将来的に兼業主婦になる見込みがある場合に、逸失利益はどう算定するのか(交通事故)
2020年02月09日損害賠償請求(交通事故)
将来的に兼業主婦になる見込みがある場合の逸失利益算定の事例。
現実の収入を基礎とするよりも、主婦として計算してもらった方が有利になるということで、そちらが採用されたようです。
見落としがちな論点だと思います。
平成29年10月17日/福岡地方裁判所/第5民事部/判決/平成27年(ワ)1909号
出典
自保ジャーナル2013号62頁
【(ク) 同(ク)(逸失利益)は争う。基礎収入として平均賃金を得られる蓋然性がなく、原告は本件事故時も入院時も独身で1人暮らしであり、診療録上にも婚約者なる者の記載もなく、入院時のキーパーソンは姉であった。原告が家事労働に従事していた蓋然性も認められない。】
【ク 逸失利益 668万3,628円
(計算式)基礎収入353万9,300円×労働能力喪失率14%×労働能力喪失期間23年間に対応するライプニッツ係数13.4886
(ア) 基礎収入(年収額)について
原告は、本件事故当時から甲野七郎(以下「甲野」という。)と婚姻する意思を有し、具体的に婚姻の時期についても甲野との間で話を進めており、かつ、その予定については両人の親族とも話していたというのであり(原告本人)、本件事故の治療を終えた平成26年9月頃からは同居を開始してその後に現実に婚姻したことからすれば(原告本人)、原告は、本件事故時において、近い時期には甲野と婚姻する蓋然性があったというべきである。また、甲野はフルタイムの営業職に従事しており、婚姻した現在では原告は甲野及びその両親と4人で生活しているというのであるから(原告本人)、本件事故がなかったとすれば、訪問ヘルパーの職に従事しながらも家事にも従事し、いわゆる兼業主婦として稼働していたであろうと認められる。
そして、賃金センサス平成25年女性全年齢平均賃金は353万9,300円であり、原告のヘルパーとしての平成24年収入額224万7,590円を上回るから、家事従事者として前者の金額(353万9,300円)を基礎収入とみるのが相当である。】