知らない男につきまとわれて、マンションの部屋の前まで来られたという相談(犯罪被害者)
2024年10月02日犯罪被害者
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市に住む20代の会社員女性です。オートロックのマンションに住んでいるのですが、先日、残業で遅くなって帰ったところ、オートロックを私が解除した後にそのまま男性がついてきました。マンションの住人かと思ったのですが、同じ階で降りて、嫌な感じがしました。部屋に入って、ドアスコープを覗くと、まだ私の玄関の前にいました。しばらく経ったらいなくなったのですが、ストーカーではないかと不安です。どうすれば良いでしょうか。
A、マンションの共用部分に正当な理由なく立ち入っている時点で「邸宅侵入」が成立します。防犯カメラで記録が残っている場合も多いので、警察に通報して証拠保全をしてもらうべきでしょう。マンションの管理会社から被害届を出してもらうことが考えられます。
【解説】
「つきまとい」行為については、軽犯罪法や迷惑行為防止条例違反になることもありますが、単発の場合は軽犯罪法以外では処罰できないことが原則です。もっとも、実は、マンションの共用部分への立ち入りも、正当な理由がなければ「邸宅侵入」として刑法130条前段に違反します。そのため、ご相談の事例でも邸宅侵入事件として立件してもらえるでしょう。
ご相談の事例では、ストーカーとしてエスカレートすることも考えられますので、早急に警察に対応してもらうべきです。警察に通報すると逆上するのではないかと考えられる方もいますが、一般的には何もしない方が危険です。
刑法
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC130%E6%9D%A1
(住居侵入等)
第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する。
【参考判例】
最判 平成21年11月30日刑集第63巻9号1765頁
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=38200
判示事項
1 分譲マンションの各住戸にビラ等を投かんする目的で,同マンションの共用部分に立ち入った行為につき,刑法130条前段の罪が成立するとされた事例
2 分譲マンションの各住戸に政党の活動報告等を記載したビラ等を投かんする目的で,同マンションの共用部分に管理組合の意思に反して立ち入った行為をもって刑法130条前段の罪に問うことが,憲法21条1項に違反しないとされた事例
裁判要旨
1 分譲マンションの各住戸のドアポストにビラ等を投かんする目的で,同マンションの集合ポストと掲示板が設置された玄関ホールの奥にあるドアを開けるなどして7階から3階までの廊下等の共用部分に立ち入った行為は,同マンションの構造及び管理状況,そのような目的での立入りを禁じたはり紙が玄関ホールの掲示板にちょう付されていた状況などの本件事実関係(判文参照)の下では,同マンションの管理組合の意思に反するものであり,刑法130条前段の罪が成立する。
2 分譲マンションの各住戸のドアポストに政党の活動報告等を記載したビラ等を投かんする目的で,同マンションの玄関ホールの奥にあるドアを開けるなどして7階から3階までの廊下等の共用部分に,同マンションの管理組合の意思に反して立ち入った行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは,憲法21条1項に違反しない。