自転車のひき逃げ事故、警察が来ないまま1週間が過ぎたがバレていないのか(交通事故、刑事弁護)
2024年01月22日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市内に住む20代のサラリーマンです。薬院駅周辺の歩道で電動アシスト自転車を運転していたところ、スマートフォンの通知に気を取られて歩行者にぶつかってしまいました。歩行者が転倒してヤバイと思ったのですが、怖くなって逃げ出しました。その後、ニュースや県警ホームページの事故情報をチェックして何も情報が出てこないまま1週間が経過したのですが、このまま警察に出頭しないで逃げ切れますでしょうか。
A、被害申告がなされていない可能性もありますが、仮に怪我をされていた場合には、後日になって警察が家宅捜索等で自宅に来る場合もあります。私は、弁護士同伴での出頭をお勧めしています。
【解説】
近時は、防犯カメラの位置や管理者を警察が把握しているので、事件・事故発生となれば地引き網のようにデータが収集されています。ひき逃げ事犯については、一刻も早く自首することを強くお勧めします。下記文献では、令和4年4月18日に事故が発生し、翌々日には犯人が特定されていますが、捜索がなされたのは令和4年5月9日でした。すぐに警察が来ないからといって発覚しなかったとはいえません。弁護人に依頼して、早期に出頭することをお勧めします。
【参考文献】
河原崎裕司(静岡県警察本部交通部交通指導課課長補佐)「電動アシスト自転車の体を為した原動機付自転車による重傷ひき逃げ事件の検挙」月刊交通2023年11月号(674号)26-40頁
【今回の事件は、「電動アシスト自転車の体を為した原動機付自転車による重傷ひき逃げ事件」という、これまで取り扱ったことのない事件であり、捜査に従事した捜査員は、法の執行者として知恵を出し、汗を流し、創意を凝らしながら捜査に挑み、発生から僅か1日半で被疑車両を発見するとともに被疑者を割り出し、逮捕・起訴そして判決にたどり着いたもので、今後のリーディングケースにもなり、若手交通捜査員にも刺激を与えたものであった。】
月刊交通 ❯❯ 2023年11月号
https://www.tokyo-horei.co.jp/magazine/kotsu/202311/?utm_campaign=std&utm_source=rss&utm_medium=rss
川上拓一編著『裁判例にみる交通事故の刑事処分・量刑判断』(学陽書房,2022年2月)58頁
【これに対し、事故後逃走したものの翻意してさほど時間を置かずに現場に戻った場合には、法的に自首が成立する場合はもちろん、そうでない場合も量刑上多いに考慮されるべきであろう。裁判所の量刑においても、「自動車運転過失致傷罪で傷害の程度がそれほどでない場合には、ひき逃げが伴っても、捕まるのが恐ろしくなって現場から逃走したが、結局、家族等に相談して、事故直後ではないけれども、程なくして警察に出頭したようなときは、執行猶予の余地がある。」と指摘される(原田・前掲『量刑判断の実際〔3版〕」46頁)。筆者の経験でも、確かに人身事故を惹起した後、自らの意思で「直ちに停止」せず現場を離れた段階で救護義務違反は成立するものの、翻意して戻った場合にはこれを評価し適宜減点していた。それ故に、通常の評点計算であれば、公判請求(自由刑求刑)が必至の「ひき逃げ」事案でも、(もちろん、被害者の負傷の程度にもよるが) 「現場への舞い戻り」を評価して減点計算の結果、略式処理(罰金刑)にとどまることもあった。もし、読者の皆さんが、知人や依頼者から突然電話が入り「交通事故を起こした。怖くなってその場から離れた(逃げた)。」と打ち明けられたら、「勇気を出して直ちに現場に戻りなさい。」旨助言することを勧めたい。それによって、最終処分が、被害者の負傷程度により「実刑から執行猶予」「公判請求から略式処理(罰金刑)」に変わる余地が生じるからである。】
裁判例にみる交通事故の刑事処分・量刑判断
https://www.gakuyo.co.jp/book/b597173.html