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薬院法律事務所

刑事弁護

宮﨑県迷惑行為防止条例第2条(卑わいな行為の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為


2025年01月11日刑事弁護

下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。

以下では、宮崎県迷惑行為防止条例(以下「本条例」といいます)第2条に焦点を当て、これまでの条例解説と同様のスタイルを踏襲しながら、条文構成や主要な規制対象、典型例、実務上の注意点などを詳説します。


1. 第2条(卑わいな行為の禁止)の位置づけ

本条例第2条は、公共の場所や公共の乗物などで行われる卑わいな行為(いわゆる「痴漢」や卑わい言動、のぞき・盗撮行為)を規制するための中心条文です。

  • 目的: “人に不安、困惑、嫌悪(不安等)や著しい羞恥を覚えさせるような行為”を防止し、県民の平穏を保持する。
  • 保護法益: 被害者の性的プライバシー、安心して生活できる環境。

本条は、第1項・第2項・第3項で、それぞれ異なる行為・場所に着目しつつ、卑わい行為を包括的に取り締まる構造となっています。


2. 第2条第1項

(第2条第1項)
「何人も、道路、公園、広場、駅、興行場その他の公共の場所(以下『公共の場所』という。)又は電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下『公共の乗物』という。)において、正当な理由がないのに、人に対し、不安等又は著しい羞恥を覚えさせるような方法で次に掲げる行為をしてはならない。」

(1) 「公共の場所」「公共の乗物」

  • 公共の場所: 道路、公園、広場、駅、興行場など、不特定多数が自由に出入りできる場所。
  • 公共の乗物: 電車・バス・船舶・航空機など、多くの人が乗り降りできる公共交通機関。

(2) 禁止行為(第1項各号)

  1. 第1号:「衣服等の上から又は直接人の身体に触れること」
    • 典型的ないわゆる「痴漢行為」。衣服の上からでも、直接肌に触れる場合でも、人に強い不快感や羞恥を与える接触行為を規制。
  2. 第2号:「卑わいな言動をすること」
    • 直接的な身体接触はなくとも、露骨に卑猥な言葉やジェスチャーを用いて、人に不安等・著しい羞恥を与える行為を指す。
    • 公然と性的な言葉を浴びせたり、周囲に強い嫌悪感を抱かせるような性的パフォーマンスなどが含まれる。

(3) 典型的事例

  • 痴漢(電車内で臀部を触る、満員バスで胸を触るなど)
  • 公共空間での卑猥な言動(性的に猥褻な言葉を大声で連呼、相手を侮辱する形で性的な脅迫を行う)

(4) 実務上の留意点

  • 「正当な理由がないのに」「不安等又は著しい羞恥を覚えさせるような方法」であることが成立要件。医療行為や救護など、社会通念上やむを得ない接触は除外される。
  • 違反すれば、第6条により「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)」の対象となりうる。

3. 第2条第2項

(第2条第2項)
「何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、正当な理由がないのに、前項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。」

(1) 規制対象となる場所

  • 第1項の「公共の場所」や「公共の乗物」に加え、「その他の公衆の目に触れるような場所」でも禁止行為を設定。
  • 具体的には、店先の路上やビルの通路など、不特定多数の人が目にしうる空間も含まれる。

(2) 禁止行為(第2項各号)

  1. 第1号:「人の通常衣服等で隠されている下着又は身体をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影すること」
    • いわゆる「のぞき」「盗撮」行為を規制。
    • 衣服の中や下着姿など、本来は他人に見られない部分を意図的に覗き込んだり、カメラを向けたりする行為が対象。
  2. 第2号:「上記の行為をする目的で、写真機等を人の身体に向け、又は設置すること」
    • **実際の撮影未遂や準備行為(カメラを向ける・設置する)**の段階でも禁止。
    • 「撮影が完了していないからセーフ」という言い訳は通らず、あくまで撮影目的でカメラを構えた段階で違反となる。

(3) 典型的事例

  • エスカレーターでスマホをスカート下に差し向ける
  • 駅のベンチや広場で隣に座る人の下着を隠し撮りしようとする
  • バッグに小型カメラを入れ、周囲に気付かれないよう角度を調整して撮影準備する

(4) 実務上のポイント

  • **「公衆の目に触れるような場所」**は解釈が広く、露天商のブース周辺や繁華街の屋外スペースなども含まれ得る。
  • 第2項で「衣服で隠された下着・身体」に対するのぞき・盗撮が規制されるため、いわゆる「スカート内盗撮」が典型例となる。
  • 違反すれば同様に第6条で処罰される(6月以下の懲役または50万円以下の罰金、常習加重あり)。

宮崎県警察本部生活安全部生活安全企画課企画指導補佐「決裁伺書公衆に著しい迷惑をかける行為の防止に関する条例の一部改正について(全17頁)」(2016年9月16日)に含まれる、宮崎県警察本部生活安全部生活安全企画課生活安全捜査指導官警視室屋利春・企画指導補佐警部黒木守担当の「公衆に著しい迷惑をかける行為の防止に関する条例の一部改正について(回答)」では地方検察庁の意見を受けて次のとおり改正案が変更されたことが記載されている(2016年9月20日※後日日付は記入されている)。盗撮行為についてすべての場所で規制しようと試みたものの、当時の議論状況を踏まえて制限的な規制になったものと考えられる。

【別添1
公衆に著しい迷惑をかける行為の防止に関する条例の一部改正について
1 改正理由
現条例は、平成12 年に施行され、平成22 年に一部が改正されているが、現条例では規制できない盗撮行為や電子メール、SNS等を利用したつきまとい行為などの迷惑行為が発生していることから、現状に沿うように一部を改正するもの。
2 改正の概要
(1) 卑わいな行為の禁止(第2条)関係
ア現条例の「卑わいで不安等又は著しいしゅう恥を覚えさせるような言動」を「痴漢」、「のぞき見」、「その他卑わいな言動」と具体的に例示して規制
イ盗撮行為はいかなる場所においても許されないことから、場所を限定せずに規制することとしし、「撮影」のほか、写真機等を「向ける」、「設置する」行為を新たに規制】

【別添2

再考後の修正点
1 卑わいな行為の禁止(第2条)関係
別添1の2(I) ア、イについて
0 第1項で、「公共の場所又は公共の乗物」における
① 「痴漢」
② 「その他卑わいな言動」
の禁止
0 第2項で、「公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所」
における
① 下着等ののぞき見、写真機等で撮影する行為
② ①の目的で写真機等を向け、設置する行為
の禁止
0 第3項で、「公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他
の公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態
にある人の姿態」を
① のぞき見、写真機等で撮影する行為
② ①の目的で写真機等を向け、設置する行為
の禁止
と修正した。】


4. 第2条第3項

(第2条第3項)
「何人も、正当な理由がないのに、第1項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。」

(1) 取り締まり対象となる場所

  • 公衆便所、公衆浴場、公衆が利用できる更衣室など、「公衆が通常衣服等を脱いでいる状態」で利用する場所が想定されている。
  • 条文中で「その他の公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」と規定され、極めて私的に近い空間でも「公衆が利用することができる」性質を持つ場合は含まれる。

(2) 禁止行為(第3項各号)

  1. 第1号:「当該状態にある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影すること」
    • いわゆる「裸・半裸の状態を覗き、撮影する行為」。
    • 銭湯や温泉、プールの更衣室、公衆トイレなどでののぞき・盗撮を禁止。
  2. 第2号:「前号の行為をする目的で写真機等を人の身体に向け、又は設置すること」
    • こちらも**未遂段階や準備行為(カメラの向け・設置)**を禁止。

(3) 典型的事例

  • 銭湯の脱衣所に隠しカメラを仕掛ける
  • 公衆トイレの上や下からスマホを差し入れる
  • 更衣室で着替え中の人を盗撮するために、鏡裏やロッカー下にカメラを設置する

(4) なぜ特別規定か

  • 人が衣服を脱いでいる状態では、プライバシー侵害がより深刻となるため、条例としても強い禁止規定を置いている。
  • 刑法(住居侵入罪、わいせつ罪など)や令和5年施行の「性的姿態等撮影罪」(盗撮処罰法)との競合もあり得るが、条例はより軽微な行為までカバーする役割が大きい。

5. 罰則・まとめ

(1) 罰則

  • 第2条に違反した場合: 第6条の規定が適用され、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習では1年以下の懲役または100万円以下の罰金)」となる。
  • 撮影の目的で機器を向ける未遂段階でも処罰対象となり得るため、実務上は行為を早期に摘発しやすい仕組み。

(2) 条例全体との位置づけ

  • 第2条は、迷惑行為のうち「卑わい行為」を中心に規制する条文。
  • 公共空間での痴漢・卑わいな言動(第1項)、公衆の目に触れる場所でののぞき・盗撮(第2項)、さらに公衆浴場など衣服を脱いでいる可能性が高い場所でののぞき・盗撮(第3項)と、行為態様や空間に応じて幅広くカバーしている。

(3) 総評

  • 宮崎県迷惑行為防止条例 第2条は、痴漢・卑わいな言動・のぞき・盗撮など、公衆に強い不快感や羞恥を与える行為を一括して禁止する重要規定。
  • 第1項~第3項まで、それぞれ異なる場所・行為形態を想定し、多角的に卑わい行為を取り締まる構造となっている。
  • 違反すれば刑罰が科され、常習なら厳罰化されるため、県民や滞在者が公共空間を安心して利用できるよう強い抑止力を発揮している。

6. まとめ

  1. 第1項: 公共の場所・乗物での痴漢行為や卑猥言動を禁止。
  2. 第2項: 公衆の目に触れる場所における「のぞき・盗撮行為」およびその準備行為を禁止。
  3. 第3項: 公衆便所や公衆浴場、更衣室等、人が衣服を脱いでいる状態の場所での「のぞき・盗撮行為」およびその準備行為を禁止。

以上が本条例第2条の詳細解説です。宮崎県においては、公共空間や公衆が利用するさまざまな場面で生じうる卑わい行為を幅広く取り締まることで、県民生活の平穏と性的プライバシーを保護する狙いが明確に示されています。

 

宮﨑県迷惑行為防止条例

https://en3-jg.d1-law.com/miyazaki-ken/d1w_reiki/H411901010074/H411901010074.html

(卑わいな行為の禁止)
第2条 何人も、道路、公園、広場、駅、興行場その他の公共の場所(以下「公共の場所」という。)又は電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、正当な理由がないのに、人に対し、不安等又は著しい羞恥を覚えさせるような方法で次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 衣服その他の身に着けるもの(以下「衣服等」という。)の上から又は直接人の身体に触れること。
(2) 前号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、正当な理由がないのに、前項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人の通常衣服等で隠されている下着又は身体をのぞき見し、又は写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を用いて撮影すること。
(2) 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を人の身体に向け、又は設置すること。
3 何人も、正当な理由がないのに、第1項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影すること。
(2) 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を人の身体に向け、又は設置すること。
一部改正〔平成28年条例52号〕

 

【参考文献】※情報公開で入手した資料は一部マスキング有

 

宮崎県警察本部生活安全部生活安全企画課企画指導補佐「決裁伺書公衆に著しい迷惑をかける行為の防止に関する条例の一部改正について(全14頁)」(2016年7月28日)

宮﨑地方検察庁検事正長谷透「罰則の定めのある条例改正に係る協議について(回答)(全1頁)」(2016年9月9日)

宮崎県警察本部生活安全部生活安全企画課企画指導補佐「決裁伺書公衆に著しい迷惑をかける行為の防止に関する条例の一部改正について(全17頁)」(2016年9月16日)

宮崎県警察本部生活安全部生活安全企画課企画指導補佐「法令審査会幹事会結果について(全8頁)」(2016年9月23日)

宮崎県警察本部生活安全部生活安全企画課「法令審査会の結果について(全5頁)」(2016年9月27日)

宮崎県警察本部生活安全部生活安全企画課ストーカー・DV対策係長「決裁伺書公衆に著しい迷惑をかける行為の防止に関する条例の一部改正について(再回答)(全18頁)」(2016年9月27日)

宮﨑地方検察庁検事正長谷透「罰則の定めのある条例改正に係る協議について(回答)(全1頁)」(2016年9月28日)

★宮崎県警察本部生活安全部生活安全企画課「宮崎県迷惑行為防止条例逐条解説(全88頁)」(2016年12月14日)