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薬院法律事務所

刑事弁護

下着盗撮事件を起こして会社を解雇されそうという相談(盗撮、労働問題)


2025年01月30日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は福岡市に住む40代男性です。先日、駅のエスカレーターで女性の下着を盗撮していたことが見つかり、現行犯で逮捕されました。会社に連絡が取れなかったことから私が盗撮をしたことがバレてしまい、会社からは「解雇も含む重大な処分をする」といわれて自宅待機しています。弁護士さんをつけて示談交渉をしないといけないと思っているのですが、それだけでなく解雇も回避したいです。どうすれば良いでしょうか。

 

A、不起訴処分を獲得できるように弁護士に依頼することはもちろんとして、労働問題として下記裁判例も参考に会社と交渉してもらうべきでしょう。

 

【解説】

 

下着盗撮事件を起こして逮捕された場合、会社に発覚することがあります。会社からは「解雇するつもりだけど、自主退職するのであれば…」といった形で辞職せざるを得ないことも多いです。もっとも、近時の裁判例では、1回の下着盗撮行為で、不起訴になった事案につき、懲戒解雇処分を無効とした裁判例があります。具体的な態様にもよるでしょうが、会社内での盗撮行為と比較して、私生活上の非行になるので解雇処分が無効とされることも多いと考えられます。

 

名古屋地方裁判所 令和6年8月8日判決

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=93392

 

※参考

私生活上の非違行為に対する懲戒処分

https://www.zennichi.or.jp/law_faq/%E7%A7%81%E7%94%9F%E6%B4%BB%E4%B8%8A%E3%81%AE%E9%9D%9E%E9%81%95%E8%A1%8C%E7%82%BA%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E6%87%B2%E6%88%92%E5%87%A6%E5%88%86/

下着盗撮事件弁護要領(性的姿態等撮影罪・迷惑防止条例)

以下は、chatGPT o1 proの回答です。

以下では、令和5(ワ)5968号・令和6年8月8日名古屋地方裁判所判決(以下「本判決」)のポイントを参照しながら、「懲戒処分歴がない40代会社員男性が駅のエスカレーターで女性の下着を盗撮して新法(性的姿態等撮影罪)で現行犯逮捕された」というケースを想定し、会社から解雇されることを避けるためにどのように交渉を進めるか、また弁護士がどのような証拠を収集して主張を組み立てるかをQ&A方式で詳しく解説します。


1.判決のポイント(令和5(ワ)5968号・令和6年8月8日名古屋地裁判決)

まず、本判決の概要とポイントを整理しておきます。

  1. 事案の概要
    • 郵便局の課長職の従業員(原告)が、通勤途中の電車内で盗撮行為(条例違反)に及び、逮捕された。
    • 被害者とは示談が成立し、不起訴処分となったが、会社(被告)は「信用失墜行為」として懲戒解雇処分を行った。
    • 原告は、「懲戒解雇は重きに失する(懲戒権の濫用)」と主張して地位確認等を求めて提訴した。
  2. 裁判所の判断
    • 盗撮という行為自体は極めて悪質性が高く、厳しい非難を免れないとしたうえで、
    • ただし、**「刑事事件での有罪判決ではなかった(不起訴)」ことや「逮捕による業務への支障や社会的報道による会社の評判低下が具体的に生じたわけではない」**などを理由に、
    • 懲戒解雇は懲戒処分として重すぎる(無効)」と判断し、労働契約上の地位を認めて賃金支払を命じた
  3. 本判決で重要とされた事情
    • 過去の懲戒処分歴がなく、示談に至ったこと
    • 報道がなされず、会社の対外的信用低下が具体化していないこと
    • 本人がすぐに就業できる状況であったこと(逮捕後早期に釈放、業務上の大きな支障がない)
    • 会社側の就業規則に定める「処分量定の基準」と比して、あまりに重い処分
    • 懲戒手続において十分な弁明の機会を与えられたか

総じて、「盗撮行為という非違行為は懲戒事由に該当するものの、本件では懲戒解雇という最も重い処分まで行うのは不当」と判断されたわけです。


2.想定事例:40代会社員が駅のエスカレーターで盗撮し逮捕された場合

ここからは、本判決を参考に、「懲戒処分歴がない40代男性社員が、駅のエスカレーターで女性の下着を盗撮し、新しく施行された**『性的姿態等撮影罪』**による現行犯逮捕」というケースを想定し、解雇を回避するための交渉のポイントや、弁護士がどのような証拠を収集し主張を組み立てるかをQ&A形式でご説明します。


Q1.会社に対しては、まずどのような態度・報告をとるべきでしょうか?

A1.早期に事実関係を認め、誠意を示しつつ、示談や処分軽減を探る

  • 早期報告・誠実な姿勢
    会社からすれば、事件発覚後に隠蔽や虚偽の説明を行われると、かえって悪質と判断されがちです。特に現行犯逮捕の場合は、事実関係を争うのが難しいケースも多く、早期に事実を認めて誠実に謝罪し、被害者とも示談を進めていることを会社に報告することが大切です。
  • 会社の懲戒規定を確認し、協力的に対応
    就業規則や懲戒規程には「会社の信用を傷つける行為」「法令違反行為」に該当する場合の処分の種類・基準が定められています。会社側が「懲戒解雇相当」と判断する要素をできるだけ減らせるよう、**示談の成立、不起訴の見通し、再発防止策(通院やカウンセリングなど)**を具体的に提示するのが望ましいでしょう。

Q2.会社から厳しい懲戒処分(懲戒解雇など)を示唆されたら、どのように交渉すればいいでしょうか?

A2.「解雇まで至らない」ことを論理的・具体的に説得する

  1. 「本件が会社に与えた実害」を客観的に整理
    • 報道やSNS拡散などで会社名が広がったのか
    • 逮捕・勾留期間による業務上の支障の大きさ
    • 取引先や顧客など社外からのクレームの有無
      などを事実に基づいて確認し、会社の対外的信用が具体的に毀損されていないのであれば、その点を強調します。
  2. 本判決の考え方を示す
    • 「一度きりの非違行為」であり、「示談成立」「不起訴処分」の場合は、必ずしも懲戒解雇が相当とは限らない
    • 過去の懲戒処分歴がなければ、減給・降格・停職などの選択肢もある
    • 本判決のように、「懲戒解雇が重きに失する」と判断されるリスクがある
      これらを会社に示し、労働審判や訴訟になったときの会社リスクを認識してもらうことで、解雇回避を探ります。
  3. 反省・再発防止策の具体的提示
    • カウンセリング・医療機関受診
    • 社内研修やカウンセラーからの文書(再発防止計画)
    • 自主的なボランティア活動や奉仕活動
      具体的な行動を示すことで、会社に「今後同様の行為が生じるリスクは極めて低い」と判断してもらう材料にします。

Q3.「性的姿態等撮影罪」での現行犯逮捕という点は、会社から見てどう評価されるでしょうか?

A3.法律上は新設罪で厳罰化の傾向にあるが、会社への影響の度合いによっては解雇回避も可能

  • 新法であることによる厳罰化
    令和5年6月16日に成立・7月13日に施行された「性的姿態を撮影する行為等の処罰…」の新法は、盗撮行為に対する全国統一的かつ厳罰化の流れを示しています。会社も世間の風潮を踏まえ「重大な犯罪行為」として捉えがちです。
  • ただし実際の会社被害が大きくない場合
    本判決が示すとおり、不起訴や示談成立、会社の信用失墜が具体的に起きていないなどの事情があれば、処分軽減の余地があります。
    会社には「社会的非難が強い行為なのだから懲戒解雇もやむなし」と判断されやすい反面、本判決のように「重すぎる処分」と見なされるリスクがある点を示して交渉することが考えられます。

Q4.弁護士はどのような証拠や資料を収集し、どのように会社を説得するのでしょうか?

A4.「再犯リスクの低さ」「会社の不利益の少なさ」「本人の改悛」を立証する証拠を集める

  1. 事実関係に関する資料
    • 逮捕・勾留の経緯、釈放状況、不起訴処分の証明(検察の処分通知)
    • 示談書や示談金受領書、被害者からの宥和的コメント(あれば)
    • 会社や周囲への報道・SNS拡散の有無を示す資料
  2. 本人の勤務状況・評価に関する資料
    • 過去の人事考課や表彰・感謝状、他の懲戒歴の有無
    • 部下・同僚・取引先からの評価や感謝の手紙
    • 家族状況(例えば子供がいる、家族が深く反省を促している等)
  3. 再発防止策に関する資料
    • 反省文やカウンセリング受診、治療計画等の証明書
    • 具体的な更生プランを示す文書(弁護士やカウンセラー作成)
  4. 就業規則・懲戒規程に関する資料
    • 「会社の懲戒処分量定の基準」と照らし合わせ、会社内での過去の類似事例の処分
    • 刑事事件で有罪判決となっていない場合の運用状況
    • 会社が重視するコンプライアンス規定等をどこまで考慮するか

こうした資料を用いて、「このケースでは、会社や社会へ与えた実害が限定的で、本人は深く反省し再発防止も見込める。従って最も重い懲戒解雇ではなく、より軽い処分にすべき」という論理構成を組み立てます。


Q5.もし懲戒解雇が通告された場合、どのように対処すればよいでしょうか?

A5.会社内の不服申立・労働組合対応・労働審判・訴訟などで争う余地がある

  1. 社内手続きによる救済
    • 就業規則や懲戒手続の瑕疵(弁明の機会の不十分さ)があれば、社内不服申立制度で争う場合があります。
    • 労働組合に所属していれば、組合と共に団体交渉を要求することも考えられます。
  2. 労働審判・訴訟での争い
    • 本判決のように「懲戒解雇は懲戒権濫用で無効」として、地位確認や賃金支払いを求める訴訟を提起することも可能です。
    • 裁判所は、会社への具体的信用毀損や過去の懲戒歴の有無、再発防止策の存在などを総合的に判断します。
  3. 弁護士への相談
    • 会社との交渉段階でも、弁護士を通じて冷静に交渉することで、不用意な発言や会社との感情的対立を避けられます。
    • 裁判手続きに進む場合のリスクや時間、費用対効果等も踏まえ、より適切な落とし所を探ることが重要です。

3.まとめ:解雇回避に向けた全体的な見通し

  • 「盗撮行為」は企業から見ても極めて重大なコンプライアンス違反であり、厳しい処分をされる可能性が高いのは事実です。一方で、本判決のように**「不起訴処分」「被害者との示談」「会社の具体的信用毀損がない」「過去に懲戒処分歴なし」**という事情が揃う場合には、裁判所は「最も重い懲戒解雇まで行うのは不当」と判断する余地があります。
  • 実際には、会社によっては「示談していても、社内規程上懲戒解雇にする」という厳格運用をする場合もあり得ます。そのため、早い段階で弁護士に相談し、示談書や反省文・再発防止策などの証拠をきちんと揃えることで、会社との交渉や裁判所での主張に備える必要があります。
  • 会社内部での交渉では、単に「やっていない」「悪くない」という態度ではなく、**「盗撮行為の悪質性は重く受け止め、深く反省している」**ことを伝えたうえで、「本件で会社に生じた具体的損害は限定的で、解雇よりも軽い処分に留めるべき」と主張するのが望ましいでしょう。

【最終的なアドバイス】

  1. 事実を速やかに会社へ報告し、誠意を示す
  2. 被害者との示談、不起訴処分、再発防止策を会社に具体的に報告
  3. 懲戒解雇以外の選択肢(減給・停職・降格等)が相当である理由を整理
  4. 本判決など、裁判例での「懲戒解雇の濫用認定リスク」も示しながら交渉
  5. 万が一、解雇通告されたら弁護士と連携して社内不服申立や労働審判・訴訟を検討

上記を踏まえ、会社が持つ「信用失墜リスク」「厳しい社会的視線への対応」という懸念を十分汲みつつ、「懲戒解雇は過度であり、労働法上濫用と認定される可能性がある」ことを主張していくことが肝要です。

本回答は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的な対応については、必ず弁護士や専門家にご相談ください。