法定刑を引き上げるものではなく、これまで判断が難しかった飲酒運転や著しい速度超過について基準を明確にするとともに、ドリフト走行などを新たな対象行為として加えるものです。(参議院)
1 飲酒運転について数値基準が設けられました
改正法では、次のいずれかの状態で自動車を走行させ、人を死傷させた場合が危険運転致死傷罪の対象となります。
- 血液1ミリリットルにつき1.0ミリグラム以上
- 呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上
この数値以上のアルコールを身体に保有している場合、法律上の「アルコール影響正常運転困難状態」に該当します。一方、数値基準に達していない場合でも、蛇行運転、信号の見落とし、ブレーキやハンドル操作の異常などから、アルコールの影響によって正常な運転が困難だったと認定されれば、従来どおり危険運転致死傷罪が成立する可能性があります。
なお、呼気0.5ミリグラムという基準は、酒気帯び運転の基準である呼気0.15ミリグラムとは異なります。酒気帯び運転の基準自体は変更されていません。
2 著しい速度超過について基準が明確になりました
次の速度以上で運転し、人を死傷させた場合が、新たな高速度類型の対象となります。
- 最高速度が時速60キロメートル以下の道路
→最高速度を時速50キロメートルより大きく上回る速度 - 最高速度が時速60キロメートルを超える道路
→最高速度を時速60キロメートルより大きく上回る速度
例えば、制限速度が時速40キロメートルの道路では、時速90キロメートルを超える速度が数値基準となります。また、数値基準にわずかに達していなくても、道路の幅、カーブ、見通し、歩行者や他車の状況などから、重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度であった場合には、対象となる可能性があります。
3 危険なドリフト走行やウィリー走行が追加されました
殊更にタイヤを滑らせたり、タイヤを路面から浮かせたりすることによって、車両の進行を制御することが困難な状態にさせて走行し、人を死傷させる行為も、危険運転致死傷罪の対象に追加されました。
典型的には、公道で故意に行うドリフト走行や、二輪車の前輪を浮かせるウィリー走行などが想定されます。単なるスリップや、事故を避けるための急ブレーキによってタイヤが滑った場合まで、直ちに対象となるわけではありません。
4 道路交通法上の酒酔い運転にも数値基準が追加されました
道路交通法上の酒酔い運転についても、血液1ミリリットルにつき1.0ミリグラム以上、または呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上という基準が追加されました。数値基準未満であっても、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態であれば、酒酔い運転に該当することがあります。
数値を超えれば自動的に危険運転致死傷罪になるわけではありません
危険運転致死傷罪が成立するためには、数値基準や走行態様だけでなく、その危険運転によって人が死亡・負傷したこと、運転者の認識、事故との因果関係なども問題となります。
法定刑は従来と変わらず、被害者を死亡させた場合は1年以上の有期拘禁刑、負傷させた場合は15年以下の拘禁刑です。自動二輪車や原動機付自転車のほか、特定小型原動機付自転車に該当する電動キックボードも適用対象に含まれます。(法務省)
今回の改正は、単純な「厳罰化」というより、危険運転致死傷罪の構成要件を数値によって明確化し、処罰対象となる危険な走行方法を追加した改正と説明するのが正確です。


